司法書士と行政書士の違い

司法書士と行政書士の違い



司法書士と行政書士の違い

 脱サラして会社員以外の仕事を目指す場合の有力候補の司法書士・行政書士。司法書士と行政書士の名称が似ているのは、先に制度化されていた「司法書士」の名称に、一般代書人と呼ばれていた行政書士が寄せていったことによります。

行政書士制度の歴史

司法書士制度の歴史

 名称はよく似ていますが、仕事の内容はまったく違います。歴史的には、司法書士業務で無いものが行政書士業務、行政書士業務で無いものが司法書士業務という構造で作られた、互いに排他的な業務範囲を持つ資格だからです。

司法書士の業務

 
 司法書士のベースとなる業務は、裁判所・検察庁・法務局に提出する書類の作成として規定されています。法務省系の機関に対する書類提出と考えて問題ありません。監督官庁も法務省です。この中で、裁判所・検察庁については業務範囲に重なる部分がある「弁護士」の存在感が大きくなっており、司法書士の存在感は法務局の業務で強く発揮される状態になっています。法務局は、「登記所」や「供託所」を設置している機関です。このため、司法書士は、主に不動産登記や商業登記を取り扱い、時には裁判所の仕事もするという仕事になっています。

行政書士の業務

 行政書士のベースとなる業務は、行政機関に提出する書類の作成です。ただし、司法書士の業務である、裁判所・検察庁・法務局に提出する書類の作成はできません。また、税理士法や弁理士法や社会保険労務士法などにも規制されますので、税務署・特許庁・年金事務所・労働基準監督署・ハローワーク等の書類作成についても制限があります。要するに、行政書士業務は、司法書士、税理士、弁理士、社会保険労務士などの専門の士業者が存在する機関を除いた官公署の書類作成をするのが主業務になります。

 現実的に行政書士の取り扱いが多い官公署は、都道府県庁・市町村役場などの地方自治体、警察署、運輸局等になります。地方自治体や警察署は様々な許認可や届出の申請先ですし、運輸局は自動車の登録などを扱いますので、これが行政書士業務になります。

司法書士と行政書士の業務は重ならない

 司法書士の業務は、裁判所・検察庁・法務局などに限定されており、行政書士は、これらの機関の書面作成を行うことができません。他方、行政書士の業務は、地方自治体・警察署・運輸局等であり、司法書士はこれらの機関の書面作成を行うことができません。つまり、互いに排他的な関係にありますので、まったく違う仕事ということになります。

司法書士と行政書士が似て見える理由

 主業務が互いに排他的な関係にある司法書士と行政書士の業務ですが、具体的な業務となると似ているような気もします。
 この原因は、行政書士には「権利義務・事実証明書類」の作成業務があるところにあります。権利義務書面というのは典型的なものが「契約書」、事実証明書類というのは例えば「議事録」などの文書を指します。行政書士がこの業務範囲において、様々な業務を行うところが、司法書士との混同が生じやる原因です。

 例えば、行政書士事務所の多くが、会社設立の看板を上げています。株式会社や合同会社は法務局に登記することによって成立します。行政書士は登記業務を行うことができません。それでは、行政書士事務所が会社設立を引き受けたらどうするかというと、「権利義務・事実証明」書類の作成として、会社設立に必要な定款・株主総会議事録等の書類を作成します。そして、商業登記の申請書は別途司法書士に依頼するか、本人に直接申請させて行います。会社設立は司法書士業務ですが、その添付書類の一部を作成できるので、行政書士が仕事としているというわけです。

 このようにして、行政書士が、司法書士の業務の下流工程部分だけを行っていることががあるため、似ているように感じられることになります。

行政書士が他士業の下流工程を引き受けていることは多い

 上で述べたように、会社設立は司法書士の仕事ですから、行政書士は会社設立の業務を看板に記載せず、最初から司法書士に誘導すべきでは?というのは当然の発想です。会社設立を行政書士に頼むと二重に業者が絡むことになりますから、ダイレクトに司法書士に依頼したほうが話も早いし費用も安くなることが多いでしょう。もっとも、必ずしもそう単純な話ばかりではなく、許認可が絡むような業種の場合、会社設立から許認可まで一式すべてを業者に任せたいと依頼者が考えている場合があります。この場合、許認可を取るための行政手続きは、行政書士に依頼することになりますので、どちらにしても司法書士と行政書士が関わることになります。例えば、不動産会社の設立と宅建業の許可取得までを業者に任せしたいという場合であれば、会社設立を行政書士に依頼することにも意義があると考えられなくはありませんので、一概に否定できないかもしれません。

 この行政書士が下流工程だけ引き受けているというのは、会計業務でも同じようなことがあります。行政書士事務所で、会計業務を看板に挙げているところがあります。勿論、税務申告書などの作成は税理士の独占業務なので行政書士にはできません。しかし、日々の会計記帳は誰がやっても良い業務です。そこで、行政書士事務所が日々の記帳業務棟を行い、税務申告の準備に近いところまで行います。そして、税務申告については、この行政書士が提携している税理士に、税務申告を依頼します。しかも、「会計事務所」という言葉は公認会計士や税理士の独占名称ではないため、行政書士でも「会計事務所」を名乗る場合があり、とても不透明で分かりにくい形になっています。

下流工程業務にはうまみは無い

 脱サラして行政書士事務所を開業する場合は、他士業の下流工程に過ぎない業務に注力しないよう注意する必要があります。士業者として独立開業し、特定の業務のノウハウを身につけるには、相当な時間を投下して知識を身につけ、費用をかけて書籍やソフトウェアなどを準備する必要があります。そのようにしてノウハウをマスターしても、行政書士としてこれらの業務を引き受ける場合は、厳しいコスト争いをしている上流工程の専門業者よりも安い費用で引き受ける必要がありますから、採算性を確保するのが難しいからです。経営の安定を図るためには、行政書士としては堂々たる独占業務の許認可に軸足を置き、下流工程業務は依頼があれば物によってはお受けする程度に考えておいた方が良いでしょう。下流工程業務をかき集めるくらいなら、例えば、行政書士事務所と宅建業を併営するなど、行政書士以外の別の仕事をしたほうが生産的です。



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です