建設業の基礎知識① JV

行政書士の業務周辺知識 建設業の基礎知識①



行政書士と建設業の知識

 
 行政書士として建設業許可等を手掛ける場合に、お役所手続しか知らないと、相談者と基本的な会話が成立しないこともあります。依頼者と円滑なコミュニケーションができなければ、信頼感が損なわれ、依頼に結び付きにくくなります。一方、周辺的な知識があれば、コミュニケーションもスムーズですし、グッと信頼感が増します。

JV(ジョイント・ベンチャー)とは

 JV(共同企業体)は、複数の建設業者が共同して、1つの建設工事を受注・施行することを目的とする事業組織体です。工事を1社単独で受注して施行するのではく、複数の建設業者がひとつの共同体となって受注することで、各社の技術力を結集され、施工能力が増大し、単体では施工できない大きな工事を受注できるようになります。

 法律的には、法人格のない社団であり、民法上の組合の一種と考えられます。JVとして行った法律行為の権利義務は、JVの構成員である各企業に帰属します。

共同企業体協定書

 
 共同して事業を行うことの合意は、「共同企業体協定書」に基づき、共同体の各構成員の契約によります。

スポンサー企業とサブ企業

 スポンサー企業は、JV内の中心的役割を担う幹事企業です。一般的には出資比率の最も高い、JV内の代表的企業です。通常は、スポンサー企業が、発注者との交渉や、資金管理、JV各構成員の取り纏め等を行い、工事の円滑施行を目指します。その他の企業をサブ企業などと呼びます。

JVの会計処理

 JVは独立の事業体であり、一つの会計単位となります。スポンサー企業が帳簿の記帳を行い、他の構成員はスポンサー企業からの情報や通知に基づいて会計処理を行います。

JVには特定JVと経常JVがある

 特定JVは、特定の工事の施行を目的として工事ごとに結成されます。工事が完成したり、工事を受注できなかった場合は、解散します。

 経常JVは、中小建設業者等が、継続的な協業関係を確保することにより経営力・施行力を強化し、構成員単独では受注できないような工事を受注するために結成されます。年度当初の競争入札参加資格申請時にJVを結成し、工事の受注においては、単体企業と同様に、入札に参加することになります。

JVは甲型と乙型に分類される

 甲型共同企業体は共同施工方式、乙型共同企業体は分担施工方式です。

 甲型においては、構成員は、出資比率に応じて一体となり施行します。乙型においては、構成員は、各自の分担工事を施工します。甲型においては、経費は、出資比率に応じて負担します。乙型においては、経費は、分担工事額の割合に応じて負担します。甲型においては、利益(欠損)分配は、出資比率に応じて行われます。乙型においては、利益(欠損)分配は、各自の分担工事ごとに費用計算をします。



建設業許可・財務諸表作成のポイント

開業本・実務書に学ぶ 建設業許可・財務諸表作成のポイント



財務諸表の作成

 建設業では、建設業の許可申請を取得する際及び毎事業年度終了後の決算変更届に、所定の書式に従って財務諸表を作成し提出しなければなりません。この際、税理士作成の通常の決算書をそのまま転記するだけでは済まない場合が多々あります。開業本・実務書から学んでみたいと思います。

 なお、前提として、建設業独特の勘定科目について理解する必要があります。

「行政書士の実務 建設業許可申請業務 第3版」(法学書院、木本博之)より

 財務諸表の作成は手間のかかる大変な仕事ですが、「法人」では決算報告書があるのでそれを参考にすればよく、むずかしく考える必要はないでしょう。ただ、決算報告書記載の科目と、こちらの財務諸表記載の科目とが一致しないことがありますのでその点を考慮しなくてはなりません。たとえば、建設業許可申請書の貸借対照表中の流動資産の部には「仕掛品」という科目は無い。そこで、これがあるときは未成工事支出金や材料貯蔵品の中にいれたりします。

 また「個人」であっても青色申告をしている場合は、青色申告決算書の写しがあればそれを参考にすればよいでしょう。

「建設業許可・経審・入札参加資格申請ハンドブック」(日本法令、塩田英治)より

・消費税込の財務諸表と消費税抜の財務諸表

 財務諸表を作成していくにあたって、消費税に係る会計処理の方式は「税抜方式」と「税込方式」の2種類があります。建設業許可では、財務諸表について「税抜方式」で作成するか「税込方式」で作成するかの指定はなく(中略)、どちらの基準でも作成することができます。(中略)ただし、(中略)「経営事項審査申請」を受審する場合は、「税抜方式」で財務諸表を作成する必要があります。

 公共工事の受注を目指していく事業者においては、経審を受け続ける間は、法人税の確定申告をする前段階の会計処理の場面から消費税に関しては「税抜処理」しておくと便利です。

・建設業法に基づく財務諸表中の科目と税法上の科目との相違

 法人税確定申告書の「流動資産」に記載される勘定科目に「売掛金」という科目がありますが、「売掛金」には、建設業の取引で発生する「完成工事未収入金」と、建設業以外の事業で発生する「売掛金」が混在している場合があります。このように、建設業の事業で発生する内容とその他の事業で発生する内容が混在している場合には、建設業法上の勘定科目をしっかりと確認した上で、別々に認識したうえで財務諸表を作成しなければなりません。

「行政書士のための建設業実務家養成講座」(税務経理協会、著・菊池浩一、監修・竹内豊)より

・建設業者の経営をより鮮明にするために「税務申告等で提出した決算報告書」を「建設業法で定める様式」に変換する。通常、「税務署に提出する決算報告書」にある損益計算書の「販売及び一般管理費」には建設業以外のもの(事務系のもの)も含まれている。これでは、建設業者としての売上総利益(売上高-売上原価)を正確に把握できない。そこで、「販売及び一般管理費」の中から、建設業に関する者(例えば、建設現場で働く従業員の給与等)を売上原価に移動して加算するのである。

参考:税理士のツイート

行政書士の知識(建設業会計の基礎)



行政書士の知識(建設業会計の基礎)

行政書士の知識(建設業会計の基礎)



行政書士として知っておくべき建設業の会計

 建設業許認可等の業務では、税理士等が作成した決算書類を、建設業会計に適合するように変換する必要がある場合が存在します。このため、建設業会計についての基礎的な知識が必要になります。

建設業法施行規則に基づく財務諸表の作成

 建設業者は、建設業法施行規則の別記様式に従って財務諸表を作成し、国土交通省または都道府県知事に提出します。この様式ででは、一般的な商業簿記や工業簿記には無い、建設業特有の勘定科目が定められています。建設業者は、会社法上の計算書類においてもこれに従って作成します。

建設業特有の勘定科目:貸借対照表 資産の部

・完成工事未収入金(完成工事高に計上した工事の未収入額。一般的な経理では「売掛金」)

・未成工事支出金(完成工事原価に計上していない工事費。材料費・労務費・外注費・経費等。一般的な経理では「仕掛品・棚卸資産」)
 

建設業特有の勘定科目:貸借対照表 負債の部

・工事未払金(工事に関する費用の未払分。一般的な経理では「買掛金・未払金」)

・未成工事受入金(請負代金の受入高のうち完成工事高に計上していない工事代金。一般的な経理では「前払金」。なお、着工すらしていない場合は未成工事受入金ではなく「前受金」として処理される)

・工事損失引当金(赤字工事の場合の今後の損失見込額)

・完成工事保証引当金(完成した工事について負っている瑕疵担保責任により将来発生する損失に備えて計上する)

建設業特有の勘定科目:損益計算書

・完成工事高(工事進行基準及び工事完成基準に照らして工事が完成した場合の工事の請負高。一般的な経理では「売上高」)

・完成工事原価(工事原価のうち損益計算書の完成工事高に計上された工事に対応する工事の原価。材料費、労務費、外注費、経費から構成される。一般的な経理では「売上原価」)
 

まとめ

 
 行政書士として建設業の許認可業務をするには、一般の会計用語と、建設業会計用語の違いを把握する必要があります。

・売掛金 → 完成工事未収入金
・仕掛品・棚卸資産 → 未成工事支出金
・買掛金・未払金 → 工事未払金
・前払金 → 未成工事受入金
・売上高 → 完成工事高
・売上原価 → 完成工事原価

 

建設業許可要件
建設業許可 経営業務の管理責任者 
建設業許可 専任の技術者とは 
行政書士 建設業許可の基礎 
行政書士の知識(建設業会計の基礎) 



司法書士と行政書士の違い

司法書士と行政書士の違い



司法書士と行政書士の違い

 脱サラして会社員以外の仕事を目指す場合の有力候補の司法書士・行政書士。司法書士と行政書士の名称が似ているのは、先に制度化されていた「司法書士」の名称に、一般代書人と呼ばれていた行政書士が寄せていったことによります。

行政書士制度の歴史

司法書士制度の歴史

 名称はよく似ていますが、仕事の内容はまったく違います。歴史的には、司法書士業務で無いものが行政書士業務、行政書士業務で無いものが司法書士業務という構造で作られた、互いに排他的な業務範囲を持つ資格だからです。

司法書士の業務

 
 司法書士のベースとなる業務は、裁判所・検察庁・法務局に提出する書類の作成として規定されています。法務省系の機関に対する書類提出と考えて問題ありません。監督官庁も法務省です。この中で、裁判所・検察庁については業務範囲に重なる部分がある「弁護士」の存在感が大きくなっており、司法書士の存在感は法務局の業務で強く発揮される状態になっています。法務局は、「登記所」や「供託所」を設置している機関です。このため、司法書士は、主に不動産登記や商業登記を取り扱い、時には裁判所の仕事もするという仕事になっています。

行政書士の業務

 行政書士のベースとなる業務は、行政機関に提出する書類の作成です。ただし、司法書士の業務である、裁判所・検察庁・法務局に提出する書類の作成はできません。また、税理士法や弁理士法や社会保険労務士法などにも規制されますので、税務署・特許庁・年金事務所・労働基準監督署・ハローワーク等の書類作成についても制限があります。要するに、行政書士業務は、司法書士、税理士、弁理士、社会保険労務士などの専門の士業者が存在する機関を除いた官公署の書類作成をするのが主業務になります。

 現実的に行政書士の取り扱いが多い官公署は、都道府県庁・市町村役場などの地方自治体、警察署、運輸局等になります。地方自治体や警察署は様々な許認可や届出の申請先ですし、運輸局は自動車の登録などを扱いますので、これが行政書士業務になります。

司法書士と行政書士の業務は重ならない

 司法書士の業務は、裁判所・検察庁・法務局などに限定されており、行政書士は、これらの機関の書面作成を行うことができません。他方、行政書士の業務は、地方自治体・警察署・運輸局等であり、司法書士はこれらの機関の書面作成を行うことができません。つまり、互いに排他的な関係にありますので、まったく違う仕事ということになります。

司法書士と行政書士が似て見える理由

 主業務が互いに排他的な関係にある司法書士と行政書士の業務ですが、具体的な業務となると似ているような気もします。
 この原因は、行政書士には「権利義務・事実証明書類」の作成業務があるところにあります。権利義務書面というのは典型的なものが「契約書」、事実証明書類というのは例えば「議事録」などの文書を指します。行政書士がこの業務範囲において、様々な業務を行うところが、司法書士との混同が生じやる原因です。

 例えば、行政書士事務所の多くが、会社設立の看板を上げています。株式会社や合同会社は法務局に登記することによって成立します。行政書士は登記業務を行うことができません。それでは、行政書士事務所が会社設立を引き受けたらどうするかというと、「権利義務・事実証明」書類の作成として、会社設立に必要な定款・株主総会議事録等の書類を作成します。そして、商業登記の申請書は別途司法書士に依頼するか、本人に直接申請させて行います。会社設立は司法書士業務ですが、その添付書類の一部を作成できるので、行政書士が仕事としているというわけです。

 このようにして、行政書士が、司法書士の業務の下流工程部分だけを行っていることががあるため、似ているように感じられることになります。

行政書士が他士業の下流工程を引き受けていることは多い

 上で述べたように、会社設立は司法書士の仕事ですから、行政書士は会社設立の業務を看板に記載せず、最初から司法書士に誘導すべきでは?というのは当然の発想です。会社設立を行政書士に頼むと二重に業者が絡むことになりますから、ダイレクトに司法書士に依頼したほうが話も早いし費用も安くなることが多いでしょう。もっとも、必ずしもそう単純な話ばかりではなく、許認可が絡むような業種の場合、会社設立から許認可まで一式すべてを業者に任せたいと依頼者が考えている場合があります。この場合、許認可を取るための行政手続きは、行政書士に依頼することになりますので、どちらにしても司法書士と行政書士が関わることになります。例えば、不動産会社の設立と宅建業の許可取得までを業者に任せしたいという場合であれば、会社設立を行政書士に依頼することにも意義があると考えられなくはありませんので、一概に否定できないかもしれません。

 この行政書士が下流工程だけ引き受けているというのは、会計業務でも同じようなことがあります。行政書士事務所で、会計業務を看板に挙げているところがあります。勿論、税務申告書などの作成は税理士の独占業務なので行政書士にはできません。しかし、日々の会計記帳は誰がやっても良い業務です。そこで、行政書士事務所が日々の記帳業務棟を行い、税務申告の準備に近いところまで行います。そして、税務申告については、この行政書士が提携している税理士に、税務申告を依頼します。しかも、「会計事務所」という言葉は公認会計士や税理士の独占名称ではないため、行政書士でも「会計事務所」を名乗る場合があり、とても不透明で分かりにくい形になっています。

下流工程業務にはうまみは無い

 脱サラして行政書士事務所を開業する場合は、他士業の下流工程に過ぎない業務に注力しないよう注意する必要があります。士業者として独立開業し、特定の業務のノウハウを身につけるには、相当な時間を投下して知識を身につけ、費用をかけて書籍やソフトウェアなどを準備する必要があります。そのようにしてノウハウをマスターしても、行政書士としてこれらの業務を引き受ける場合は、厳しいコスト争いをしている上流工程の専門業者よりも安い費用で引き受ける必要がありますから、採算性を確保するのが難しいからです。経営の安定を図るためには、行政書士としては堂々たる独占業務の許認可に軸足を置き、下流工程業務は依頼があれば物によってはお受けする程度に考えておいた方が良いでしょう。下流工程業務をかき集めるくらいなら、例えば、行政書士事務所と宅建業を併営するなど、行政書士以外の別の仕事をしたほうが生産的です。



行政書士と在宅ライター業

行政書士と在宅ライター業

在宅ライターの需要が増えている



 ここ数年、在宅ライターの需要が増加しています。企業や個人がウェブコンテンツを拡充する必要性が増えていますし、グーグルアドセンスやアフィリエイトで収益を目指すサイトが増大し続けていることなどから、記事テキストの必要性が増えていることによります。これらのテキスト作成は、出版系のライターのように敷居が高くないのが特徴で、とにかく検索に引っかかるキーワードで役立つ情報をたくさん書いてほしいという目的の依頼です。紹介記事・説明記事・宣伝記事・まとめ記事・ハウツー記事・コラムなど、さまざまなジャンルの記事に需要があり活躍の場が広がっています。
 

仕事が見つけやすい

 
 テキスト需要の増加にともない、発注者とライターのマッチングを図るサイトが増加し、それぞれに合う仕事が見つけやすい環境が整っています。
 女性なら、需要のあるジャンル、美容・料理・ファッション・恋愛系の記事などを書ける人が多いでしょう。男性なら、需要のあるジャンルとして、車・バイク・ビジネス等があります。また、法律に関する分野の発注も多くあります。相続・離婚・売買トラブル・不動産・債務整理・交通事故・会社設立ほか様々ざまな事案に、法律的な観点からのライティングが必要になります。

行政書士に適している

 行政書士試験に合格し、行政書士登録して研修を受け、実務を経験すると、法律知識、自動車や建設業などの行政手続きの知識のほか、ビジネスを開業する際の知識、個人事業についての知識等、様々な有益な知識が身につきます。また、行政書士は、多くの人は自己の適性を考えてそのような仕事を選んだのでしょうから、文章力も含めて平均以上の書面作成スキルを持っていることが多いと思います。

 この知識や経験を活かして、法律やビジネス分野のライティングをすれば、行政書士としての実務知識を生かせます。業務として未経験の未知の分野でも、専門書籍等をそろえておき、書籍やウェブサイトで確認しながらライティングをしてみることで、実務知識が身についたり、知識がブラッシュアップされます。行政書士の知識がライター業務に生かせ、ライター業務の知識が行政書士業務に良い効果をもたらすという、相互作用が期待できます。

 開業したての行政書士には、日中は事務所に待機して、早朝に新聞配達をしたり、夕方からアルバイトをして、なんとか生活をしている人が多数います。この場合、日中行政書士事務所で待機している間は、いつ電話や来客があっても良いように気を張っていなければなりませんし、それなりの服装をしてる必要があるので、気が休まる暇がありません。そのうえ、時間外は別の仕事をしていては、体も心も疲弊してしまいます。

 この点、ライティング業務であれば、日中、在宅(在事務所)で行えます。事務所で待機している仕事のない時間にパソコンに向かい作業していれば、収入を生み出すことができますので、時間外の無理なアルバイトを減らすことができます。在宅ライター業務は、報酬こそ安いものの、行政書士が行うのに非常に適した副業と言えそうです。

在宅ライターの仕事が探せるサイト

■クラウドワークス(Crowd Works)
https://crowdworks.jp/

■ランサーズ(Lancers)
https://www.lancers.jp/

■Bizseek(ビズシーク)
https://www.bizseek.jp/

■カコ―(Kacoo)
https://kacoo.jp/

■シュフティ(shifti)
https://app.shufti.jp/

■シノビライティング(Shinobi)
https://crowd.biz-samurai.com/

■ジョブハブ(JobHub)
https://jobhub.jp/

■ココナラ
https://coconala.com/



宅建業と行政書士は兼業できる?

宅建業と行政書士は兼業できる?



宅建士と行政書士で独立したい

 行政書士資格を有する人には、宅地建物取引士の資格を持っている人は少なくありません。行政書士試験も、宅建士試験も、どちらも民法からの出題があり、知識の一部を生かせるからです。
 
 会社員以外の生き方を求める際に、宅建業と行政書士業は、検討に値する魅力がある仕事です。

 行政書士一本での独立開業では生計維持に不安があるので、同時に宅建業登録をして不動産屋をする。あるいは、不動産屋として開業するにあたり特色を出していくために行政書士業務もやりたい、という考えもあり得ます。どちらも良いアイディアではありますが、行政書士と宅建業の兼任には、気をつけないといけない落とし穴があります。
 

宅建業登録には専任の宅建士が必要

 宅地建物取引業者は、その事務所に、「成年の専任の宅地建物取引士」を置かなければなりません。
 行政書士業をすることで、専任の宅建士がいないという判断がなされると、宅建業のほうに問題が発生します。

 この「専任」とは、国土交通省の宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方によると、

 「専任」とは、原則として、宅地建物取引業を営む事務所に常勤(宅地建物取引業者の通常の勤務時間を勤務することをいう。)して、専ら宅地建物取引業に従事する状態をいう。ただし、当該事務所が宅地建物取引業以外の業種を兼業している場合等で、当該事務所において一時的に宅地建物取引業の業務が行われていない間に他の業種に係る業務に従事することは差し支えないものとする。

 また、宅地建物取引業の事務所が建築士事務所、建設業の営業所等を兼ね、当該事務所における宅地建物取引士が建築士法、建設業法等の法令により専任を要する業務に従事しようとする場合及び個人の宅地建物取引業者が宅地建物取引士となっている宅地建物取引業の事務所において、当該個人が同一の場所において土地家屋調査士、行政書士等の業務をあわせて行おうとする場合等については、他の業種の業務量等を斟酌のうえ専任と認められるものを除き、専任の宅地建物取引士とは認められないものとする。

とされています。
 
 つまり、専任の宅地建物取引士は

①原則として、宅地建物取引業を営む事務所に常勤していること
②専ら宅地建物取引業に従事する状態にあること。ただし、同一事務所内で、宅建業が行われていない間に、一時的に宅建業以外の業務に従事するのは問題ない
③建築士事務所の管理建築士や建設業者の専任の技術者など、他に専任性を求められる業務をしている場合は専任の宅建士にはなれないのが原則だが、他の業種の業務量等を斟酌のうえ専任と認められるなら兼任してもよい。
④個人の宅建業者が宅建士となっている宅建業の事務所において、当該個人が同一の場所に置いて行政書士等の業務を行うことはできないのが原則だが、他の業種の業務量等を斟酌のうえ専任と認められるなら兼任してもよい。

ということになります。

①事務所に常勤していること

 宅建士は、宅地建物取引業を営む営業所に常勤していることが必要です。行政書士と兼業する場合は、同じ場所で営業しないといけません。これは、宅建業の事務所と、行政書士の事務所を同じにしてしまえば、問題なくクリアできます。

②専ら宅地建物取引業に従事する状態にあること

 基本的に宅建業に従事できる状態でなければいけません。もっとも、同一事務所内で、宅建業が行われていない間に、一時的に宅建業以外の業務に従事するのは差し支えない、と明文で認めていますから、行政書士との兼業が、宅建業の業務に影響を与えない程度なら問題になりません。

③他の法令で専任性を求められる仕事をしていない

 建築士事務所の管理建築士や、建設業の専任の技術者など、他の仕事をしていてそちらで専任性を求められている場合は注意が必要です。そういうことがなければ、行政書士と宅建業のダブルワークには影響ありません。

④原則不可だが業務量等を斟酌して兼任を認める

 個人の宅建業者が、宅建業の事務所において、当該個人が同一の場所において、土地家屋調査士や行政書士等の業務を行うことはできないのが原則です。しかし、例外的に、他の業種の業務量等を斟酌のうえ専任と認められるなら兼任してもよいことになっています。

 この例外的な扱いにより、行政書士事務所と、個人事業の宅建業は、役所が認めさえすれば同時に行えることになります。



法人については言及がない

 国交省のガイドラインは、宅建業者が法人の場合について言及がありません。

 実質的に個人営業と変わりない法人であれば、個人同様に認めるべきと考えられますが、法人と個人は別人格であるし、行政書士が、法人の専任の宅建士を兼ねることはあり得ないと考え、当然不可と判断している自治体が多いようです。

 例えば、埼玉県は、認めない方針を、ウェブサイト上に公開しています。

 したがって、このような自治体では、行政書士として独立し、同時に、不動産会社を設立してその専任の宅建士となることはできません。行政書士と兼業を考えるなら、宅建業は個人事業で行う必要があります。

法人でも認められる県もある

 
 一方、国交省のガイドラインは、法人の宅建業と行政書士事務所の併営を否定しているわけではないので、自治体によっては、不動産会社と行政書士事務所の併営を認めるところがあります。

 佐賀県は、以下のようなQ&Aを公表しています。

Q3: 今、行政書士をしています。個人事業主として、宅建業を始める予定ですが、その際、自分が代表者(兼)専任の宅地建物取引士として開業することはできますか?
A3: 行政書士や司法書士等の業務を兼務する場合は、個人事務所等に同居して、宅建業を専ら行い、常勤できる状態であれば認められます。
※新規法人を設立して、代表者(兼)専任の宅地建物取引士として宅建業を始める場合も、同様です。
※ 同居とは原則として、同一の建物であり、且つ専任の宅地建物取引士が宅建業の部屋と、(宅建業以外の)兼業の部屋を簡単に往来できる状態を指します。なお、宅建業以外にも兼業をされる場合は、事務所の要件を満たすよう注意してください

 佐賀県では、新規法人を設立して代表者兼専任の宅建士として宅建業を始める場合も、兼務を認める可能性があります。
 これは、埼玉県よりも、佐賀県の考え方のほうが正しいですよね。形式よりも実態をみて考えるのが正しい態度といえるでしょう。もっとも、埼玉のような大きな都市部をかかえる県では、行政書士と不動産屋をするならどちらかに専念しないと追いつかない業務量になる蓋然性が高い一方、佐賀県のような地方では、許認可の件数も、市中の不動産の動きも少なく、行政書士と宅建業の同時に出来る程度である蓋然性が高いというような実態を考慮した解釈・運用の違いなのかもしれません。

まとめ

 一人で行政書士事務所と宅建業のダブルワークで独立開業するのであれば、宅建業は法人化せず、個人事業として行う必要があります。しかし、地方によっては法人でも認められるので、法人にしたい場合は、担当官庁に問い合わせをしてみたほうがよさそうです。



行政書士はローリスクビジネス

行政書士はローリスクビジネス



 会社員以外の仕事ないのかなあと考えるけれども、自分には特別な経験やスキルがないし、ビジネスモデルも思いつかないという人には、士業は有力な選択肢の一つです。その中でも行政書士は、試験合格や開業が容易な仕事の一つです。

行政書士は食えない?

 書店に行けば、行政書士の開業本が何冊もあります。行政書士の開業本と、ほかの士業の開業本とは、内容に大きな違いがあります。それは「中身のなさ」です。ほかの士業の開業本は、開業や実務の際の注意点が、具体的に書ききれないとばかりに、さわりの部分をどんどん書いて終わる感じです。内容が詰まってます。一方、行政書士の開業本は、あまり具体性がありません。行政書士に限らないような、自営業の心構え、経営者の心構え、営業の際の注意点、お客さんとの接し方、ご縁を大切にしよう、SEOはがんばろう、勉強しようなどの一般論を並べて、ようやく開業本を成立させています。あまり具体性が無いのは、要するに、仕事がないからですね。

 行政書士は、4割程度が、税理士や土地家屋調査士や司法書士の登録者です。しかし、これらの人で行政書士を本業にしている人はまずいません。本業は、税理士や土地家屋調査士や司法書士であり、その業務を補完するために、例えば関連する分野の市役所での手続きのために、登録しているだけです。行政書士が飯が食える資格なら、これらの士業者も、せっかく登録しているのだから、もっと熱心に、行政書士業務をするでしょうが、そうはなっていません。

 もちろん、パーセンテージは低いですが、きっちり行政書士の売上げで生活している人もいるのは確かです。もっとも、才覚がありそうなれるとしても、何年も経営実績が必要でしょう。開業数年で、そのレベルに達することはまずありません。

自営業は過酷だが行政書士はローリスク

 

 会社員を辞めて、飲食の経験がない人が、そば屋や喫茶店や呑み屋さんなどをはじめることがありますが、財産を失い、借金を背負い、夫婦は険悪になり離婚する、そんなケースをよく見かけます。飲食店で、志のあるサービスを提供し続けるのは、会社員よりはるかに強度の高い労働が必要ですし、家族の協力も不可欠でしょう。仕入や設備投資、人件費などにもお金がかかります。

 自宅で不動産屋を開業するにせよ、200万近く必要です(不動産屋の開業費用)。案内のための、自動車なども必須でしょう。

 一方、自宅で行政書士なら、30万円程度で開業できます。

行政書士は開業費用が安い

 行政書士という仕事をはじめるには、開業費用はあまりかかりません。パソコンやプリンター、ファックスや電話機程度の設備があればよく、開業費用が安い。また、勉強のための本代などは必要ですが、たかが知れており、仕入れ費用は無いに等しくなっています。

行政書士試験は難しくない

 行政書士試験は、けして簡単な試験ではありません。
 
 しかし、弁護士・司法書士・税理士・弁理士・不動産鑑定士のような、受験生の大半が5年以上勉強を続けているようなタイプの試験ではありません。その気になって勉強すれば、1~2年で十分合格できる試験です。宅建士からのステップアップなど、ある程度民法の素養があれば、半年でも可能でしょう。公務員試験のついでに合格する学生も少なくありません。試験合格のために投下する時間資源は、大きくありません。

報酬は悪くない

 なかなかこれ一本では食えないのが行政書士。しかし、報酬自体が安いわけではありません。食えないといっても、行政書士の仕事を毎月160時間して食えないわけではありません。仕事があれば時間単価は悪くない。

行政書士の報酬

 仕事がなければ暇なだけです。世の中のために働いていない時間がお金にならないのは当たり前なので、その時間のためにほかにも仕事を持てばいいだけではないでしょうか?

行政書士はローリスク

 このように行政書士は、ほぼノーリスクビジネスですから、はじめることに躊躇するような仕事ではありません。
 現役行政書士には、3つの仕事を持っている人もざらです。事務所設備があれば、できる仕事はほかにもありますので、行政書士は行政書士で真剣にやりつつ、ほかの仕事も含めて頑張ってみるのがいいのではないでしょうか。例えば、行政書士で足りない収入の補完に、ランサーやクラウドワークスを利用して、事務所で作業をしながら、依頼を待つ。その間に、HPをみた人から、新規の建設業許可の依頼がくれば、10万円の仕事になるわけです。自由な働き方を模索する人、在宅系の仕事でフリーランスで食べていきたい人には、行政書士事務所の併営はとても有益ではないでしょうか。



行政書士の稼ぎ方

行政書士の稼ぎ方

行政書士の集客スタイル

 会社員を辞めて行政書士になる場合、どのような稼ぎ方が可能なのでしょうか? 

 行政書士の集客スタイルでもっとも一般的なのが、行政書士業務は一通り何でもやりますというスタイルです。
 
 ホームページには、「建設業・宅建業・産廃ほか各種許認可、自動車登録変更抹消、車庫証明、遺言・相続手続支援、内容証明、永住許可・帰化申請…」、などと延々と書き連ねることになります。これではあまり特色を出せず訴求力はなさそうですが、何らかの依頼を、どこでもいいから近所の行政書士に頼みたくて探している人は、このホームページを確認してから来ますので、取りこぼしが無いように列記していおくことは、必要なのかもしれません。

 士業の集客では、専門サイトはとても有効な手段です。列記型のメインのホームページのほかに、専門性を打ち出したサイトを作ると問い合わせはまるで違ってきます。

 専門性をアピールするため、各事務所、様々な工夫をしています。

許認可専門パターン

 行政書士の王道、許認可業務。なかでも件数が多い、建設業専門をアピールする事務所は多数あります。許認可は、単価も高く、専門サイトで集客するには適した業務です。地域の需要や競合事務所のサイト戦略を確認してから、自分がどこに専門性を置くかを検討して制作すべきです。

http://www.chuogyosei.com/
https://www.k-kyoka.com/
http://www.kensetsu-e.com/
http://s-regal-office.com/kensetugyou.html

 産廃許可専門をかかげるところもあります。

http://yoshijima-sanpai.com/%EF%BC%91%EF%BC%91%E4%BA%BA%E3%81%AE%E7%94%A3%E5%BB%83%E8%A8%B1%E5%8F%AF%E5%B0%82%E9%96%80%E8%A1%8C%E6%94%BF%E6%9B%B8%E5%A3%AB%E4%BA%8B%E5%8B%99%E6%89%80/
http://www.kankyo-consul.com/
http://sanpai-center.com/

 もちろん運送業専門をかかげるところもあります。

https://kamotsu.sigma-office.jp/
https://unsapo.com/

自動車手続でアピールする

 許認可と並ぶ行政書士の重要業務自動車手続き。
 許認可専門は特定の時期に仕事の集中しがちですが、自動車は通年で売上げを得やすい仕事です。

http://www.kizuna-group.com/
http://www.e-shinnsei.com/
http://www.keyaki-oss.com/

交通事故分野の専門性をアピールする

 自賠責の被害者請求自体は行政書士にも可能な業務ですが、大阪高裁平成26年6月12日判決は将来紛議が生じることが不可避な事案については、弁護士法違反となり、行政書士と依頼者の準委任契約は無効になると判示しました(https://wp.me/pabbNt-qS)。行政書士による被害者請求自体が否定されたわけではないですが、今後は行政書士の関与は減少していくものと見込まれます。これから手を出す分野ではありません。

http://www.yonetsubo.or.jp/
https://www.g-sugiura.com/
http://gy.haba-office.net/index.html
http://ayumigyousei.com/

経歴を生かしてアピールする

 行政書士の場合、前職を活かした業務をして、専門性をアピールすることも多くなっています。
 元建設会社勤務の人が建設業許認可を、元自動車ディーラー等勤務の人が自動車手続きを、元損害保険会社勤務の人が自賠責被害者請求などを得意とするケースが多くなっています。
 
 おもしろいところでは、元銀行員の人たちが、融資・資金調達などの業務を手掛けることでしょうか。
 どこをどうすれば融資を受けられるかに精通した資金調達のプロが、創業計画書からをサポートして、融資を受けるアドバイスと書面作成をする業務です。元銀行員や元信金マンですと、この業務をするのに大変説得力がありますね。
 
http://www.iwajimu.jp/
http://www5e.biglobe.ne.jp/~stbank/index.html
https://www.gyosei223.com/yuushi

家系図

 家系図製作は行政書士業務ではなありませんが、行政書士が得意とする業務ですね。

https://www.higuchi-office.net/
http://www.5senzo.net/6ir.html
https://no1kakeizu.com/

 全国から仕事を集客できるというメリットがあります。
 その分、全国的な価格競争にさらされることもありますが、付加価値をつけたサービスで対応するしかないですね。

行政書士 やらないほうが良い業務

行政書士 やらないほうが良い業務


 

やらないほうが良い業務

 



 行政書士で開業する場合、専門分野を絞りつつも、複数の得意分野を持つことが経営上有効です。そこで、許認可業務のほかにも、各人が職歴や経験を生かし工夫し、多様なビジネスモデルを展開しています。その中には、これからはじめるなら、やめておいたほうが良い業務もあります。

内容証明郵便による請求書

 

 内容証明郵便自体は、行政書士の業務として成立しうるものです。クーリングオフや、消滅時効の援用など、一方的に意思を通知するための内容証明郵便であれば、書類作成の依頼を受けても問題はありません。
 しかし、売掛金や貸金などの債権回収、慰謝料、損害賠償請求など金銭を請求する内容証明郵便は、業務として意味がないので止めておきましょう。

 行政書士事務所の中には、「行政書士名の入った内容証明郵便は相手にプレッシャーを与える」とか、「行政書士名が入ることで回収率が上がるかもしれません」、などと広告したホームページを持っている人もいますが、ナンセンスなものです。

 債権回収等の内容証明郵便は、将来の訴訟提起が前提になってこそ意味があるものです。弁護士や司法書士から内容証明郵便での請求が届けば、次は訴状が届くというメッセージになります。これなら、相手方はプレッシャーを感じ、回収率は高まるかもしれません。もし、支払いがなくても、弁護士や司法書士が、その職務権限内で訴訟提起のメニューを依頼者に提示することができます。

 他方、行政書士からの内容証明郵便による請求は、社会常識で言えば、「まだ専門家に相談していないし、裁判の準備は考えていません」、という情報を発するものでしかありません。

 「先生に内容証明を出してもらいましたが、何の反応もありませんでした、次はどうしたら良いですか?」
 「私は、次は何もできませんよ」

となる旨を正確に伝え、基本的には断りましょう。

自賠責保険被害者請求

 自賠責保険は、一定の支払基準に基づき支払いがなされるもので、直接に私人間の紛争に立ち入る性質のものではないため、その書類作成は権利義務事実証明書類として行政書士が行えるように考えられます。そこで、自賠責保険の被害者請求書類を専門に行う行政書士事務所があります。

 弁護士が現在のように増える前は、弁護士も、治療が終わり後遺障害認定結果が出る前の段階で法律相談に行っても、「費用対効果が不明なので、現状では受任が難しい。後遺障害認定の結果が出てからまた相談にきてください」、という対応も少なくありませんでした。例えば、被害者請求の添付書面である事故状況図は、道路の規制状況を確認し、幅員なども計測して、事故の状況を図面化するもので、それ自体、書類作成を得意としない人にとっては負担も大きいものです。そこで、行政書士が業務として取り扱い、自賠責保険会社に被害者請求による後遺障害認定手続きを済ませてから、その結果をもとに弁護士が相手の任意保険会社に請求するという流れで、国民の利便性を図ることができました。保険会社も行政書士を専門家として認めて、弁護士費用等特約の対象となり、報酬も支払われていました。
 しかし、近年は、弁護士費用特約の普及により、弁護士は交通事故での報酬確保が容易になったことから、被害者請求は後日の示談交渉の前提としてサービスで行う法律事務所が増えてきました。行政書士が関与する意味は薄くなっています。

 他方、行政書士の中にも、交通事故についてふさわしくない過度なアピールや、高額な成果報酬を請求をする業者がいました。そうした状況下、大阪高裁平成26年6月12日判決が出ました。これは、行政書士が交通事故の被害者と締結した自賠責保険の申請手続き・書類作成等の準委任契約は、弁護士法72条に反するものであり、公序良俗に反するため無効であるという判断です。
 この内容自体は、個別事情をならべて「将来的紛議の発生することがほぼ不可避であった」ことを前提とした判示ですから、一般的に自賠責保険の書面作成自体が不可能というわけでもないですが、解釈次第ではどこまでも波及しかねないものです。
 しかも、その内容は、少しでも認定結果が良くなるようにという方向で書類を作成しているが、それが非弁行為になるというものです。許認可が通りやすいように、少しでも要件を満たしやすくなる方向で書類を作成しても非弁にはなりませんが、権利義務事実証明書類作成業務では、このようなことがあり得るのですね。

 後日、契約が無効とされれば、報酬を返さなければなりませんし、只働きになります。そんな仕事に手を出す必要はありません。

行政書士 建設業許可の基礎

行政書士 建設業許可の基礎

建設業法

 建設業法は、「発注者の保護」を主目的とする法律です。このため、建設業をする人にとって、都合が良くなるようには作られていません。軽微な工事以外は建設業の許可を受けなればすることができませんし、建設業の許可を得るには、多くの要件を満たさなければなりません。その要件が満たされていることも、しっかり書面で証明されなければなりません。煩雑な手続きが必要となることから、行政書士への依頼がなされることになります。

建設業を行うには

 建設業を行うには、許可が必要です。

 ただし、

・1件の工事の請負代金が500万円に満たない
・建築一式工事について、請負代金が1500万円に満たない工事
・建築一式工事について、または延べ面積が1500㎡に満たない木造住宅工事

は、建設業の許可なく行えます。

 許可を得ることで、大きな工事を施工することができる仕組みになっています。

知事許可と大臣許可

 二つ以上の都道府県にまたがって営業所を設置する場合は、国土交通大臣から許可を受けます。

 一つの都道府県内で営業する場合は、営業所所在地を管轄する都道府県知事から知事許可を受けます。

一般建設業と特定建設業

 下請け保護の観点から、高額な工事を行う場合には、特定建設業の許可が必要になります。

 特定建設業許可が必要なのは、

 発注者から直接請負った工事について

・建築一式工事では6000万円以上の工事
・建築一式工事以外の工事では4000万円以上の工事

について、下請け業者に発注する場合です。
 
 特定建設業許可は、あくまで「発注者から直接請負ったもの」についての規定です。下請け業者が、2次下請け業者に仕事を出す場合は、4000万円以上の工事であっても、特定建設業の許可は不要です。

許可の有効期間

 建設業許可の有効期間は5年間。期間満了の日の30日前までに更新の申請を行う必要があります。
 適切な時期に更新手続きが必要です。

建設業の許可の種類

建設業の許可には種類があります。
 
 建築工事業
 とび・土工工事業
 土木工事業

をはじめとする以下の29種類に分類されています。

 土木工事業、建築工事業、大工工事業、左官工事業、とび・土工工事業、石工事業、屋根工事業、電気工事業、管工事業、タイル・れんが・ブロック工事業、鋼構造物工事業、鉄筋工事業、舗装工事業、しゅんせつ工事業、板金工事業、ガラス工事業、塗装工事業、防水工事業、内装仕上工事業、機械器具設置工事業、熱絶縁工事業、電気通信工事業、造園工事業、さく井工事業、建具工事業、水道施設工事業、消防施設工事業、清掃施設工事業、解体工事業。

建築一式工事とは

 原則として元請け業者の立場で、総合的な企画、指導、調整のもとに建築物を建設する工事で、複数の下請業者により施行される、大規模かつ複雑な工事。建築確認を必要とする規模の建物の新築工事や増改築のことです。

 総合的な企画、指導、調整のもとに行うわけですから、元請けとして下請けに対して工事を発注するイメージです。
 
 建築一式工事という名前ですが、この許可を取得すれば、どんな工事でも請け負うことができるというわけではありません。建築一式の許可を取得したとしても、他の専門工事で500万円以上の工事を請け負うのであれば、専門工事としての許可を取得しなければなりません。管工事、大工工事、内装仕上工事など部分的な専門工事のみを請け負う場合には、それぞれに応じた許可が必要になります。

登録免許税

 新規の場合、

・一般建設業の知事許可  9万円
・特定建設業の知事許可 18万円 

・一般建設業の大臣許可 15万円
・特定建設業の大臣許可 30万円 

です。

 更新の場合、

・一般建設業の知事許可  5万円
・特定建設業の知事許可 10万円 

・一般建設業の大臣許可  5万円
・特定建設業の大臣許可 10万円 

です。

行政書士の報酬

 日本行政書士会連合会の統計調査(平成27年度報酬額統計調査)によれば、
 
 ・建設業許可申請(個人・新規)知事許可の平均報酬
  11万8204円(最頻値が10万円)
 
 ・建設業許可申請(個人・更新)知事許可の平均報酬
  6万2939円(最頻値が 5万円)
 
 ・建設業許可申請(法人・新規)知事許可の平均報酬
  13万8779円(最頻値が15万円)

となっています。

 新規の知事許可であれば、個人業者で10万円、法人であれば15万円程度の報酬を取ることができます。事案の難易度によっては、もう少し高額にせざるを得ない場合もあります。

一般建設業の許可要件

 一般建設業の許可を受けるには、

・経営業務の管理責任者がいること
・営業所に専任の技術者がいること
・誠実性があること
・財産的基礎または金銭的信用があること
・欠格要件に該当しないこと

の要件をすべて満たす必要があります。

 特定建設業の許可を受ける際には、上記要件のほか、さらに厳しい要件を満たす必要があります。

建設業許可要件
建設業許可 経営業務の管理責任者 
建設業許可 専任の技術者とは 
行政書士 建設業許可の基礎 
行政書士の知識(建設業会計の基礎)