新天皇のお人柄は? テムズとともに

新天皇のお人柄は? 「テムズとともに ―英国の二年間―」



皇太子殿下のご著書

 平成31年4月1日、菅官房長官が、本年5月1日以降の新元号「令和」を発表しました。

 いよいよ、御代替わりが間近に迫っています。

 新たに即位される現皇太子の徳仁親王殿下には、平成5年(1993年)に出版された「テムズとともに ―英国の二年間―」(学習院教養新書)というご著書があります。

「テムズとともに ―英国の二年間―」は、皇太子殿下の2年間のオックスフォード大学留学の回想録です。基本的には、イギリスでの研究生活を書かれたものですが、固い内容ではなく、はじめての海外生活で経験された様々な日常的な出来事を、時にはユーモアをまじえながら記述されています。文章を読むと、歴史や芸術などへの教養の幅広さや、品のあるお人柄が分かります。

 また、海外での自由な生活を記述することで、自然と、日本国内での自由の無いお立場との落差が浮き彫りになります。読みながら、「そんなことを新鮮にお感じになられるのか」と驚かされることがあります。そこがこの本の魅力のひとつでもあります。我々一般人は、皇族の生活の「悲哀」と言っては失礼ならば、国内でのお立場の大変さを感じずにはいられないところがあります。

大学寮に到着して

「自分の部屋をまったく自分の意志のままに使えるのはいいものである。スーツケース一個分の荷物ではあったが、どこに何を置くかあれこれ試行錯誤してけっこう時間を費やした」

銀行

「私はオックスフォードで初めて銀行に行く経験をした。それは、英国以外の国へ行く機会も多かったため、現地で使用した紙幣を英国のポンドに両替するためである。最初で最後の経験かもしれない。」

クレジット・カード

「カードの通用する店ではクレジット・カードでの買い物をしていたが、これも今後はまず縁のないことであろう。」

洗濯

「私が週末にした大きなこととして洗濯を挙げなければならない。幸い私の住むセント・オーバンス・クオッドの地下にはいわゆるローンドリーがあり、洗濯機が三台と乾燥機が二台備えつけられ、そばに乾燥室もあった。私もマートンに入学してからこれらの機械の使用法を聞き、ほぼ週末になるたびに利用した。要は洗濯物を機械の中に入れ、適量の洗剤を注ぎ、お金を入れるだけのことであったが、慣れない私には興味津々であった。」

寮内で学友と

「Your Highnessに当たる日本語も聞いてきた。そこで私は『殿下』であると教え、よせばいいのに天井の電気を指してこれはデンカではなくデンキであるから混同しないようにと言ってしまった。しまったと思った時は後の祭りで、彼らは私を指してデンキと言ったり、天井の電気を指してデンカと言ったりするようになってしまった。」

ウッソーの本義

「私はオックスフォード滞在中は、外出時にはできる限りジーンズなどのラフなスタイルで歩くようにしていた。私と顔を合わせた日本からの観光客も最初は目を疑ったらしい。若い女性から目の前で『ウッソー!』と言われた時は、『ウッソー!』の本義を知らず、どう反応していいか迷った。」

ディスコ

「生まれて初めて入るディスコのこと、内部の騒音は聞きしにまさるものと思った。フロアーは若い人々が中心で、それぞれのステップで踊っている。私もまったく自己流のステップで踊りの仲間入りをし、MCRの女子学生と向かいあって踊ったりしたので、退屈するようなこともなかった。ディスコを後にしたのは夜中の二時を回っていた。私にとって生涯最初で最後のディスコであったかもしれない。」

図書館で傘を盗まれて

「結局雨足の激しい道を十分近くコレッジまでずぶ濡れになって帰った。その傘は気に入りのものだったため残念であったが、誰かが濡れずに帰ったのだと思えば、まあそれなりの貢献をしたことにもなろう。」

交通史の研究について

「そもそも私は、幼少の頃から交通の媒介となる『道』についてたいへん興味があった。ことに、外に出たくともままならない私の立場では、たとえ赤坂御用地の中を歩くにしても、道を通ることにより、今まで全く知らない世界に旅立つことができたわけである。初等科の低学年の時だったと思うが、私はたまたま赤坂御用地を散策中に『奥州街道』と書かれた標識を見つけた。この標識自体は新しいものであったが、古地図や専門家の意見などにより、実は鎌倉時代の街道が御用地内を通っていたことが分かり、この時は本当に興奮した。」

オックスフォードを去るにあたり

「再びオックスフォードを訪れる時は、今のように自由な一学生としてこの町を見て回ることはできないであろう。おそらく町そのものは今後も変わらないが、変わるのは自分の立場であろうなどと考えると、妙な焦燥感におそわれ、いっそこのまま時間が止まってくれたらなどと考えてしまう。」

新天皇のお人柄

 上記のとおり、ほんの一部抽出するだけでも、新天皇陛下の、品が良くて、ユーモアを解するお人柄が伝わります。

 また、当時とっくに成人されていた皇太子さまが、スーツケース一つのわずかな荷物を自分で配置した程度のことで、「自分の部屋をまったく自分の意志のままに使えるのはいいものである」という強調的な書きぶりをするというのは、よほど普段の生活が決め事が多く、自分の思い通りにはできないのだなと想像させられます。



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