弁護士制度の歴史

弁護士制度の歴史

日本の弁護士制度

 弁護士というと、裁判所の法廷で裁判の代理をする人というイメージですが、弁護士法の規制する範囲は思いのほか広くなっています。

 どんな企業活動をするにせよ、どんな新規ビジネスを立ち上げるにせよ、弁護士の業務範囲には、注意を払う必要があります。

 金融機関・保険会社やその代理店・宅建業者・建設業者・コンサル業など、ちょっとしたサービスのつもりで顧客のためにすることが、弁護士法違反を問われることがありますので、気をつけなければいけません。

 落とし穴にはまらないためにも、弁護士制度の歴史的沿革を知っておくのは有益です。

①代言人 弁護士の前身

 明治5年8月3日の、司法職務定制(太政官無号達)で代言人制度が定められます。

 これが弁護士制度の前身です。

 職務範囲は、

第43条 代言人
 第1 各区代言人ヲ置キ自ラ訴フル能ハザル者ノ為ニ之ニ代リ其訴ノ事情ヲ陳述シテ枉冤無カラシム 但シ代言人ヲ用フルト用ヒサルトハ其本人ノ情願ニ任ス

というものです。

 代言人は、民事訴訟において、法廷で「事情を陳述」するのが業務でした。

 この司法職務定制では、同時に、「訴状を調成」する「代書人」という職制も定められ、これは司法書士制度に発展していきます。

 フランスの司法制度を真似て、代言人と代書人が創設されましたが、法廷での陳述と、裁判の書面作成をするのは別の仕事という点で、今の制度とはかなり違いますね。

 現在からみると、少々分かりにくい話に思えますが、イングランドなどは、いまでもソリシター(事務弁護士)とバリスター(法廷弁護士)がおり、ソリシターが依頼者対応や裁判での立証準備をし、バリスターが法廷での弁論を主に担当する制度が残っています。法廷での弁論と法律事務処理は、異なる技術が必要な仕事として考えれば、このような分業は必ずしもおかしなことではないのかもしれません。

②弁護士誕生 明治26年

 明治26年3月4日、法律第7号として弁護士法が制定され、同年5月1日施行されました。

 同時に代言人規則は廃止されています。

 弁護士の職務は、

 第1条 弁護士ハ当事者ノ委任ヲ受ケ又ハ裁判所ノ命令ニ従ヒ通常裁判所ニ於テ法律ニ定メタル職務ヲ行フモノトス

と規定されました。

 この、「法律ニ定メタル職務」というのは、民事訴訟法や刑事訴訟法で定める職務を行うことです。

 当初、弁護士の職務は民事・刑事の訴訟行為をすることに限定されており、裁判外での法律事務については、弁護士の独占業務ではありませんでした。

 この時、弁護士になれるのは、試験に及第した者・判事検事たる資格を有する者・法学博士・帝国大学法律科卒業生などと規定されています。

 今でいえば、旧帝の法学部を卒業すれば、弁護士になれたのですね。

 代言人をしていた人たちはどうなったかというと、

 第35条 現在ノ代言人ハ本法施行ノ日ヨリ六十日日以内ニ弁護士名簿ニ登録ヲ請フトキハ試験ヲ要セスシテ弁護士タルコトヲ得

として、当時の代言人は、無試験で弁護士に移行し、既存業者は救済されました。

③弁護士法改正 昭和8年

 昭和8年4月28日、法律第53号として、弁護士法が改正されました。
 
 弁護士の職務は、

 第1条 弁護士ハ当事者其ノ他ノ関係人ノ委嘱又ハ官庁ノ選任ニ因リ訴訟ニ関スル行為其ノ他一般ノ法律事務ヲ行フコトヲ職務トス

と規定になりました。

 「一般の法律事務」が、業務範囲に入り、いまの弁護士に近くなりました。

 同時に、「法律事務取扱ノ取締二関スル法律」が制定されます。これは、弁護士でないものが一定の法律事務をすることを取り締まる法律です。
 
 第一条 弁護士ニ非ザル者ハ報酬ヲ得ル目的ヲ以テ他人間ノ訴訟事件ニ関シ又ハ他人間ノ訴訟事件ニ関し又ハ他人間ノ非訟事件ノ紛議ニ関シ鑑定、代理、仲裁若ハ和解ヲ為シ又ハ此等ノ周旋ヲ為スヲ業トスルコトヲ得ズ正シ正当ノ業務ニ附随シテ為ス場合ハ此ノ限ニ在ラズ

 弁護士でないものは、報酬を得る目的で、他人の訴訟にかかわるなということですね。

 これが、現在の弁護士法第72条の前身になります。

 現行の弁護士法は、

 第72条 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務をを取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

としています。
 この「その他の法律事務」の解釈で、色々な業界と、弁護士の間で、解釈をめぐる争いが生じます。

④弁護士法改正 昭和24年

 昭和8年に弁護士業務として定めた「一般の法律事務」という定義があいまいであるとして、説明的に細分化した条文にする改正が行われます。

 弁護士の職務は、

 第三条 弁護士は、当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱によって、訴訟事件、非訟事件及び訴願、審査のの請求異議の申立等行政庁に対する不服申立事件に関する行為その他一般の法律事務を行うことを職務とする。
2 弁護士は、当然、弁理士及び税務代理士の事務を行うことができる。

と規定されました。

 これは、現行法の、

 第三条 弁護士は、当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱によつて、訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件に関する行為その他一般の法律事務を行うことを職務とする。
2 弁護士は、当然、弁理士及び税理士の事務を行うことができる。

 とほぼ同じですね。

 こうして、弁護士は、訴訟以外に、その他一般の法律事務を扱う仕事になります。

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