岩田規久男に学ぶ 消費税を上げるな

岩田規久男に学ぶ 消費税を上げるな



国債は将来世代全体への負担ではない

 元日銀副総裁の岩田規久男氏は、デフレ脱却までは、消費増税ではなく、国債発行で財源を確保すべきだと主張します。そして、国債発行は将来世代に負担を押しつけるものだという主張の誤りを指摘します。

「デフレから完全に脱却していない現在は、国債発行に財源を求めるべきである。」

「ここで問題になるのは、『国債は国の借金のつけを将来世代に押しつけることである…』という考え方である。この財務省をはじめとする国債負担に関する一般常識は、基本的な点で間違っている。」

現在、国債が発行され、その国債を現在の日本国民が購入し、将来、増税されて、その税収で現在発行された国債が償還されるとしよう。将来の世代は増税でお金を失うが、政府は増税による税収で国債を償還するから、その国債償還によって、お金は将来世代に戻ってくる。つまり、お金は増税によりいったん政府に入るが、国債償還によって民間部門に戻ってくるから、将来世代全体の懐具合は全く変わらず、したがって、負担は全く生じない。

「これはもちろん将来世代全体にとっての話であり、償還される国債を持っていない人は、税金が取られるだけであるから、負担が生じる。しかし、「国債は将来世代全体の負担」になるという考えは、間違っている。」

国債が将来世代の負担になるのは実質金利が上昇するときだけ

 岩田氏は、国債発行が将来世代への負担の押しつけとなり得るのは、実質金利が上昇するときだけであることを論理的に説明します。

「国債の負担に関する正解は、『公債発行によって実質金利(正確には、予想実質金利〔名目金利マイナス予想インフレ率〕で定義される)が上昇しない限り、国債の将来世代負担は生じないが、実質金利が上昇する場合には、国債の将来世代負担が発生する』というものである。」

「財政支出(あるいは減税)の財源を増税から国債発行に換えたときに、増税の場合よりも(予想)実質金利が上がって、民間の設備投資が減るか、円高が誘発されて、経常収支の黒字が減少するか(あるいは、経常収支が赤字であれば、その赤字が拡大する)、これら、いずれかあるいは双方が起きる場合には、将来世代に遺される遺産(資本設備や対外純資産)が減少する。この資産の減少により、将来世代にとって消費可能な資源が減少する。この将来世代にとっての消費可能な資源の減少こそが、将来世代の国債の負担なのである。」

異次元緩和によっても将来世代の負担は増加していない

 岩田氏は、現在までのところ、異次元緩和によって将来世代への負担は増加していないことを解説します。

「2013年4月の『量的・質的金融緩和』開始以後、現在までの日本では、国債発行を増やしても、実質金利は上昇していない。したがって、この期間については、国債の将来世代への負担の転嫁は発生していない。むしろ、デフレとそれによって生ずる円高によって、設備投資と輸出が減少することこそ、現在の世代だけでなく、将来に残される資産の減少による将来世代の負担をもたらすことに注意すべきある。」
 

安倍首相は初心に返るべき

 岩田氏は、2019年の消費税引上げに反対し、安倍首相に対し、初心に返って経済成長・デフレ脱却を目指すことを求めます。

「デフレを脱却できるかどうかという14年度に、わざわざ、国内初の需要抑制政策を実施したのは非常識であった。さらに、19年に2%の消費税再増税とはもってのほかである。」

「安倍首相は『経済成長無くしては、税収が増えず、財政債権はできない』という初心に返るべきである。」

メモ

「国債発行は将来世代にツケを回すこと」という主張に、亡西部邁氏は、「『ツケを子孫に残す』との理由で公債発行に猜疑の眼を向けるのは、『語るに落ちた』種類の話である。つまり、自分らの子孫にとって有益であるに違いない公共資産を今からいかに形成するか、という公共事業の原点をふまえているなら、我らの子孫はその受益に見合った支払いをなすだけのこと、と考えることができる。」(「エコノミストの犯罪」、西部邁)と述べ、批判していました。

 岩田氏の場合は、それとはまったく別の観点から、国債発行が将来世代の負担にはならないということを分かりやすく説明しており、目から鱗が落ちます。

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