弁護士の仕事 任意整理

弁護士の仕事 任意整理

 弁護士や司法書士の仕事の債務整理。10数年前に多重債務者が大きな社会問題化したころのような受任件数はありませんが、街の弁護士になれば、年に数件は取り扱う日常的な業務です。

受任

 サイト集客、法テラス、各種相談会経由で、法律相談が入ります。その他、顧問先から従業員の借金問題について頼まれるなど、受任ルートは様々です。

法律相談

 債権者、負債額、取引開始時期、債務増加の原因などをヒアリングします。

 その結果をもとに、

 ・任意整理
 ・自己破産
 ・個人再生
 ・特定調停

などのメニューの中から、選択肢を提示します。

 2010年以前から借入があり、利息制限法超過の取引部分があるため減額や過払いなどの可能性があるため方針選択ができない場合は、ひとまず任意整理を前提とした委任を受けて債権調査を行い、債権調査の結果が出た後で、あらためて法律相談の機会を持ち任意整理か自己破産かなどのた方針決定をすることもできます。
 
 任意整理を前提とする場合は、受任時に、債務者と、毎月〇万円などの形で預り金の約束をします。この預入れは、弁済原資に使用します。支払い停止から弁済開始までの間の浪費を抑制するだけでなく、頭金などに使えるため和解交渉がスムーズに行えます。約束した預入れができるかできないかで、任意整理が実際に行えるケースかどうかの判断基準にもなります。本人が自己破産は避けたいといっても、各月の積立がほとんどできなければ、それなりの選択をしてもらう必要がでてきます。

受任通知

 
 債権者に書面で受任通知を送付します。
 
 受任通知には、

 ・委任者の住所氏名
 ・代理人に就任した旨
 ・今後債務整理を行う旨
 ・取引履歴の開示を求める旨
 ・直接取り立ては止めるよう要請
 
などを記載します。

 委任者について債権者が把握している住所と、現在の住所が違う場合は、債権者が債務者を特定できるように旧住所を記載します。この場合、現在の住所を知られないように、あえて現在の住所を書かないということも考えられます。

 相手からの問い合わせには、債権調査完了後、こちらから方針をご提案すると回答します。自己破産で間違いない場合は、最初から自己破産の方針と伝えたほうが、進捗の問い合わせがなくなり、無用な電話対応の手間が減少します。

債権調査

 2週間~2ヶ月程度で取引履歴が届きます。
 内容を確認して、正確な負債額を確認します。
 取引期間中に、利息制限法を超過する部分があれば、引き直し計算を行います。
 常識的な期間を経過しても、取引履歴が届かない場合には、再度請求します。
 負債額が確定したら、依頼者と打ち合わせをしたうえで、債務整理の方針を決定します。任意整理が不可能なほどに負債額が大きければ、依頼者と相談の機会を設け、自己破産等の選択肢を提案します。自己破産であれば、直ちに書面作成の準備を行います。過払いが発生していれば、その債権者には請求書面を送付します。
 

和解の提案

 任意整理が可能なら、残元金ベースで、各社に分割弁済の提案を書面で行います。通常、36回(3年)~60回(5年)の範囲です。

 相手が貸金業者や信販会社のような業者なら、和解を希望する旨と、

 ・弁済総額 残元金120万2589円
 ・支払開始日 〇年〇月〇日
 ・60回分割弁済
 ・第1回弁済 2万2589円
 ・第2回~第60回  2万円
 
などとシンプルに提案内容を列記すれば足ります。
 
 相手が一般債権者であれば、事務的になり過ぎないよう、挨拶文や債務者の状況などに十分工夫を凝らす必要があります。

示談交渉

 こちらから和解の提案をしたら、相手からのリアクションを待ちます。
 相手が、そのまま応諾する場合は、和解書をどちらが作成するか決めます。相手が業者であれば「こちらで作りたい」というケースが多くなります。和解が電話でまとまったら、郵送で和解書を取り交わします。相手が貸金業者や信販会社であれば、期限の利益喪失条項(2回以上の延滞で期限の利益喪失、延滞利息〇%)との条項を求められますが、常識的な範囲で応諾することになります。

 相手が応諾しない場合は、相手のリアクションに応じて、提案内容などについて、微調整を行います。任意整理においても、債権者平等を害さないように、可能な限り全債権者同一条件での和解を目指します。数社のうち一社だけまとまらないということはよくありますので、先に和解がまとまった業者への弁済を開始し、まとまらない業者については、毎月の積立てにより債務者からの預り金が増えた分を第1回の弁済額にプラスして、弁済回数を毎月減らしていくなどしながら、提案を続けて、相手が折れるのを待つこともあります。

弁護士の仕事

弁護士の仕事

弁護士の職務

 弁護士法は、弁護士の職務を、

 第三条 弁護士は、当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱によつて、訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件に関する行為その他一般の法律事務を行うことを職務とする。
2 弁護士は、当然、弁理士及び税理士の事務を行うことができる。

と規定しています。

業態

 日本には、四大法律事務所もしくは五大法律事務所と呼ばれる法律事務所があり、400名~500名ほどの弁護士が所属しています。こうした法律事務所は、規模を活かして、大会社の企業法務などを得意としています。大きいと言っても400~500名ですから、企業などと比較すると大きくはありませんね。
 
 こうした例外はあるにせよ、日本では、大半の弁護士は1人、もしくは数名程度で事務所を開き、事業を行っています。街の弁護士、いわゆる街弁です。

実際の需要

 街の弁護士の業務は多様で、多くの種類の「事件」(弁護士は民事刑事を問わず法的な案件をこのように呼びます)が持ち込まれます。

 比較的、繰り返し依頼があるものとしては、

 ①離婚事件

 ②相続事件(遺産分割)

 ③債務整理事件(任意整理)

 ④債務整理事件(自己破産申立て、個人再生申立て)

 ⑤交通事故事件
 
 ⑥債権回収
 
 ⑦破産管財人、成年後見人、相続財産管理人、特別代理人
 
 ⑧刑事弁護

などがあります。

①離婚事件

 協議による離婚交渉がまとまらなければ、裁判所を利用し、調停や裁判により、離婚や、離婚にともなう慰謝料・財産分与・子の親権者を誰にするかなどの問題解決を目指します。
 

②相続事件(遺産分割)

 相続が発生し、当事者間で遺産分割がまとまらなければ、裁判所を利用した調停や裁判により、問題解決を目指します。

③債務整理事件(任意整理)

 消費者金融などからの借入について、今後の利息を停止して、36回~60回程度での分割弁済の和解交渉をします。

 もっとも、法律的に、弁護士が利息を停止したり分割弁済の主張が可能というわけではありません。弁護士が介入することで、「この和解案がまとまらなければ裁判所を利用した自己破産や個人再生になり、ほとんど回収できなくなる」、という懸念を業者に与えることで、長期の分割弁済に応諾してもらうようお願いする仕組みです。

 もし、利息制限法に基づく引き直し計算をした場合に過払い金が発生していれば、訴訟外での交渉や不当利得返還請求訴訟により回収を図ります。

④債務整理事件(自己破産申立て、個人再生申立て)

 裁判所を利用した、負債の整理手続きのための代理人として書類を作り、債務者に付き添って裁判所に出頭します。
 
 自己破産は、最低限の生活のための資産以外はすべて差し出し、それを破産管財人が債権者に配当することで、残りの債務の支払い義務が無くなるのが自己破産・免責申立てです。

 再生計画で定められた一定の額を支払うことで、残りの債務の支払い義務がなくなるのが個人再生申立てです。

 それぞれ、厳しい法的要件がありますので、それを満たすような形の書類を作ります。

⑤交通事故事件

 交通事故の被害者側や加害者側の代理人として、示談交渉を行います。

 被害者側の場合、多くの場合は、加害者本人と直接の交渉ではなく、加害者の任意保険会社との交渉になります。
 保険会社は、自賠責保険や自社の独自基準で計算した賠償金での和解を求めますので、弁護士は、裁判になった場合にとれるであろう裁判所基準により慰謝料等の損害額を計算して請求し、妥当な金額での和解を目指します。

⑥債権回収

 売掛金や貸付金など様々な債権回収の依頼があります。
 
 多くの場合は、まずは弁護士名で「支払わなければ法的措置をとる」との予告をつけた請求書を配達証明付内容証明郵便で送付し、支払いがなければ訴訟提起により回収を図ります。

⑦破産管財人

 破産管財人は、裁判所により選任されます。法律上弁護士でなければいけないわけではないですが、事実上ほぼ弁護士が選ばれます。

 法律の規定に従い破産者の財産を現金化して「破産財団」を作り、各債権者に配当します。もっとも、実際には、配当まではいかないケースがほとんどです。そもそも配当できるほどの資産がそもそもないことが多く、もし多少の破産財団が形成されても、一般の債権者への配当の前に、滞納税金等の弁済が優先される規定になっているので、そちらへの弁済に充てられてしまいます。

 なお、破産管財人は、破産申立ての代理人とは違う弁護士が選任されます。

⑧刑事弁護

 刑事事件の被告人の弁護活動をし、刑事裁判が適正に実施され、不当な量刑が課されることがないように目指します。

弁護士制度の歴史

弁護士制度の歴史

日本の弁護士制度

 弁護士というと、裁判所の法廷で裁判の代理をする人というイメージですが、弁護士法の規制する範囲は思いのほか広くなっています。

 どんな企業活動をするにせよ、どんな新規ビジネスを立ち上げるにせよ、弁護士の業務範囲には、注意を払う必要があります。

 金融機関・保険会社やその代理店・宅建業者・建設業者・コンサル業など、ちょっとしたサービスのつもりで顧客のためにすることが、弁護士法違反を問われることがありますので、気をつけなければいけません。

 落とし穴にはまらないためにも、弁護士制度の歴史的沿革を知っておくのは有益です。

①代言人 弁護士の前身

 明治5年8月3日の、司法職務定制(太政官無号達)で代言人制度が定められます。

 これが弁護士制度の前身です。

 職務範囲は、

第43条 代言人
 第1 各区代言人ヲ置キ自ラ訴フル能ハザル者ノ為ニ之ニ代リ其訴ノ事情ヲ陳述シテ枉冤無カラシム 但シ代言人ヲ用フルト用ヒサルトハ其本人ノ情願ニ任ス

というものです。

 代言人は、民事訴訟において、法廷で「事情を陳述」するのが業務でした。

 この司法職務定制では、同時に、「訴状を調成」する「代書人」という職制も定められ、これは司法書士制度に発展していきます。

 フランスの司法制度を真似て、代言人と代書人が創設されましたが、法廷での陳述と、裁判の書面作成をするのは別の仕事という点で、今の制度とはかなり違いますね。

 現在からみると、少々分かりにくい話に思えますが、イングランドなどは、いまでもソリシター(事務弁護士)とバリスター(法廷弁護士)がおり、ソリシターが依頼者対応や裁判での立証準備をし、バリスターが法廷での弁論を主に担当する制度が残っています。法廷での弁論と法律事務処理は、異なる技術が必要な仕事として考えれば、このような分業は必ずしもおかしなことではないのかもしれません。

②弁護士誕生 明治26年

 明治26年3月4日、法律第7号として弁護士法が制定され、同年5月1日施行されました。

 同時に代言人規則は廃止されています。

 弁護士の職務は、

 第1条 弁護士ハ当事者ノ委任ヲ受ケ又ハ裁判所ノ命令ニ従ヒ通常裁判所ニ於テ法律ニ定メタル職務ヲ行フモノトス

と規定されました。

 この、「法律ニ定メタル職務」というのは、民事訴訟法や刑事訴訟法で定める職務を行うことです。

 当初、弁護士の職務は民事・刑事の訴訟行為をすることに限定されており、裁判外での法律事務については、弁護士の独占業務ではありませんでした。

 この時、弁護士になれるのは、試験に及第した者・判事検事たる資格を有する者・法学博士・帝国大学法律科卒業生などと規定されています。

 今でいえば、旧帝の法学部を卒業すれば、弁護士になれたのですね。

 代言人をしていた人たちはどうなったかというと、

 第35条 現在ノ代言人ハ本法施行ノ日ヨリ六十日日以内ニ弁護士名簿ニ登録ヲ請フトキハ試験ヲ要セスシテ弁護士タルコトヲ得

として、当時の代言人は、無試験で弁護士に移行し、既存業者は救済されました。

③弁護士法改正 昭和8年

 昭和8年4月28日、法律第53号として、弁護士法が改正されました。
 
 弁護士の職務は、

 第1条 弁護士ハ当事者其ノ他ノ関係人ノ委嘱又ハ官庁ノ選任ニ因リ訴訟ニ関スル行為其ノ他一般ノ法律事務ヲ行フコトヲ職務トス

と規定になりました。

 「一般の法律事務」が、業務範囲に入り、いまの弁護士に近くなりました。

 同時に、「法律事務取扱ノ取締二関スル法律」が制定されます。これは、弁護士でないものが一定の法律事務をすることを取り締まる法律です。
 
 第一条 弁護士ニ非ザル者ハ報酬ヲ得ル目的ヲ以テ他人間ノ訴訟事件ニ関シ又ハ他人間ノ訴訟事件ニ関し又ハ他人間ノ非訟事件ノ紛議ニ関シ鑑定、代理、仲裁若ハ和解ヲ為シ又ハ此等ノ周旋ヲ為スヲ業トスルコトヲ得ズ正シ正当ノ業務ニ附随シテ為ス場合ハ此ノ限ニ在ラズ

 弁護士でないものは、報酬を得る目的で、他人の訴訟にかかわるなということですね。

 これが、現在の弁護士法第72条の前身になります。

 現行の弁護士法は、

 第72条 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務をを取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

としています。
 この「その他の法律事務」の解釈で、色々な業界と、弁護士の間で、解釈をめぐる争いが生じます。

④弁護士法改正 昭和24年

 昭和8年に弁護士業務として定めた「一般の法律事務」という定義があいまいであるとして、説明的に細分化した条文にする改正が行われます。

 弁護士の職務は、

 第三条 弁護士は、当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱によって、訴訟事件、非訟事件及び訴願、審査のの請求異議の申立等行政庁に対する不服申立事件に関する行為その他一般の法律事務を行うことを職務とする。
2 弁護士は、当然、弁理士及び税務代理士の事務を行うことができる。

と規定されました。

 これは、現行法の、

 第三条 弁護士は、当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱によつて、訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件に関する行為その他一般の法律事務を行うことを職務とする。
2 弁護士は、当然、弁理士及び税理士の事務を行うことができる。

 とほぼ同じですね。

 こうして、弁護士は、訴訟以外に、その他一般の法律事務を扱う仕事になります。