建設業許可 経営業務の管理責任者

行政書士の仕事 建設業許可 経営業務の管理責任者

建設業許認可の要件

 建設業の許可を受けるには、以下の要件を満たさなければなりません。

 ①経営業務の管理責任者がいること
 ②専任の技術者がいること
 ③請負契約に関して誠実性があること
 ④財産的基礎と金銭的信用があること
 ⑤許可を受けようとするものが欠格要件に該当しないこと

 行政書士は、相談を受けたときから、この要件を念頭に置いて回答し、受任後の書類作成はこの要件を満たすことを念頭に形式を整えながら書類を作成します。

経営業務の管理責任者とは

 建設業法第7条は、経営業務の管理責任者について、


第七条 国土交通大臣又は都道府県知事は、許可を受けようとする者が次に掲げる基準に適合していると認めるときでなければ、許可をしてはならない。
一 法人である場合においてはその役員(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者をいう。以下同じ。)のうち常勤であるものの一人が、個人である場合においてはその者又はその支配人のうち一人が次のいずれかに該当する者であること。
イ 許可を受けようとする建設業に関し五年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者
ロ 国土交通大臣がイに掲げる者と同等以上の能力を有するものと認定した者

と定めています。

 つまり、
 
 法人の場合はその常勤の役員
 個人の場合はその本人もしくは支配人

が、

 許可を受けようとする建設業について5年以上の経営業務の管理責任者としての経験があるか、それと同等以上の能力があると国土交通大臣が認定した場合に、経営業務の管理責任者がいると認められます。

役員のうち常勤であるもの

 経営業務の管理責任者となる常勤の役員(合同会社の業務執行社員、株式会社であれば取締役)は、休日などを除き、基本的に毎日所定の時間、その職務に従事している必要があります。

経営業務の管理責任者としての経験

 法人の役員、個人事業主又は支配人、その他支店長・営業所長等の地位で、経営業務を総合的に管理した経験が、一定年数必要になります。

 具体的には、

①許可を受けようとする建設業に関し5年以上の経営業務の管理責任者経験がある
②許可を受けようとする建設業以外の建設業に関し、7年以上の経営業務の管理責任者経験がある
③許可を受けようとする建設業に関し、経営業務の管理責任者に準ずる地位にあった者で、7年以上経営業務を補佐した経験のある者

ことが必要です。

 ①は、建設会社の役員を5年以上していて、今回独立して、これまでの勤務先と同種の会社を作って建設業をはじめる人のイメージですね。

 ②は、建設会社の役員を7年以上していて、今回独立して、これまでと別種の建設業をはじめる人のイメージですね。

 ③は、父の建設業を7年以上手伝っていた息子さんが代替わりして自分の名前で許可を取るイメージでしょうか。

経験を証明する添付書類

 
 法人の役員であったことは、履歴事項全部証明書や閉鎖事項全部証明書などを添付すれば、容易に経験を証明します。
 個人事業をしていた場合は、許可通知書の写しや、確定申告書の写し(税務署長の印のあるもの)などを添付して、証明することになります。
 
 経営補佐経験しかない場合は、非常に経験の証明が難しいところです。行政書士は、事前に、担当官に相談し、何を提出できるのか示して話し合います。例えば、死亡した事業主の確定申告書の控え7年分(専従者給与欄などに記載のあるもの)などを提出することになりますが、ほかにも使えるものがないか、依頼者に、一切合切資料を持ってきてもらい、精査するしかないでしょう。

建設業許可要件
建設業許可 経営業務の管理責任者 
建設業許可 専任の技術者とは 
行政書士 建設業許可の基礎 
行政書士の知識(建設業会計の基礎) 

行政書士の業務 建設業許可要件

行政書士の業務 建設業許可要件

 行政書士業務の建設業許可申請をするには、建設業法で定められた許可のための5要件を理解し、相談を受けた際には、要件に該当するかを一つずつ確認しながら回答する必要があります。

建設業法の規定

 建設業法は、建設業の許可要件を以下のように定めています。

第七条 国土交通大臣又は都道府県知事は、許可を受けようとする者が次に掲げる基準に適合していると認めるときでなければ、許可をしてはならない。
一 法人である場合においてはその役員(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者をいう。以下同じ。)のうち常勤であるものの一人が、個人である場合においてはその者又はその支配人のうち一人が次のいずれかに該当する者であること。
イ 許可を受けようとする建設業に関し五年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者
ロ 国土交通大臣がイに掲げる者と同等以上の能力を有するものと認定した者
二 その営業所ごとに、次のいずれかに該当する者で専任のものを置く者であること。
イ 許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関し学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)による高等学校(旧中等学校令(昭和十八年勅令第三十六号)による実業学校を含む。以下同じ。)若しくは中等教育学校を卒業した後五年以上又は同法による大学(旧大学令(大正七年勅令第三百八十八号)による大学を含む。以下同じ。)若しくは高等専門学校(旧専門学校令(明治三十六年勅令第六十一号)による専門学校を含む。以下同じ。)を卒業した後三年以上実務の経験を有する者で在学中に国土交通省令で定める学科を修めたもの
ロ 許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関し十年以上実務の経験を有する者
ハ 国土交通大臣がイ又はロに掲げる者と同等以上の知識及び技術又は技能を有するものと認定した者
三 法人である場合においては当該法人又はその役員等若しくは政令で定める使用人が、個人である場合においてはその者又は政令で定める使用人が、請負契約に関して不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないこと。
四 請負契約(第三条第一項ただし書の政令で定める軽微な建設工事に係るものを除く。)を履行するに足りる財産的基礎又は金銭的信用を有しないことが明らかな者でないこと。

建設業の5つの許可要件

 建設業法7条から、

 ・経営業務の管理責任者がいること
 ・専任の技術者がいること
 ・請負契約に関して誠実性があること
 ・財産的基礎と金銭的信用があること

という要件が抽出されます。

 また、建設業法8条などの規定から、

 ・許可を受けようとするものが欠格要件に該当しないこと

という要件が抽出されます。

 行政書士として建設業許可申請をするには、この5つの要件は完全に記憶しなければなりません。
 
 ①経営業務の管理責任者がいること
 ②専任の技術者がいること
 ③請負契約に関して誠実性があること
 ④財産的基礎と金銭的信用があること
 ⑤許可を受けようとするものが欠格要件に該当しないこと

①経営業務の管理責任者がいること

 法人の場合、役員のうち常勤のもののうち一人が、個人の場合は本人または支配人のうち一人が、「経営業務について一定の経験を有する」ことが必要です。
 「一定の経験」は、例えば、「許可を受けようとする建設業に関し、5年以上の経営業務の管理責任者としての経験があること」などです。

②専任の技術者がいること

 営業所ごとに許可を受けようとする建設業に関する一定の資格又は経験を有する技術者を専任で配置します。
 専任とは、その営業所に常勤してもっぱらその職務に従事することです。

③請負契約に関して誠実性があること

 
 暴力団の構成員などは排除されます。
 

④財産的基礎と金銭的信用があること

 貸借対照表上の純資産額の合計が500万円以上ある、あるいは500万円以上の資金調達能力を証明できるなどの要件を満たす必要があります。

⑤許可を受けようとするものが欠格要件に該当しないこと

 成年被後見人や非保佐人、一定の刑に処せられた者などに該当する場合です。

建設業許可要件
建設業許可 経営業務の管理責任者 
建設業許可 専任の技術者とは 
行政書士 建設業許可の基礎 
行政書士の知識(建設業会計の基礎) 

行政書士の試験

行政書士の試験

受験資格

 年齢・学歴・国籍に関係なく誰でも受験できます

試験日程

 例年11月の第2日曜日 午後1時から午後4時まで

受験手数料

 
  金7000円

試験科目

【法令等 46問】

 ・基礎法学
 ・憲法
 ・民法
 ・行政法(行政手続法、行政不服審査法、行政事件訴訟法、国家賠償法、地方自治法等)
 ・商法(会社法)

【一般知識等 14問】
 
 政治・経済・社会
 情報通信・個人情報保護
 文章理解

合格の基準

 以下の要件をすべて満たすと合格になります

 ①法令等科目の得点が122点以上
 ②一般知識等科目の得点が24点以上
 ③試験全体の得点が300点満点中180点以上

 各分野で足きりに引っかからなければ、おおむね6割取れば合格ということになります。

平成29年度試験の配点

 300点満点のうち、法令等の出題が244点、一般知識が56点。 

 法令等244点のうち、

 ・行政法が    112点
 ・民法が      76点
 ・憲法が      28点
 ・商法(会社法)が 20点
 ・基礎法学が     8点 

となっています。

 行政法と民法から圧倒的な出題がなされます。
  

問題事例

平成29年度 問題12

処分理由の提示に関する次の記述のうち、法令および最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。

1 行政手続法が、不利益処分をする場合に同時にその理由を名宛人に示さなければならないとしているのは、名宛人に直接義務を課し、またはその権利を制限するという同処分の性質にかんがみたものであるから、行政手続法には、申請に対する拒否処分に関する理由の提示の定めはない。

2 一級建築士免許取消処分をするに際し、行政庁が行政手続法に基づいて提示した理由が不十分であったとしても、行政手続法には理由の提示が不十分であった場合の処分の効果に関する規定は置かれていないから、その違法により裁判所は当該処分を取り消すことはできない。

3 行政手続法は、不利益処分をする場合にはその名宛人に対し同時に当該不利益処分の理由を示さなければならないと定める一方、「当該理由を示さないで処分をすべき差し迫った必要がある場合はこの限りでない。」としている。

4 青色申告について行政庁が行った更正処分における理由附記の不備という違法は、同処分に対する審査裁決において処分理由が明らかにされた場合には、治癒され、更正処分の取消事由とはならない。

5 情報公開条例に基づく公文書の非公開決定において、行政庁がその処分理由を通知している場合に、通知書に理由を附記した以上、行政庁が当該理由以外の理由を非公開決定処分の取消訴訟において主張することは許されない。

 正解 【3】

行政書士の報酬

行政書士の報酬



 ネット上で、「食える」「食えない」が盛んに議論される行政書士ですが、仕事さえあれば、報酬は安いものではありません。

 日本行政書士会連合会が5年に一度行う報酬に関する統計調査(平成27年度報酬額統計調査)を見てみましょう。
 
 ・建設業許可申請(個人・新規)知事許可の平均報酬
  11万8204円(最頻値が10万円)
 
 ・建設業許可申請(個人・更新)知事許可の平均報酬
  6万2939円(最頻値が 5万円)

 
 ・建設業許可申請(法人・新規)知事許可の平均報酬
  13万8779円(最頻値が15万円)

 
 ・宅地建物取引業者免許申請(新規)知事許可の平均報酬
  10万7195円(最頻値が10万円)
 
 ・宅地建物取引業者免許申請(更新)知事許可の平均報酬
  7万4250円(最頻値が5万円)
 
 ・風俗営業許可申請 1号 キャバレーの平均報酬
  15万8484円(最頻値が15万円)
 
 ・風俗営業許可申請 2号 料理店の平均報酬
  15万5197円(最頻値が10万円)

 いかがでしょうか。

 これら、行政書士の独壇場の専門分野である許認可業務の平均的な報酬は、他士業と比較しても、安いとは言えません。

 時間単価で考えると、税理士の申告業務や、司法書士の登記業務と、遜色はないと考えます。

 もちろん、その仕事を確保するのが大変なわけですが、仕事さえ確保できれば、極端に単価が低くて、忙しく働いても儲からない仕事というわけではありません。

行政書士は開業費用が安い

行政書士は開業費用が安い

行政書士の開業費用

 行政書士の良いところは、開業費用が小さいことです。

 必ず必要な設備は、事務所とパソコン・電話とFAXです。

 事務所は、自宅事務所で問題ありません。

 あとは日本行政書士会連合会への登録や、行政書士会への入会費用です。

 東京では、登録諸費用が、東京で約27万6000円です。

 内訳は、

  登録手数料    2万5000円
  入会金         20万円
  会費3ヶ月分   1万8000円
  政治連盟会費3ヶ月分 3000円
  登録免許税        3万円

となります。

 入会金が、各地の行政書士会により異るので、地域差があります。
 例えば、大阪では上記の入会金が25万円です。

 各月の会費も6000円程度で、他の士業にくらべて格安です。

 もちろん、上記以外にも、必要な専門書は買う必要がありますし、職印、名刺など細かい出費はありますが、細かな雑費は10万以下に抑えることが可能でしょう。

 仕入れも設備投資もほとんどなく、これだけではじめられる商売はほとんどないでしょう。

 登録の手順としては、まずは、事務所を準備してから、自分が開業する各都道府県の行政書士会に連絡し、日本行政書士会連合会への登録手続きをします。必要書類を提出し入会金等を納付すると、この登録申請後、2~3ヶ月で登録され、行政書士証票が公布されます。

行政書士の仕事

行政書士の仕事



行政書士の仕事

 行政書士の業務は、行政書士法に規定されています。

第一条の二 行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。以下この条及び次条において同じ。)その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む。)を作成することを業とする。
2 行政書士は、前項の書類の作成であつても、その業務を行うことが他の法律において制限されているものについては、業務を行うことができない。
第一条の三 行政書士は、前条に規定する業務のほか、他人の依頼を受け報酬を得て、次に掲げる事務を業とすることができる。ただし、他の法律においてその業務を行うことが制限されている事項については、この限りでない。
一 前条の規定により行政書士が作成することができる官公署に提出する書類を官公署に提出する手続及び当該官公署に提出する書類に係る許認可等(行政手続法(平成五年法律第八十八号)第二条第三号に規定する許認可等及び当該書類の受理をいう。次号において同じ。)に関して行われる聴聞又は弁明の機会の付与の手続その他の意見陳述のための手続において当該官公署に対してする行為(弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)第七十二条に規定する法律事件に関する法律事務に該当するものを除く。)について代理すること。
二 前条の規定により行政書士が作成した官公署に提出する書類に係る許認可等に関する審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立ての手続について代理し、及びその手続について官公署に提出する書類を作成すること。
三 前条の規定により行政書士が作成することができる契約その他に関する書類を代理人として作成すること。
四 前条の規定により行政書士が作成することができる書類の作成について相談に応ずること。
2 前項第二号に掲げる業務は、当該業務について日本行政書士会連合会がその会則で定めるところにより実施する研修の課程を修了した行政書士(以下「特定行政書士」という。)に限り、行うことができる。

条文を読んでも、混み入りすぎて、良く分かりませんね。

 思い切って簡略化すると、

 ①官公署提出書類の作成(他の法律で制限されているものを除く)
 ②権利義務・事実証明書類の作成(他の法律で制限されているものを除く)

が主な業務になります。

官公署提出書類の作成

 行政書士は、官公署に提出する書類を作成します。
 しかし、他の法律で制限されている場合はできません。

 例えば、弁護士・弁理士・司法書士・税理士、社労士などの資格業の独占領域には入り込めないことになっています。

 その結果、行政書士が担当する主な官公署は、都道府県庁、市町村役場、警察、運輸支局などになります。

権利義務・事実証明書類

 権利義務に関する書面とは、権利の発生・存続・変更・消滅の効果を生じさせることを目的とする意思表示を内容とする書類をいいます。
 たとえば、「契約書」「遺産分割協議書」等があります。

 事実証明に関する書類としては、例えば「議事録」「相続関係説明図」などが考えられます。

 事実証明に関する書類は、行政書士法上は「実地調査に基づく図面類を含む」と規定されており、文字通り考えると相当広い範囲が行政書士の職務領域で規制されるはずですが、有名無実な状態です。例えば、不動産の現況調査図、土地や建物や建設現場、それぞれ不動産屋さんや、建設コンサルなど、さまざまな分野の民間企業が普通に業務として行っていますが、問題にされることは無いでしょう。

 現実的には、官公署提出書類に匹敵するような、ある程度高次元な証明のための書類が、行政書士の独占業務となるものと考えられます。

 ある程度重要な書類を代行して作成するビジネスをする場合は、行政書士登録したほうがいいでしょう。

実際の需要

 「行政書士の職務範囲は広い」とか「数千種類の書類作成ができる」などという文句を見かけますが、職業として依頼があるような分野以外は意味がありません。
 
 仕事して成立するのは、ある程度複雑か、ある程度面倒くさいものに限定されます。

 実際に需要のある分野としては、
  
 許認可申請
 
 自動車関連手続

があります。

 許認可申請は、業者を取り締まる法律上の規制があり、法律上の要件が通るように書類を整備して提出する必要があります。これから商売をはじめる人たちは開業準備に忙しいですし、細かい法規や行政手続きを勉強していられないので、時は金なりと、プロである行政書士にまかせてしまう人がたくさんいます。

 許認可の具体例としては、建設業、運送業、宅地建物取引業、産業廃棄物処理業、飲食店営業、風俗営業、古物商などの許可申請等です。

 なかでも、行政書士業務として、代表的ものは建設業許可新申請です。

 建設業者は数が多いですし、許可申請のための書類もそれなりに複雑ですから、しっかりした事務スタッフがおらず、自分自身は現場での営業や工事に忙しい小さな事業者は、行政書士に依頼します。

 建設業は、新規で許可を取るだけでなく、毎年の営業年度終了届や、5年ごとの更新手続きもありますので、継続して依頼をとることも期待できます。これを専業にしている事務所は多数あります。

 行政書士業務をビジネスとして行う以上、「反復性」「継続性」「定型性」のある業務の確保が重要です。毎回、新しい業務をして、たくさんの調べものをしていては、時間がなくなりますし、経営は効率化されません。
 
 特定の業務をマスターし、何度も習熟するうちに、効率的にさばくことができ、採算がとれるようになります。依頼の多い分野から業務を選び、専門性を身に着けていくことが大事なので、建設業許可のノウハウは必須です。この意味で、建設業許可申請は、行政書士にとって、非常に大事な業務と考えられます。

 そのほか、官公署提出書類作成業務としては、在留資格取得許可申請、帰化許可申請、永住許可申請などを核業務としているかたもいらっしゃいます。こちらも専門性を身に着ければ、一定の需要が見込める分野です。

 許認可のほか、行政書士の仕事して件数が多いの行政手続きとしては、自動車関連手続きがあります。
 例えば、車庫証明、名義変更、廃車の手続き等です。

 自動車は数が多いので事案の件数が多いですし、受任から終了までの時間が短く、自動車販売業者とつながりをつくれば、ある程度安定した依頼が見込めます。依頼ルートさえ確保すれば、安定して一定の仕事の依頼が見込め、事務所経営の安定を図れる分野です。

 もっとも、自動車関連業務は、ほとんどが急ぎの業務になりますし、1件の単価が安いので、大量に処理してこそ意味がある世界です。

行政書士制度の歴史

行政書士制度の歴史



行政書士の歴史

 市町村役場・警察・運輸局などのお役所での手続きを代行してもらえる行政書士さん。

 主力業務は、建設業や飲食店などの、営業許可を得るための煩雑な手続きの代行です。
 
 運輸局の手続きも代行しますので、みなさん、自動車の手続きで一度はお世話になったことがある、身近な士業ではないでしょうか。

 行政書士制度の歴史を調べてみました。

代書人取締規則 明治36年~

 明治になり、行政が近代化していくなか、警察署や自治体などに提出する書類の作成をする代書業者が自然発生します。
 
 特に規制のない仕事でしたが、悪質業者の取り締まりなどのために、明治36年(1903)から数年の間に、全国の都道府県令で、代書人取締規則が制定されました。

 その最初のものが、明治36年(1903年)8月24日、大阪府令代書人取締規則です。

第一条 代書人トハ他人ノ委託ニ依り料金ヲ受ケ文書ノ代書ヲ業トスル者ヲ謂フ

第二條 代書人タラムトスル者ハ族籍、住所、氏名、年齢ヲ具シ所轄警察署二願免許證ヲ受クヘシ

第三條 素行善良卜認ムル者二非サレハ代書営業ヲ免許セス免許後卜難本則二違背シ又ハ素行不良ト認ムルトキハ免許ヲ取消スコトアルヘシ

 つまり、代書業をする場合は、

 「所轄警察署に願い出て、免許を受けよ」

 「素行が善良なら免許を与えるが、素行が不要なら免許は取り消す」、

ということです。

 これとほぼ同じ条例が、全国の都道府県で作られました。これが、行政書士制度の前身になります。

 この規定は、「文書の代書」業務全般を規制するものなので、行政庁への代書人だけでなく、裁判所内で業務を行う代書人や、筆耕業者も含まれます。
 

司法職務定制の代書人は行政書士の起源ではない

 
 ところで、「代書人取締規則」の31年前、明治5(1872)年、司法職務定制(太政官無号達)により、司法業務の代書人が置かれています。

 この代書人は、後に司法書士制度に発展します。この司法職務定制の代書人は、
 
第四二条(代書人)第一 各区代書人ヲ置キ、各人民ノ訴状ヲ調成シテ其詞訟ノ遺漏無カラシム

 というもので、「訴状の調成」を業務とする仕事です。この規定を受け、実際に裁判所内や裁判所外で、代書人が営業を行うようになりました。

 日本行政書士会連合会は、この司法職務定制の代書人を、行政書士制度のルーツと考えているようです。

 しかし、歴史的資料をみても、司法職務について定めた「人民の訴状を調成する」仕事が、行政書士のルーツになるという理由は、見当たりません。

 当時は、裁判所の前で営業している代書人も、警察に提出する書類を依頼されれば書類作成を行うことはあったでしょう。だからといって、行政書類作成と関係ない司法職務定制度を、行政書士制度のルーツとするのは、無理がありそうです。

司法代書人法

 
 代書人取締規則が制定されると、司法職務定制以来裁判所の中で営業していた代書人を中心に、司法代書人の制度化を目指す運動がはじまります。「俺たちは裁判関係の専門職であって筆耕業者とは別物だ」、というわけです。

 そして、大正8(1919)年4月9日、司法代書人法(法律第四十八号)が制定されました。

第1條 本法ニ於テ司法代書人ト称スルハ他人ノ嘱託ヲ受ケ裁判所及検事局ニ提出スヘキ書類ノ作製ヲ為スヲ業トスル者ヲ謂フ

第2條 司法代書人ハ地方裁判所ノ所属トス

 これにより、裁判所業務は「代書人取締規則」の対象から外れます。

 ・裁判所の代書人は、司法代書人法に服し、地方裁判所の監督を受け、裁判所の業務を行う

 ・それ以外の代書業は、代書人取締規則に服し、警察の監督を受け、その他の代書業務を行う

このような制度になりました。
 
 司法代書人の誕生により、地方裁判所に監督される裁判所の業務をする司法代書人と、警察の監督を受けるそれ以外の一般代書人が、法的に明確に分離されました。

代書人規則

 大正9年(1919年)11月25日に内務省令第40号で、代書人規則が定められました。
 これにより、「代書人取締規則」の都道府県によって代書人業の規制が異なる状況を、統一されることになります。

第一条 本令ニ於テ代書人ト称スルハ他ノ法令ニ依ラスシテ他人ノ嘱託ヲ受ケ官公署ニ提出スヘキ書類其ノ他権利義務又ハ事実証明ニ関スル書類ノ作製ヲ業トスル者ヲ謂フ

第二条 代書人タラムトスル者ハ本籍、住所、氏名、年齢及履歴並事務所ノ位置ヲ具シ主タル事務所所在地所轄警察官署ノ許可ヲ受クヘシ

第九条 代書人及其ノ補助員ハ左記各号ノ行為ヲ為スコトヲ得ス
 一 法令ノ規定ニ依ルニ非スシテ他人ノ訴願、訴訟又ハ非訟事件ニ関シ代理、鑑定、勧誘、紹介、又ハ仲裁ソノ他ノ行為ヲ為スコト

 ここではじめて、「官公署に提出する書類」と「権利義務・事実証明書類」の代書業をするならば、「警察署の許可」を受けるという規制がなされることになります。

 「権利義務・事実証明書類」というのは刑法にもでてくる法律上の難しい言葉ですが、要するに社会生活において大事な書面だけを対象にして代書業を規制することにし、単に文字を清書する筆耕業のようなものは警察の許可は不要になりました。
 
 官公署に提出する書面を明文で規定したという意味で、これが実質的な行政書士制度の誕生と言えるかもしれません。

行政書士法

 昭和26年(1951年)2月22日、行政書士法が誕生します。
  
 第一条 行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類その他権利義務又は事実証明に関する書類を作成することを業とする。

 2 行政書士は、前項の書類の作成であっても、その業務を行うことが他の法律において制限されているものについては、業務を行うことができない。

 というものでした。

 これは、大正9年の「代書人規則」とそっくりですね。

 行政書士制度は、このまま現在に至ります。 

 現行法による業務範囲は、以下のとおりです。専門家以外は読まなくて結構です。いろいろと肉がつきましたが、骨組みは同じだと分かりますね。

(業務)
第一条の二 行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。以下この条及び次条において同じ。)その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む。)を作成することを業とする。

2 行政書士は、前項の書類の作成であつても、その業務を行うことが他の法律において制限されているものについては、業務を行うことができない。
第一条の三 行政書士は、前条に規定する業務のほか、他人の依頼を受け報酬を得て、次に掲げる事務を業とすることができる。ただし、他の法律においてその業務を行うことが制限されている事項については、この限りでない。
一 前条の規定により行政書士が作成することができる官公署に提出する書類を官公署に提出する手続及び当該官公署に提出する書類に係る許認可等(行政手続法(平成五年法律第八十八号)第二条第三号に規定する許認可等及び当該書類の受理をいう。次号において同じ。)に関して行われる聴聞又は弁明の機会の付与の手続その他の意見陳述のための手続において当該官公署に対してする行為(弁護士法(昭和二十四年法律第二百五号)第七十二条に規定する法律事件に関する法律事務に該当するものを除く。)について代理すること。
二 前条の規定により行政書士が作成した官公署に提出する書類に係る許認可等に関する審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立ての手続について代理し、及びその手続について官公署に提出する書類を作成すること。
三 前条の規定により行政書士が作成することができる契約その他に関する書類を代理人として作成すること。
四 前条の規定により行政書士が作成することができる書類の作成について相談に応ずること。

2 前項第二号に掲げる業務は、当該業務について日本行政書士会連合会がその会則で定めるところにより実施する研修の課程を修了した行政書士(以下「特定行政書士」という。)に限り、行うことができる。

司法行政代書人となる秘訣

「司法行政代書人となる秘訣」を読む



はじめに

 独立開業型の資格として人気がある、司法書士や行政書士。

 今も、「司法書士になれる本」「行政書士になれる本」のようなものが沢山発売されていますね。

 そのような本の、戦前版ともいうべき本があります。

 昭和11年6月20日発行の「司法行政代書人となる秘訣」(松陽堂宮本書房)。
 著者は、鈴木啓史。定価は金1円。
 
 著者の鈴木さんは司法書士です。この本の前に、同じ出版社から、「金銭債務調停法と其運用」、「民衆本位登記の実際」、「民事訴訟法の通俗化と訴訟の実際知識 附・功名なる債務者の裏手と対策」(法学士峯川宏之と共著)などの著書を出しています。

 第1編の冒頭、昭和10年5月に司法代書人は司法書士に改称されていますが、この本では司法代書人と記述しているという注意書きがあります。

 また、行政代書人、いわゆる一般代書人は法令上においては単に「代書人」ですが、この本で便宜上行政代書人と記述することが述べられています。

有望性と年収

 当時、司法書士になるには裁判所の認可が必要でした。一方、代書人(後の行政書士)は所轄警察署への許可により営業することができました。
 
 この点につき,司法代書人となるのは、行政代書人に比して、其の認可を受けるのは困難なものですが、認可を得て開業すれば、その裁判所に所属すべき司法代書人数には制限があり、一定数以上に増えることがないので、「別段の競争も起こらずして略確定的収入が得られる」「一生涯のお株として生活の安定が保証される安全第一の有利職業である」、としています。

 収入については、月収100円から300円、まれには400円から500円の収入が有り、ほとんど無資本ではじめられる商売としては、これは結構なものだ、とのことです。

 全体の書きぶりが若干大げさなので、この手の資格本のすべてを真に受けるわけにはいきませんが、控えめに見ても、悪い職業ではなかったと考えられます。

 もっとも、開業早々は、少額に甘んじなければならない、とも記されています。
 

定数制限

 司法代書人の認可のための試験は、地方裁判所が必要があると認めるときだけ行えばよいということになっていました。

 このため、試験が行われることもあるし、試験を行わないで一般人に認可されることもありました。裁判所や登記所を新たに設置する際に、多数の認可を出すようなときは試験が行われ、随時欠員や増員のために一名程度を認可する際には、試験は行われなかったそうです。

 また、裁判所の書記官や、裁判所書記官試験に合格したものは試験なしに認可されることになっていましたが、これもまた、その裁判所の予定人員を超えて認可することはないとのことです。

 要するに、まったくの裁判所の裁量で、その地域の必要数に応じて、認可がなされていました。

認可試験の内容

 実際に、大正8年ころに、東京地方裁判所で行われた司法書士の認可試験の内容は、

  一、電車事故による人体障害に対する損害賠償請求の訴状を認めよ
  一、廃家手続きの書面を認めよ
  一、離婚訴状を認めよ

とのことです。
 
 学力については、中等学校卒業程度の学力があれば申し分ないが、高等小学校卒業程度でも用は足りると記載されています。

司法書士になるために

 司法書士の業務を分類すると、訴訟事件、非訟事件、登記事件、検事局に提出する書面、その他競売事件、破産または和議事件、調停事件等がある、とのことです。

 司法書士は、主として裁判事件に関する代書を目的とする者と、主として登記事件の代書をするものに分かれている。訴訟事件をやるものは民事訴訟法を、登記事件をやるものは不動産登記法・商業登記手続きを研究せよ、となっています。
 
 当時の司法書士は、裁判所内で営業する者、裁判所外で営業する者を問わず、その裁判所の管轄区域内で認可される人数が制限されていました。この制限には、法律上確固たる数字があるわけではなく、裁判所の事件数に比例して決まっていたそうです。

 司法書士が1~3人の小規模庁では一人増員すれば他の司法書士への影響が大きいので、新規参入は望み難い。これに対して、司法書士数7~8人のエリアであれば、一人くらい増員されても他への影響は少ないので、認可を受けることも絶対不可能とは言えない、と書かれています。

司法書士になる方法

 司法書士になる方法としては、まず、裁判所内の司法書士は人数も少数だし、何らかの欠員補充の際に裁判所が老練な者を認可するだけなので、まずは、裁判所外での認可を目指すべき、とのことです。
 
 しかし、増員の余地や欠員の無いところに漫然と認可の申立てをしても、見込みはありません。

 このあたりの情報は、現地の代書人なら事情が分かりますが、彼らは商売敵が増えるのが嫌で、真相は教えてくれません。そこで、監督判事や監督書記、登記所の主任などに面会し、当地の情報や、増員や欠員の余地のある場所などの情報を収集し意見を聞くべきだ、とのことです。

 面会にあたっては、紹介状があれば一番良いが、なければ進んで出頭して、受付なりボーイなりに言えば、事務上の支障がない限り接見でき、意見はしてくれるだろう、とのことですから、昔はのんびりしたものですね。
 

司法書士になるための運動

 裁判所職員に接触して、脈があると観測された場合は、熱心に懇請して、運動をします。

 司法書士の認可願の出願は、事実上、裁判所の監督書記や登記所の主任の意見書に基づき認否が決まるので、彼らを押さえなければなりません。

 「現今の世想に於いては何事を為すに付ても表面的には勿論、裏面運動も盛んに行はれる」。大学や専門学校卒業者の就職においてすら、「折箱の重量」によって成否が決まるような極端な傾向があるのだから、それなりの運動は、「必要條件」、とのことです。

 懇請や運動をしても、人員制限のために目的が達せられない場合は、「行政代書人より徐々に進出する方法」が紹介されています。

 たとえ数年待ってでも司法書士を目指すと決めても、まったく縁のない商売をしていては、機会を逃すから、まずは町村役場や警察署を目的として容易に認可される、行政代書人を開業するのだそうです。

徐々に司法書士になる秘策

 行政代書人から徐々に司法書士に進出する具体的な方法としては、まず裁判所から少し離れた町村役場や警察署の周辺で行政代書人を開業するのだそうです。
 
 そして、司法書士の認可を出願する。
 裁判所と距離のある地で営業する無所属司法書士は、裁判所周辺の専属司法書士の収入高にあたえる影響が少ないので、認可を得るのが容易、とのことです。

 本来、司法書士と行政代書人の兼業は許されない扱いですが、その規定は裁判所周辺の専属司法書士にのみ適用されていて、遠方の無所属司法書士には適用されないのだそうです。

 少し理解が難しいですが、著者の書きぶりからみるに、こうした無所属司法書士は、扱える裁判所業務に制限があったようです。

 基本的に、郵便申請で足りるような簡易なものを取り扱い、時に訴訟事件や登記事件を扱うことがあっても後述する代弁式という特殊な方法をとる必要がありました。
 つまり、制限付きの簡易司法書士ですね。

 こうして行政代書人兼司法書士の認可を受けておいて、後に司法書士専門として進出することを目指すのだそうです。

 この方法によれば、行政代書の傍ら司法書士の事務を練習でき、司法役所に時々接近し得るので進出の機会をとらえやすく、機会を見出したときには新規出願者より経験を有するという有利な条件を具備することができる、とのことです。

 そして、進出の機会を得た際には、新たに司法書士の認可を得るのではなく、単に事務所移動の認可を得れば足りるのだそうです。

 

代弁式で登記業務ができる

 もうひとつの「徐々に司法書士になる方法」は、現在は無い「代弁式」で登記業務をはじめることです。

 これは登記所から遠く離れた山間の僻地の住民の登記事件のために、申請人自身の出頭に代えて、委任状を持って代理人として一切の処理をするという、便利屋式の方法でした。
 
 登記のために、辺鄙なら村落から、遠方の登記所に出頭するのは負担が大きい。まして、登記手続きに無知な一般の者が、その日に手続が終了するということは稀で、数回の往復を余儀なくされることがあります。そこで、最寄りの精通者に、委任して任せてしまうのが便利ということになり、地域によっては立派な商売になったのだそうです。

 この方式によれば、司法書士の認可を得なくても、登記業務をすることが事実上できました。

 司法書士法の「代書料を受ける目的」ではなく、登記事件一切の代理処理の委任を受け、「登記たる仕事の請負者であり其の完成迄の労務に対する報酬を目的とする」ものであって、司法書士法に違反しない、というような論理のようです。

 もっとも、どう考えても違法に近いグレーな行為なので、登記官によっては、代弁人が作成した書面を認めないことがあるそうです。その場合は附属書類だけを作成し、登記申請書のみ司法書士に書かせれば問題はないし、その分だけなら、さして司法書士費用も高くはない、とのことです。

 なお、代弁式では、双方代理は許されず、共同申請登記においては、格別に代理人をつける必要があるそうです。

行政代書人になる方法

 最後に、行政代書人になる方法ですが、これは司法書士のように役所ごとの人数制限がなく、無制限に許可されるので、「司法代書人の如き有望安全性は乏しいものである」、とのことです。

 資格に関する規定もないし、試験を行うこともなく、ある程度の学力があり、前科者とか著しい不行跡がなければ、何人でも許可されます。

 「開業後の事務も比較的平易なものであるから誰にでも出来ると云ってよい商売である」とすが、列記されている業務からみるに、当時は現在のように行政が高度化しておらず、複雑な許認可がなかったようです。

 人数制限がないため、自然同業者が多すぎる場合があり、その場合は役所の出入りに便利で、なるべく接近した場所に事務所を設けることが肝要です。