人手不足なんて嘘でしょ?

人手不足なんて嘘でしょ?



人手不足なんて嘘でしょ?

 2018年11月16日、共同通信社が、

「人手不足が加速、倒産最悪ペース」

というタイトルの記事を配信しました。

 記事の内容は、

 人手不足が加速し、企業の事業継続に深刻な影響が出ている。東京商工リサーチの調査によると、2018年1~10月に人手不足関連倒産は前年同期比20.4%増の324件に上り、13年の調査開始以降、最悪だった15年(1~12月で340件)を上回るペース。日本生命保険の調べでは、地方部で人材の逼迫感が目立っている。働き手の縮小に阻まれる産業界の実情を裏付けた形だ。
 人手不足関連倒産の内訳は、社長や幹部役員の急死、急病などによる「後継者難」による倒産が237件で全体の7割超を占めた。これに、人手の確保が難しく事業継続に支障が生じた「求人難」が46件で続いた。

というものです。

タイトルと書き出しがおかしい

 「人手不足」「倒産最悪ペース」というタイトル、書き出しの「人手不足が加速し」という文言。あたかも日本は労働者が不足している、という印象をあたえます。ところが、その後に続く記事内容は、事業承継が上手くいかず後継者になってくれる人がいない企業が多い、というものです。タイトル・書き出しと、記事の内容が一致しているとは言い難い、誤解しか与えない、印象操作のための記事の書き方です。
 
 2018年1月から10月の10ヶ月間で、324件の倒産のうち、後継者が見つけられなかったことによるものが全体の7割で237件。人手を確保できなかったことによる「求人難」はわずか46件でしたというものです。この内容のどこが「人手不足」による倒産が急増していることになるのでしょうか?

後継者がみつからないのは人手不足ではない

 
 中小零細企業では、金融機関からの借入につき、代表者が個人保証するのが通常です。代表者が交代する場合、新たに代表者となった人が、銀行に行き、会社債務を個人保証する保証契約を締結します。そうしないと、会社への融資が引きあげられ、資金繰りがつかなくなります。後継者になる人にとっては、会社の債務を個人保証すれば、それまで築いてきた個人資産を失う可能性があり、大きなリスクです。もっとも、好調で収益の上がる事業であれば、後継者はいくらでもみつかるでしょう。地方でも、収益が上がっている企業が、後継者不在で代表者が引退する場合、そのまま事業を引き受けたいと申し出る会社はいくらでもあります。しかし、負債だらけで将来性のない事業に後継者はいませんし、事業を買ってくれる人もいません。たとえ息子でも、朝から晩まで働いても家族を養えないレベルの儲けしか出ない事業や、負債だらけの事業を継いであげられないのは、当たり前です。
 誰も後継者になりたがらない事業があることを、「人手不足」と分類して報道する必要があるのでしょうか。
 煽りたてるようなタイトルと書き出しで、人手不足が日本経済にダメージを与えているかのような印象操作は、あまりにも詐術的です。

人手を確保できないことは、人手不足とは限らない

 「人手不足」というのは、狭義でいえば、求人数に対し、働き手の数が不足していることです。この概念をどこまで拡張しても、低賃金に見合わない労働強度の高い仕事をする人がいないことを「人手不足」とは言えません。単に、労働者が応募するような、まともな賃金を払えないという、事業者側の経営状態があるというだけのことです。 
 企業が人手を確保できないのは、賃金が妥当性を欠く場合、雇用が将来性や継続性を欠く場合がほとんどです。労働市場から労働者を確保するには、賃金や待遇を改善すれば済むことであり、それを価格に転嫁できず利益が出せなくなるということであれば、それはビジネスモデルの失敗です。このような倒産は、「人手不足」による倒産ではなく、事業が上手くいかなくなったことによる通常の「倒産」に過ぎません。
 このような「求人難」を人手不足と表現するのは、詐術的とは言わないまでも、ミスリードを狙ったものです。

正しい報道は「賃上げ不足」

 中小零細企業でも、ハローワークや求人誌で、まともな相場観のある賃金で募集をかければ、応募は沢山くるのが現状です。この点、失われた20数年と現在で何ら変わりありません。人材派遣会社に依頼しても、それなりの費用で、それなりの人材が、2週間もあれば確保できてしまいます。優秀な人材が、安い賃金で、無限に稼働してくれるなどということはあり得ません。報道するのであれば、経営の失敗を人手不足などとする企業の言い訳を垂れ流すのではなく、「賃上げ不足」による倒産が増加傾向と報道するのが正しい状況ですね。
 元ネタの東京商工リサーチは、企業に情報を提供するサービスを行う会社ですから、まともな賃金を払えなかった経営者の言い訳「人手不足」という表現を使うのは理解できます。利用者が嫌がる言葉を使う必要がないから、ひとつオブラートにくるんでいるわけです。しかし、報道機関がそれをそのまま垂れ流し、全国に配信する必要はまったくありません。

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