中野剛志に学ぶ MMT(現代貨幣理論)⑤

中野剛志に学ぶ MMT(現代貨幣理論)⑤



アルゼンチンの財政破綻

 中野剛志氏は、プライマリー・バランス黒字化達成のために経済成長が停止し、黒字化と同時に財政破綻したアルゼンチンの例を示します。

「1990年代初頭に経済危機に陥ったA国は、IMF(国際通貨基金)に救済を依頼したところ、IMFから融資の条件として、2003年度を達成年次としたプライマリー・バランスの目標を突き付けられました。これを受け入れたA国は、歳出削減に励み、1998年以降はマイナス成長まで経験しましたが、何とか頑張って、目標年次より2年早い2001年1月、ついにプライマリー・バランスの黒字化を達成しました。そして、その年の暮れ、A国は財政破綻したのです!」

ギリシャの財政破綻

 中野剛志氏は、プライマリー・バランス黒字化達成のために経済成長が停止し、黒字化達成と同時に財政破綻したギリシャの例を示します。

「2008年の世界経済危機の打撃を受けたG国は、IMFに融資を依頼し、A国のように、『プライマリー・バランスの黒字化』目標を押し付けられました。その後、G国は、増税と歳出削減に励み、2013年、目標を達成しました。しかし、その代償として、G国のGDPの4分の1が吹っ飛び、失業率は26%超(若年層の失業率は60%)にもなってしまいました。そして、2015年、G国は、事実上の財政破綻に陥ったのです!」

財政健全化目標のために財政が悪化する無限ループ

 中野剛志氏は、デフレ下の日本では、プライマリー・バランスの黒字化を目指す必要はない、と述べます。なぜならば、プライマリー・バランスの黒字化のための増税や歳出削減は、かえって財政を悪化させるからです。

「日本は財政健全化を目指す必要はありません。それどころか、デフレなので、財政健全化を目指してはいけないのです。」

「財政健全化の努力が経済を停滞させ、財政をかえって悪化させる。そこで、また財政健全化の努力を続ける。平成日本は、まさにこの無限ループの中に巻き込まれていたのです。」

財政健全化のためには財政赤字の拡大が必要

 中野剛志氏は、財政を健全化したければ、財政赤字を拡大しなければならない、と逆説的な説明をします。なぜならば、財政赤字を拡大させ、デフレを克服し、経済が成長すれば、税収は増え、財政は健全化するからです。そして好景気になれば、今度は、過度なインフレにならないように、財政支出を抑制することができます。
 
「そこで、もし発想を転換して、財政赤字を拡大したら、どうなるでしょうか。財政は悪化しますが、それによってデフレは克服され、民間消費や民間投資が増え、経済が成長していきます。すると、税収が増える。景気が良くなり、インフレになるので、財政支出を拡大する必要がなくなる。というか、財政支出を抑制しなければならなうなる。財政支出を拡大し続けると、インフレが行き過ぎてしまうからです。」

「したがって、どうしても財政を健全化したければ、財政赤字を拡大しなければならないのです。」

中野剛志に学ぶ MMT(現代貨幣理論)①
中野剛志に学ぶ MMT(現代貨幣理論)②
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中野剛志に学ぶ MMT(現代貨幣理論)⑤
中野剛志に学ぶ 商品貨幣論と信用貨幣論
中野剛志に学ぶ 日本経済が成長しない理由
中野剛志に学ぶ デフレは労働者を苦しめる
中野剛志に学ぶ デフレを脱却する方法
中野剛志に学ぶ 新自由主義の問題点
中野剛志に学ぶお金の仕組み(通貨と経済成長)

中野剛志に学ぶ 日本経済が成長しない理由

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平成の改革は新自由主義政策

 中野剛志氏は、橋本龍太郎政権以来の自民党の構造改革路線は、イギリスのマーガレット・サッチャー首相、アメリカのロナルド・レーガン大統領による新自由主義政策を手本にしたものだと解説します。

「平成の『改革』と手本となったのは、1980年代の英サッチャー政権や米レーガン政権が行った『新自由主義』の政策でした。」

「平成8(1996)年に成立した橋本龍太郎政権は行財政改革、経済構造改革、金融システム改革などの『構造改革』を掲げ、実行しました。」「その結果、日本は平成10年からデフレに突入しました。」

新自由主義政策が日本をデフレにした

 中野剛志氏は、1980年代のサッチャーやレーガンの政権時、英米両国はインフレに悩んでいたと指摘します。

 そして、新自由主義の政策は、インフレを抑制し、デフレを引き起こすための政策であり、平成10年以降の日本がデフレになったのは、新自由主義の思想に基づく構造改革によるものと解説します。

「公共投資をはじめとする財政支出の削減、消費増税、『小さな政府』を目指した行政改革、規制緩和、自由化、民営化、そしてグローバル化…。」

「これらは、いずれもインフレ対策です。『構造改革』とはインフレを退治するために、『人為的にデフレを引き起こす政策』なのです。」

「サッチャー政権やレーガン政権が試みたのは、『インフレを退治するために、人為的にデフレを引き起こす政策』でした。」

「平成日本は、デフレ対策が求められるタイミングで、『構造改革』と称するインフレ対策を実行しました。しかも、それを20年以上、続けたわけです。これでは、デフレにならないほうがおかしい。」

小泉政権下の金融緩和でデフレ脱却できなかった訳

 中野剛志氏は、小泉純一郎政権は、金融緩和というデフレ対策となる政策を行ったものの、一方で構造改革というデフレを引き起こす政策を取ったことから、デフレから脱却することができなかったと解説します。

「平成13年に成立した小泉純一郎政権は、インフレ対策の『構造改革』をさらに徹底させました。ただし、唯一、金融政策についてだけは、デフレ対策を行っていました。つまり、金融緩和です。しかし、金融政策だけデフレ対策をしても、他の政策はすべてインフレ対策なのだから、どうしようもありません。」

平成日本が経済成長できなかった理由

 中野剛志氏は、平成の日本が経済成長できなかった理由を、デフレ下においてインフレ抑制のための政策を続けたことからデフレが続いたことによるものと、解説します。

「日本政府が『デフレ下におけるインフレ対策』という愚行を続けてきたからです。それでデフレが続くようになった。だから、経済成長もしなくなった。」

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中野剛志に学ぶ MMT(現代貨幣理論)④

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MMTは健全財政論を否定する

 中野剛志氏は、MMTは、自国通貨を発行できる政府が財政破綻をすることはあり得ないことから、健全財政論を否定し、機能的財政論を支持する立場である、と説明します。

「MMTは、(中略)、『自国通貨を発行できる政府は、財政破綻を懸念する必要がない』と主張し、機能的財政論を支持し、健全財政論を否定します」

MMTは財政を無限に拡大する思想ではない

 中野剛志氏は、MMTに向けられる、パウエルFRB議長、黒田日銀総裁、ローレンス・サマーズなどの批判的主張を紹介します。すなわち、財政赤字を考慮しないMMTは極端な主張であり、ハイパーインフレを招く、支離滅裂(クルーグマン)なブードゥー経済学(サマーズ)である、という批判です。

「例えば、パウエルFRB議長は、『自国通貨建てで借り入れができる国は財政赤字を心配しなくてよいという考え方は間違いだ』と断定し、黒田日銀総裁も『財政赤字や債務残高を考慮しないという考え方は、極端な主張』と述べています。サマーズ氏も、財政赤字は一定限度を超えるとハイパーインフレを招くとして、MMTを批判しています。」

MMTはインフレ率に慎重な注意を払う

 中野剛志氏は、上記のようなMMTへの反応は、批判になっていない、と指摘します。そして、MMTはインフレ率を無視して財政赤字を拡大して良いという考え方ではなく、「財政赤字の大小はインフレ率で判断すべきだ」という考え方であると解説します。

「しかし、こうした批判は、批判の体すらなしていません。なぜなら、MMTとは『財政赤字の大小はインフレ率で判断すべきだ』という考え方です。ハイパーインフレになっても財政赤字を心配しなくてもよいという主張ではありません。それどころか、MMTの論者たちは、インフレを抑制する政策についても、いろいろと提言しています。」

批判者はMMTを理解していない

 中野剛志氏は、MMTをインフレリスクを考慮しない極論として批判をする主流派経済学者たちは、批判の対象を理解していないと解説します。

「それにもかかわらず、主流派経済学者、政策当局者、あるいは経済アナリストたちの多くは『MMTは、財政赤字によるインフレのリスクを考慮しない極論だ』という批判を展開しています。要するに、彼らは、批判の対象としているMMTを理解していないのです。」

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中野剛志に学ぶ デフレは労働者を苦しめる

中野剛志に学ぶ デフレは労働者を苦しめる



反インフレ政策は富裕層の希望

 中野剛志は、反インフレ政策の背景には、金融資産を有する階級の利益があるという、ジョン・スミシンの指摘を紹介します。

 インフレは貨幣価値が下落する現象であり、債権の価値が下がり、債務の負担は実質的に軽くなることから、金融資産を有する階級にとっては損失となり都合が良くない。デフレは、金融資産を有する階級を利するが、労働者階級は損をする。このため、金融資産を有する階級が支配する社会は、インフレを抑制する経済政策を目指すことになる、と解説します。

「ジョン・スミシンは、1980年代以降、反インフレ政策が顕著になった背景には、金融階級の利害があったと論じている。インフレは貨幣価値が下落する現象であるから、債権の価値が実質的に下がり、債務の負担は実質的に軽減される。したがって、インフレによって金融階級は損をするが、労働者階級は得をすることになる。反対に、デフレは債務者たる労働者階級を苦しめるが、債権者たる金融階級には有利に働く。したがって、もし政治が金融階級に支配されるようになるならば、経済政策は低インフレを最優先課題とすることになろう。」

1980年代以降の金融化と低インフレ政策

 中野剛志は、1980年代以降、先進各国の金融政策は低インフレ最優先の政策となり、歳出削減、財政健全化が目指されるようになった、と解説します。

「金融化が進み始めたのは1980年代以降のことであるが、それと並行して、先進各国の金融政策は低インフレを最優先とするものになり、財政政策についても、歳出削減など財政健全化が目指されるようになったのである。」

グローバリゼーションはデフレ圧力を発生させる

 中野剛志は、グローバリゼーションが、デフレ圧力を発生させることを指摘します。

「物価水準を抑制するための政策は、金融引き締めと緊縮財政だけではない。貿易の自由化や労働移動の自由化、特に移民の流入もまた、賃金や物価の上昇を抑える効果をもつ。グローバリゼーションは、全般的に強力なデフレ圧力を発生させるのである」

財政健全化は富裕層に恩恵を与える

 中野剛志は、財政健全化やグローバリゼーションはデフレ圧力を産み、一般国民の賃金水準の抑制や失業を発生させる。そして、一般国民の犠牲のもとに富裕層や金融機関に恩恵を与える政策であると解説します。

「財政健全化やグローバリゼーションはデフレ圧力を発生させて、一般国民に、賃金水準の抑制や失業と言った犠牲を強いる。しかし、富裕層や金融機関が保有する大量の債権の価値はむしろ上昇する。財政健全化やグローバリゼーションは、大多数の国民の利益を犠牲にして、一部の金融階級に恩恵を与えるのである。」

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中野剛志に学ぶ MMT(現代貨幣理論)③

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自国建て通貨の返済不能はあり得ない

 中野剛志氏は、自国建て通貨の国債が返済不能になった例は、政治的理由で返済を拒否した例外を除いては、存在しない、と解説します。

「政府は企業とは異なり、通貨発行の権限を有する。したがって、自国通貨建てで国債の返済ができなくなることは、(実際、過去に政治的意志によって返済を拒否しない限り)理論的にあり得ないし、そのような実例もない。返済不能となった国債は、いずれも自国通貨建て以外のものであった。」

日本の財政破綻はあり得ない

 中野剛志氏は、日本政府の国債はほぼ円建てなので、日本政府が財政破綻する可能性はほぼ皆無と解説します。

「そして、日本政府の国債は、ほぼすべて円建てである。したがって、日本政府が財政破綻する可能性は、ほぼ皆無と言ってよい。」

注意すべきは過度なインフレ

 中野剛志氏は、財政赤字の制約として考慮すべきは、財政破綻ではなく、物価水準であり、過度のインフレが起きない限りにおいて財政に制約はなく、財政赤字が拡大しても問題ない、と解説します。

「財政支出は貨幣供給量を増加させるが、貨幣供給量が過剰となれば、過度のインフレが引き起こされる。したがって、財政赤字の制約として考慮すべきは、物価水準であるということになる。これを言い換えれば、過度のインフレが起きない限り、国会財政に制約はないのであり、財政赤字は拡大してよいということである。」

デフレ下では財政赤字を拡大させるべき

 中野剛志氏は、日本がデフレを脱却するためには、過度のインフレが起きない限り、財政赤字を拡大し続けなければならない、と解説します。

「日本は長くデフレーションに陥っており、デフレからの脱却が課題となっている。ということは、財政赤字は拡大できるというだけではなく、むしろ拡大しなければならないという結論になろう。」

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中野剛志に学ぶ MMT(現代貨幣理論)②

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通貨の供給には財政支出が不可欠

 中野剛志氏は、L・ランダル・レイのMMT(現代貨幣理論)は、国家財政に関する考え方について、コペルニクス的転回を迫るものであると述べます。そして、国家が通貨を流通させるには、政府がまず財政支出を行い民間部門に通貨を供給する必要がある、と指摘します。

「通貨は、国家が納税手段として受け取るものである。それゆえに、財・サービスの取引や貯蓄など、納税以外の手段としても流通する。このシステムにおいては、政府はまず財政支出を行って、民間部門に通貨を供給することになる。政府は、財政支出より前に税を徴収したり、国債を発行したりすることはできないのである。」

国の財政支出は税収以上である必要がある

 中野剛志氏は、通貨が取引手段として流通するためには、国家は税収以上の支出を行う必要がある、と解説します。

「民間において通貨が納税以外の手段として使用されるためには、国家は税収以上の支出を行う必要がある。もし国家が通貨をすべて租税によって回収してしまったら、取引や貯蓄の手段として流通する分の通貨がなくなってしまうであろう。」

国家財政は赤字運営が正常

 中野剛志氏は、L・ランダル・レイの現代貨幣理論から引用し、国家財政の正常なケースは、政府の財政が黒字となることや、プライマリーバランスが均衡することではなく、政府が赤字財政を運営していることである、と解説します。赤字財政こそ、正常なな状態ということになります。

「したがって、『正常な』ケースは、政府が『赤字財政』を運営していること、すなわち、税によって徴収する以上の通貨を供給していることである」

「赤字財政は、不健全ではなく、むしろ正常な状態である。」

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中野剛志に学ぶ MMT(現代貨幣理論)①

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MMT(現代貨幣理論)とは

 中野剛志氏は、金本位制による貴金属との兌換性の無い現代の通貨の価値が何によって担保されているかにつき、最も有力な説は、MMT(現代貨幣理論)であると述べます。

「現金通貨の価値は、どのように担保されているのであろうか。」

「『不換紙幣』は、なぜその価値を信頼され、取引手段として受け入れられているのか、である。これについては諸説あり、依然として論争になっているが、最も有力と思われる説は、L・ランダル・レイが提唱する『現代貨幣理論(Modern Monetary Theory)』であろうと思われる。」

貨幣の価値を担保するものは何か

 中野剛志氏は、現代貨幣理論の要点として、現代の貨幣は、国家が貨幣を租税の支払い手段とし、これにより納税義務を履行すれば、納税の義務を解消できる効力を有することにより、その価値が担保されていると解説します。

「レイの主張の要点は、『国家が貨幣を租税の支払い手段として定めていることで、貨幣の価値が担保されている』というものである。」

「国家は、国民に対して納税義務を課し『通貨』を納税手段として法定する。すると、国民は、国家に通貨を支払うことで、納税義務を履行できるようになる。こうして、通貨は、国家から課せられた納税義務を解消することができるという価値をもつのである。」

貨幣の価値の基礎は徴収権力にある

 中野剛志氏は、納税義務の解消手段として貨幣の価値が確保されることにより、納税以外の取引行為等においても使用されることになる点を解説します。

「そして、その価値ゆえに国民に受け入れられ、財・サービスの取引や貯蓄など、納税以外の目的においても広く使用されることになる。つまり、貨幣の価値を基礎づけるのは、租税を徴収する国家権力であるというのである。」

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中野剛志に学ぶ デフレを脱却する方法

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デフレ不況に金融緩和は必要不可欠

 中野剛志氏は、デフレ不況下においては、中央銀行が金融緩和に行うことにより、貨幣の流通を円滑にすることが必要不可欠なことを解説します。

「今日、デフレ不況対策として財政出動と並んで重要な政策は、中央銀行による金融緩和であると考えられている。特に、金融危機が勃発し、信用収縮が生じ始めた時には、中央銀行は、金融緩和によって貨幣の流通を円滑化する『最後の貸し手』となり、金融危機が恐慌へと発展するのを防ぐことが必要不可欠である。」

金融緩和だけでは不十分

 中野剛志氏は、デフレ不況対策として、金融緩和は重要であるものの、スティグリッツの指摘を例に、それだけでは十分ではない、と指摘します。

「金融緩和は、たしかに金融危機を防ぐ上で重要ではあるが、それだけではデフレ脱却には十分ではないという議論があるからだ。例えば、スティグリッッも、そう考える経済学者の一人である。彼は、2000年代のアメリカの不況下において、FRB(連邦準備制度理事会)による金融緩和は、景気回復には成功しなかったと指摘している。」

流動性の罠

 中野剛志氏は、デフレ不況対策としては、金融緩和だけでは不十分な理由として、「流動性の罠」の問題を指摘します。

「金融緩和だけでは十分ではない理由は、資金需要が不足しているデフレ不況下では、貨幣の供給量を増やしたとしても、企業や消費者は、貨幣を投資や消費に回さずに貯蓄してしまうという現象が起きる場合があるからである。この現象を、ケインズは『流動性の罠』と呼んでいる。『流動性の罠』に陥った場合には、金融緩和をしても投資や消費の需要は増えないのである。」

財政出動が必要不可欠

 中野剛志氏は、デフレ不況から脱却するためには、金融緩和のみでは不十分であり、財政出動が必要不可欠であると、解説します。

「金融緩和は、あくまでも貨幣供給量を増やす政策であって、貨幣の流通経路を操作する政策ではない。」

「貯水池の水の量を増やすだけでは、水は園内をめぐって流れないのであり、そうしたいのであれば、水を循環させるための水路を作らなければならない。つまり、財政政策が必要になるということだ。」

まとめ

 中野剛志氏の考え方は、

①デフレ脱却には、金融緩和は必要不可欠
②デフレ脱却には、金融緩和だけでは足りず、財政出動も必要不可欠
③デフレ脱却のためには、金融政策と財政政策を両方行う必要がある。

ということです。

中野剛志に学ぶ MMT(現代貨幣理論)①
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中野剛志に学ぶ 新自由主義の問題点

中野剛志に学ぶ 新自由主義の問題点



新自由主義とは

 中野剛志氏は、新自由主義の意義を、以下のとおり解説します。

「新自由主義とは、簡単に言えば、『自由市場こそが、資源を最も効率的に配分し、経済厚生を増大する最良の手段である』という信念の下、政府による市場への介入をできるだけ排除し、経済活動の自由をできる限り許容すべきであるとするイデオロギーである。その理想を実現するため、新自由主義者は、『小さな政府』『均衡財政(健全財政)』『規制緩和』『自由化』『民営化』さらには『グローバル化』といった政策を主張する。」

新自由主義の理論的背景

 中野剛志氏は、新自由主義の背景には、ハイエクやフリードマンなどの、新古典派経済学の理論があると解説します。

「その背景には、フリードリヒ・フォン・ハイエクに代表されるリバタリアニズム(個人の消極的自由、すなわち「~からの自由」を最大限に尊重する自由主義)や、ミルトン・フリードマンに率いられた主流派(新古典派)経済学の理論があると考えられている。」

保守と新自由主義の共闘・一体化

 中野剛志氏は、冷戦期に、社会主義に対抗し資本主義を擁護する必要性から、保守と新自由主義者が共闘するようになり、最終的には保守と新自由主義が一体化するに至った経緯について、解説します。

「戦後は、世界恐慌の経験に立ち、政府が需要を管理するケインズ主義の考え方が主流となった。また、労働市場や金融市場に対する規制や、福祉国家といった制度により、経済成長と経済的平等の両立が図られていた。これに対し、ハイエクやフリードマンら新自由主義者たちは、ケインズ主義や福祉国家といった『大きな政府』は、経済を非効率にし、個人の自由を侵害するものであると批判した」

「1970年代にスタグフレーション(インフレーションと不況の同時発生)が起きると、ケインズ主義や福祉国家といった考え方に対する信頼が揺らぎ、新自由主義の影響力が急速に強まった。1970年代末から80年代にかけて、イギリスのマーガレット・サッチャー政権、アメリカのロナルド・レーガン政権、日本の中曾根康弘政権など、新自由主義にのっとった経済政策を実行する政権が相次いで成立したのである。ここで、保守と新自由主義が結びつくことになる。」

「冷戦期においては、社会主義に対抗して、資本主義体制を維持するのが『保守』であるとされていた。その資本主義を支える正統教義が新自由主義になるならば、保守が新自由主義と一体化することになるのは、当然の帰結であったと言えるだろう。」

新自由主義の拡大

 
 中野剛志氏は、冷戦終結後も、保守と新自由主義の共闘関係は解消されないまま、新自由主義が勢力を拡大していったと解説します。

「ところが、奇妙なことに、1990年代以降、冷戦が終結したにもかかわらず、保守は、新自由主義との結託を解消しなかった。それどころか、日本の保守勢力は、いっそう色濃く新自由主義に染まっていったのである。例えば、橋本龍太郎政権や小泉純一郎政権は、新自由主義の教義にほぼ忠実にのっとって構造改革を断行し、グローバル化を推進した。とりわけ小泉政権は、その過激とも言える新自由主義的な構造改革によって、国民の高い支持を獲得し、自由民主党の勢力拡大に成功したのである。」

新自由主義による保守の死

 中野剛志氏は、本来は、保守と新自由主義は相容れないものであり、新自由主義との結びつきにより、保守は存在意義を失ってしまったと解説します。

「新自由主義が信奉する自由放任の市場は、保守が元来重視してきたものを例外なく破壊していくものである。市場において、企業は合理化への終わりなき競争へと突き進むが、それは雇用を不安定化し、従業員の間の一体感を喪失させる。個人の選択の自由の拡大は、家族や共同体における安定的な人間関係を自己実現の場とする伝統的な価値観を棄損する。」

「こうして新自由主義は、保守の中に侵入し、保守の存在意義を消滅させてしまった。」

新自由主義による資本主義の破壊

 中野剛志氏は、新自由主義は、資本主義をも不安定化させる。日本の低成長も、新自由主義のもたらした無残な結果のひとつ、と解説しています。

「問題は、それだけにはとどまらなかった。新自由主義は、資本主義をも不安定化し、そして破壊してしまったのである。ケインズ主義は、需要を管理し、失業の撲滅を目指すものであったが、新自由主義は、市場メカニズムが機能すれば失業の問題は解決するとして、ケインズ主義の無効を宣言した。そして、経済成長の水準は供給側によって決まるから、規制緩和や減税によって、企業活動を活発化させるべきだと主張した。また、金融市場も自由化して、効率化させるべきだとして、金融規制の緩和を唱えた。さらに、新自由主義者は、福祉国家による所得再分配や社会保障は、個人の自由を制約し、労働意欲を阻害するものだと批判した。むしろ、能力のある人々の努力がより大きく報われるようにすれば、経済全体が成長し、彼らの創出した富の恩恵が最終的には貧困層にも及ぶはずだと主張したのである。だが、1980年代以降、こうした新自由主義のイデオロギーにのっとった政策は、無残な結果をもたらすことになった。」

「アメリカの新自由主義の後を追って、構造改革に逼進した日本も、同様の結果を招くこととなった。1997~98年の金融危機以降、日本の実質賃金は低下に転じ、低賃金の非正規労働者が増大した。2002年から06年までは、好景気であったとされるがその間も実質賃金の低下の趨勢は変わらず、国内消費は低迷し続けた。」

「結局、新自由主義がもたらしたものは、低成長と異常な格差の拡大、そして資本主義の不安定化であった。」

まとめ

 中野剛志氏は、

①新自由主義の背景には、ハイエクやフリードマンなどの新古典派経済学の思想がある
②保守と新自由主義は、本来的には相容れない立場である
③冷戦期、社会主義に対抗し、資本主義体制を擁護するため、保守と新自由主義者が共闘するようになった
④共闘の結果、保守勢力に新自由主義者が深く侵入し、保守は新自由主義が一体化した
⑤新自由主義は、資本主義をも不安定化する無残な結果を生み、日本の低成長の原因となった

と主張しています。

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中野剛志に学ぶ 新自由主義の問題点
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三橋貴明に学ぶ「新自由主義」の問題点