行政書士制度の歴史

行政書士制度の歴史



行政書士の歴史

 市町村役場・警察・運輸局などのお役所での手続きを代行してもらえる行政書士さん。

 主力業務は、建設業や飲食店などの、営業許可を得るための煩雑な手続きの代行です。
 
 運輸局の手続きも代行しますので、みなさん、自動車の手続きで一度はお世話になったことがある、身近な士業ではないでしょうか。

 行政書士制度の歴史を調べてみました。

代書人取締規則 明治36年~

 明治になり、行政が近代化していくなか、警察署や自治体などに提出する書類の作成をする代書業者が自然発生します。
 
 特に規制のない仕事でしたが、悪質業者の取り締まりなどのために、明治36年(1903)から数年の間に、全国の都道府県令で、代書人取締規則が制定されました。

 その最初のものが、明治36年(1903年)8月24日、大阪府令代書人取締規則です。

第一条 代書人トハ他人ノ委託ニ依り料金ヲ受ケ文書ノ代書ヲ業トスル者ヲ謂フ

第二條 代書人タラムトスル者ハ族籍、住所、氏名、年齢ヲ具シ所轄警察署二願免許證ヲ受クヘシ

第三條 素行善良卜認ムル者二非サレハ代書営業ヲ免許セス免許後卜難本則二違背シ又ハ素行不良ト認ムルトキハ免許ヲ取消スコトアルヘシ

 つまり、代書業をする場合は、

 「所轄警察署に願い出て、免許を受けよ」

 「素行が善良なら免許を与えるが、素行が不要なら免許は取り消す」、

ということです。

 これとほぼ同じ条例が、全国の都道府県で作られました。これが、行政書士制度の前身になります。

 この規定は、「文書の代書」業務全般を規制するものなので、行政庁への代書人だけでなく、裁判所内で業務を行う代書人や、筆耕業者も含まれます。
 

司法職務定制の代書人は行政書士の起源ではない

 
 ところで、「代書人取締規則」の31年前、明治5(1872)年、司法職務定制(太政官無号達)により、司法業務の代書人が置かれています。

 この代書人は、後に司法書士制度に発展します。この司法職務定制の代書人は、
 
第四二条(代書人)第一 各区代書人ヲ置キ、各人民ノ訴状ヲ調成シテ其詞訟ノ遺漏無カラシム

 というもので、「訴状の調成」を業務とする仕事です。この規定を受け、実際に裁判所内や裁判所外で、代書人が営業を行うようになりました。

 日本行政書士会連合会は、この司法職務定制の代書人を、行政書士制度のルーツと考えているようです。

 しかし、歴史的資料をみても、司法職務について定めた「人民の訴状を調成する」仕事が、行政書士のルーツになるという理由は、見当たりません。

 当時は、裁判所の前で営業している代書人も、警察に提出する書類を依頼されれば書類作成を行うことはあったでしょう。だからといって、行政書類作成と関係ない司法職務定制度を、行政書士制度のルーツとするのは、無理がありそうです。

司法代書人法

 
 代書人取締規則が制定されると、司法職務定制以来裁判所の中で営業していた代書人を中心に、司法代書人の制度化を目指す運動がはじまります。「俺たちは裁判関係の専門職であって筆耕業者とは別物だ」、というわけです。

 そして、大正8(1919)年4月9日、司法代書人法(法律第四十八号)が制定されました。

第1條 本法ニ於テ司法代書人ト称スルハ他人ノ嘱託ヲ受ケ裁判所及検事局ニ提出スヘキ書類ノ作製ヲ為スヲ業トスル者ヲ謂フ

第2條 司法代書人ハ地方裁判所ノ所属トス

 これにより、裁判所業務は「代書人取締規則」の対象から外れます。

 ・裁判所の代書人は、司法代書人法に服し、地方裁判所の監督を受け、裁判所の業務を行う

 ・それ以外の代書業は、代書人取締規則に服し、警察の監督を受け、その他の代書業務を行う

このような制度になりました。
 
 司法代書人の誕生により、地方裁判所に監督される裁判所の業務をする司法代書人と、警察の監督を受けるそれ以外の一般代書人が、法的に明確に分離されました。

代書人規則

 大正9年(1919年)11月25日に内務省令第40号で、代書人規則が定められました。
 これにより、「代書人取締規則」の都道府県によって代書人業の規制が異なる状況を、統一されることになります。

第一条 本令ニ於テ代書人ト称スルハ他ノ法令ニ依ラスシテ他人ノ嘱託ヲ受ケ官公署ニ提出スヘキ書類其ノ他権利義務又ハ事実証明ニ関スル書類ノ作製ヲ業トスル者ヲ謂フ

第二条 代書人タラムトスル者ハ本籍、住所、氏名、年齢及履歴並事務所ノ位置ヲ具シ主タル事務所所在地所轄警察官署ノ許可ヲ受クヘシ

第九条 代書人及其ノ補助員ハ左記各号ノ行為ヲ為スコトヲ得ス
 一 法令ノ規定ニ依ルニ非スシテ他人ノ訴願、訴訟又ハ非訟事件ニ関シ代理、鑑定、勧誘、紹介、又ハ仲裁ソノ他ノ行為ヲ為スコト

 ここではじめて、「官公署に提出する書類」と「権利義務・事実証明書類」の代書業をするならば、「警察署の許可」を受けるという規制がなされることになります。

 「権利義務・事実証明書類」というのは刑法にもでてくる法律上の難しい言葉ですが、要するに社会生活において大事な書面だけを対象にして代書業を規制することにし、単に文字を清書する筆耕業のようなものは警察の許可は不要になりました。
 
 官公署に提出する書面を明文で規定したという意味で、これが実質的な行政書士制度の誕生と言えるかもしれません。

行政書士法

 昭和26年(1951年)2月22日、行政書士法が誕生します。
  
 第一条 行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類その他権利義務又は事実証明に関する書類を作成することを業とする。

 2 行政書士は、前項の書類の作成であっても、その業務を行うことが他の法律において制限されているものについては、業務を行うことができない。

 というものでした。

 これは、大正9年の「代書人規則」とそっくりですね。

 行政書士制度は、このまま現在に至ります。 

 現行法による業務範囲は、以下のとおりです。専門家以外は読まなくて結構です。いろいろと肉がつきましたが、骨組みは同じだと分かりますね。

(業務)
第一条の二 行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。以下この条及び次条において同じ。)その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む。)を作成することを業とする。

2 行政書士は、前項の書類の作成であつても、その業務を行うことが他の法律において制限されているものについては、業務を行うことができない。
第一条の三 行政書士は、前条に規定する業務のほか、他人の依頼を受け報酬を得て、次に掲げる事務を業とすることができる。ただし、他の法律においてその業務を行うことが制限されている事項については、この限りでない。
一 前条の規定により行政書士が作成することができる官公署に提出する書類を官公署に提出する手続及び当該官公署に提出する書類に係る許認可等(行政手続法(平成五年法律第八十八号)第二条第三号に規定する許認可等及び当該書類の受理をいう。次号において同じ。)に関して行われる聴聞又は弁明の機会の付与の手続その他の意見陳述のための手続において当該官公署に対してする行為(弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)第七十二条に規定する法律事件に関する法律事務に該当するものを除く。)について代理すること。
二 前条の規定により行政書士が作成した官公署に提出する書類に係る許認可等に関する審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立ての手続について代理し、及びその手続について官公署に提出する書類を作成すること。
三 前条の規定により行政書士が作成することができる契約その他に関する書類を代理人として作成すること。
四 前条の規定により行政書士が作成することができる書類の作成について相談に応ずること。

2 前項第二号に掲げる業務は、当該業務について日本行政書士会連合会がその会則で定めるところにより実施する研修の課程を修了した行政書士(以下「特定行政書士」という。)に限り、行うことができる。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です