お金の仕組み(通貨と経済成長)

中野剛志に学ぶお金の仕組み(通貨と経済成長)



 会社員ではない生き方を目指す際には、大なり小なり自らが経営者となることですから、お金や経済の仕組みについて理解しておくことは有益です。紹介するのは、評論家・元京都大学准教授の中野剛志氏の「貨幣と経済成長」という講演。同氏の著作「富国と強兵 地域経済学序説」の第1章から第3章をもとにした話です。

 日銀が大規模な金融緩和を継続しているにもかかわらず、いまだにデフレから脱却できない理由が良く分かります。
 また、ビットコインが理想的な通貨ではなく、構造的にデフレを生み出す不況モデルであるということも分かります。 

 以下、講義の要約を記述しておきます。
 

ビットコインの仕組み

 金属貨幣(金貨や銀貨等)は、鉱山の採掘により貴金属を入手する。ただし、通常は、市場で入手する。
 ビットコインは「マイニング(採掘)」(コンピュータ上の難解な数理処理)の報酬として入手する。ただし、そんなことをできる人間は限られており、通常は、取引所を通じて入手する。
 ビットコインの発行上限は2100万BTC。発行量が増えるとマイニングが難しくなる仕組みなので、需要が増えると希少性が高まり、価値が上がる。
 このように、ビットコインは、金属貨幣をモデルとした仕組み。

ウォズニアックの誤解

 
 ビットコインの信奉者、アップルの共同創業者スティーブ・ウォズニアックは、
 「金は、採掘技術が進歩すれば、供給が増え、価値が下がる。米ドルは、中央集権的な権力が想像できる『インチキのたぐい』に過ぎない。ビットコインの供給には、予測可能な有限性があるから、金や米ドルより優れている」、などと述べている。

 誰もが無限に通過を発行できるのであれば、ハイパーインフレになってしまうところ、ビットコインには発行上限(予測可能な有限性)があり、その価値を担保する仕組みになっている。ビットコインは需要されるほど、価値が上昇する。貨幣価値の上昇とは、物価の下落(=デフレ)のことでああるから、ビットコインの「予測可能な有限性」は、デフレを招くということになる。世界恐慌という大デフレ不況は、金本位制(金の量が足かせになって、貨幣供給量を増やせない」ことが原因になったと言われている。世界恐慌からの脱出は、金本位制からの離脱が不可欠だった。一方、ビットコインや金本位制と違い、ウォズニアックがインチキのたぐいよばわりする米ドルは、供給量を増やして貨幣価値を下げられるから、デフレを防止できる。

デフレとは何か

 デフレとは、「継続的な物価の下落」であるから、「貨幣価値の上昇」とイコールである。カネの価値があがるので、人々がカネを使うよりも、ためて置こうとする状態である。デフレになれば、消費をしなくなるので現在の世代が貧困化し、投資をしなくなるので将来の世代も貧困化する。

 デフレの原因は、
 貨幣価値の上昇=貨幣供給の不足
であるから、
 デフレ対策=貨幣供給の増加
となる。

商品貨幣論というよくある誤解

 貨幣とは、物々交換の効率の悪さを克服するために、交換手段として利便性の高い「物」として導入された。貨幣は、金銀などの貴金属でできており、それ自体が価値のある「商品」として取引される。紙幣は、金属貨幣より使いやすいから用いられるが、その紙幣の価値の根拠は、あくまで貴金属との兌換(交換)が保証されている点にある。

 これが商品貨幣論であるが、米ドルは1971年に金との兌換が停止されているが国際通貨として流通し続けているし、貨幣が物々交換から生じたという歴史的事実は存在しない。

信用貨幣論という正しい理解

 「貨幣とは負債の一形式であり、経済において交換手段として受け入れられた特殊な負債。」である。貨幣とは、共通の計算単位(円、ドル、ポンド等)で表示された負債のこと。

 ただし、デフォルト(返済不能)の可能性のある負債など誰も受け取らない。よって、デフォルトの可能性が極めて低い特殊な貨幣だけが、貨幣として扱われる。そのような貨幣とは「現金通貨(中央銀行券と鋳貨)」と「銀行預金」のことである。

通貨と租税

 通貨は、なぜ支払い手段等として受け入れられているのか。通貨の価値は何によって保証されるのであろうか。
 
 この点につき、国家が通貨を「租税の支払い手段」(納税義務の解消手段)として法定しており、通貨には国民の納税義務を解消する手段としての価値があるとういのが、「現代貨幣理論(Modern Monetary Theory)」(L・ランダル・レイ)の信用貨幣理論の理解である。通貨の価値を保証しているのは、徴税権を有する国家権力ということになる。

通貨と財政赤字

 通貨を、取引や貯蓄等、納税以外の用途のために流通させるためには、国家は、通貨をすべて税として徴収せずに、民間に残しておかなければならない。
 つまり、「財政支出>税収」でなければ、通貨が流通しない。
 「『正常な』ケースは、政府が『財政赤字』を運営していること、すなわち税によって徴収する以上の通貨を供給していることである。」(「現代貨幣理論」、L・ランダル・レイ)

量的緩和

 銀行は預金の引き出しに備えて、中央銀行に一定額の準備預金(日銀当座預金)を設ける義務がある。
 現在、黒田日銀がやっている量的緩和とは、銀行が日銀に開設した「日銀当座預金」を増加させる政策。しかし、銀行は日銀当座預金を原資として貸出を行うわけではない。結局、銀行預金(通貨)は、借り手がいなければ創造されない。デフレで借り手がいなければ、銀行預金は増えない。だから、量的緩和をしたけれども物価が全然上がっていない。量的緩和ではデフレから脱却できない。
 量的緩和でのデフレからの脱却という理論は、信用貨幣論を理解していないことに基づく誤解である。

財政等審議会の基本的な間違い

 財政制度等審議会は「財政健全化に向けた基本的考え方」(平成26年5月)において、多額の新規国債と債務償還に伴う借換債を低金利で発行できているのは、高い家計貯蓄率と国内の豊富な資金余剰であるが、将来においてはこのような環境が確実に維持される保証はない。国債発行額を減らして債務残高を圧縮し、金利変動に伴う財政リスクをできるだけ少なくする必要がある、としている。すなわち、今は民間の金融資産が潤沢にあるから国債が消費できているけれど、将来それが無くなるかもしれない、という警鐘をならしている。

 しかし、この考え方は基本的に間違っている。民間金融資産は、政府債務の成約にはならない。銀行が国債購入すると政府預金を増やすのだから、国債増発により得た資金を政府が支出すれば、民間金融資産はその分増える。政府が国債発行すると民間金融資産が吸い上げられて減少し枯渇するのでは無く、逆に、政府が国債発行すると民間金融資産は増えるのである。
  
 「政府の赤字がそれと同額の民間部門の貯蓄を創造するのであるから、政府が貯蓄の供給不足に直面することなどあり得ない」(「現代貨幣理論」、L・ランダル・レイ)

財政政策は、金融政策

 国債発行(財政赤字)が通貨(預金)供給量を増やす仕組み。
 
①銀行が国債を購入すると、銀行保有の日銀当座預金は、政府の日銀当座預金勘定に振り替えられる
②政府は公共事業の発注にあたり、企業に政府小切手で支払いをする
③企業は取引銀行に小切手を持ち込み、代金の取り立てを依頼
④銀行は小切手相当額を企業の口座に記帳(新たな預金の創造)。同時に、日銀に代金の取り立てを依頼
⑤政府保有の日銀当座預金が、銀行の日銀当座預金に感情に振り替えられる(日銀当座預金が戻ってくる)。

 つまり、政府が借金をすることで民間金融資産が無くなることはあり得ない。国債発行に資金的制約は存在しない。また、量的緩和では通貨供給量は増えないが、財政政策は通貨の供給量を増やすことができる。



財政悪化なくして財政再建なし

 財政赤字の拡大(公共投資の拡大・社会保障費の膨張)
 →負債の増加
 →貨幣供給量の増加
 →インフレ(貨幣価値の下落)
 →消費・投資の拡大 →経済成長 →税収増 →財政赤字の縮小

 財政赤字の削減(増税・歳出削減)
 →負債の減少
 →貨幣供給量の減少
 →デフレ(貨幣価値の上昇)
 →消費・投資の縮小 →経済停滞 →税収減 →財政赤字の拡大

 政府が行う財政赤字の削減の努力が財政赤字を拡大させている。逆に、財政赤字を拡大させるとことが、通貨の供給量を増やし、デフレを脱却し、結果として財政赤字が縮減することになる。

金利変動に伴う財政リスク論への批判

 2000年以降政府債務は累積し続けたが、長期金利は世界最低水準で推移している。デフレで借り手がいない限り、金利が急激に上昇することはあり得ない。金利が上昇し始めたら、それは借り手が増えた(デフレ脱却・景気回復)兆候なので、むしろ喜ばしい。どうしても金利変動を抑制したければ、日銀が(量的緩和として、現在、行っているように)国債を購入すれば、金利の上昇はあり得ない。金利変動に伴う財政リスクなど存在しない。

日本の財政破綻はあり得ない

 信用貨幣論によると、貸出しの成約は、貸し手の資金量ではなく、借り手の返済能力。つまり、政府債務の制約は、民間金融資産の総額ではなく、借り手である政府の返済能力。

 しかし、政府は、通貨を発行する権限を有する。政府債務が自国通貨建てである限り、借り手の返済能力に制限はない。自国通貨建て国債はデフォルトし得ない。歴史上事例が存在しない。デフォルトした例は、すべて自国通貨建て以外の国債。したがって、日本の財政破綻はあり得ない。

 もちろん、国債に発行成約が存在せず、無限に財政赤字を拡大できるかというと、そのようなことはない。財政赤字(通貨供給)が過剰に拡大すると、過剰なインフレを起こすので、無限には拡大できない。国債の真の発行制約は、物価上昇率。すなわちデフレである限り、財政赤字の拡大の制約は無い。日本はデフレなので、財政赤字は少なすぎる。

高橋洋一に学ぶ「国債の真実」

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