自己破産するとこうなる

自己破産するとこうなる

事業に行き詰った時は…

 会社員以外の仕事を探し求め、ある程度の規模の個人事業をはじめる場合、最悪の場合を想定しておかなければなりません。経営者は、成功すればよい思いができますが、上手くいかなければ、最悪は自己破産ということになります。
 
 自己破産は経営の失敗でありマイナス要素ではありますが、自己破産・免責手続きにより免責を得れば、支払わなければならない負債は無くなり、経済的なやり直しができます。

 ただし、自己破産しても税金等は免責されません。破産しても税金の支払い義務は残りますので、資金繰りに窮しても滞納しないほうが得策です。

破産すると貴方の財産は持っていかれる

 
 自己破産を地方裁判所に申し立て、破産手続開始決定が出ると、貴方の財産の管理処分権は破産管財人に移ります。破産管財人がこれらを現金化して「破産財団」管理用の預金口座に入金します。

 破産管財人の報酬や、破産者の滞納税金等を支払ってもなお債権者に配当できるだけの破産財団が形成されれば、残りはすべて債権者への配当に回ることになります。

 預貯金や不動産はもちろん、解約返戻金のある保険なども資産ですので、破産管財人が解約して、破産財団に組入れるのが原則です。 

 破産管財人は、

①現金  

 金10万円

②預貯金 

 A銀行 金5万円
 B銀行 金3万円
 C信金 金12万円

③保険解約返戻金 
 
 D保険 金85万円
 E保険 金20万円

④自動車
 
 F車 (評価額)金35万円 

⑤不動産

 所在 〇〇県○○市
 地番 〇〇〇〇
 地目 宅地
 地積 〇〇㎡ 

⑦株式
 
 〇〇株式会社 1000株

という要領で、財産の目録を作成します。
 そして、地裁の基準に従って、それまで貴方の財産であったものを、淡々と容赦なく現金化していきます。

 債権者に迷惑をかけて負債の免責を求める以上、まな板の上の鯉になった気分で見ているしかありません。借金の免責という果実を得るためのやむを得ない代償です。

手元に残せる財産

 もっとも、破産者の生活のために最低限のものは残せるようになっています。破産者の手元に残せる財産を「自由財産」と言います。

 放って置いても自由財産になるものの基準は、地方裁判所ごとに基準が違います。地域ごとに賃金水準がちがいますし、自動車の必要性なども異なるため、地方ごとの生活事情に合わせて独自の基準が設けられています。例えば「全口座合計して総額30万円以下の預貯金は原則現金化しない」としている地裁もあれば、これを20万円とする地裁もある、といった形です。

 この場合、現金化の基準が30万円の地裁なら何もしなくても管財人に預貯金を持っていかれませんが、20万円の地裁なら何もしないと口座を解約しないと現金化されてしまいます。

 なるべく多くの財産を残すには、自由財産拡張の申立てというものが必要になります。例えば、「現金10万円」「預貯金20万円」「自動車35万円」「保険20万円」については今後の生活上必要不可欠なので自由財産にしてほしいという決定をして欲しいという申立てです。この手続きをして、自由財産拡張の必要性があると認められれば、拡張が認められます。必ず認められるわけではありませんし、放って置いても破産管財人がしてくれるわけでもありませんので、自己破産申立を依頼した専門家と話し合いましょう。
 
 なお、自由財産拡張申立てをしても、残せる財産の最大限が総額99万円以下というのは全国共通で、よほどのことがなければこれを超えることはできません。

財産隠しは最悪

 破産管財人に財産を持っていかれるのを避けようとして、財産隠しをすると、発覚すれば、破産しても免責を受けられなくなります。自己破産で財産をすべて処分され、借金は残ったままになります。悪質と判断されれば、刑事訴追もあり得ます。自己破産申立時は、すべての財産を正直に報告しましょう。

 「黙っていれば分からないだろう」と思うかもしれませんが、破産手続きに入ると、

 ・申立てに当たって過去の預貯金の取引履歴を確認される
  (過去の数年の大きな金額の移動はチェックされ発覚)
  
 ・郵便物が破産管財人に転送される
  (保険や株式を隠していたところ、保険会社からの報告書面や、株主総会の通知が届き発覚)

 ・これまでの申告書類や源泉徴収票などをチェックされる
  (その内容を分析され発覚)

 ・怪しいところがあれば管財人が各所に照会する

などいろいろなパターンで発覚します。

 何も痕跡が残らないよう財産を隠しておくのは、意外と難しいものです。
 破産する何年も前から準備していれば可能かもしれませんが、支払いが苦しくなってから隠しはじめても、ほぼ発覚すると考えたほうがよいでしょう。

配偶者名義の財産は持っていかれない

 貴方が夫で自己破産するとして、妻は保証人にもなっておらず、負債もないのであれば、妻は破産する必要がありません。

 妻の財産は、手元に残ったままです。

 したがって、ある程度リスクの高い事業をする場合は、景気の良い時に、妻に一定の資産を渡しておいたほうが得策ということになります。

 仮に妻が専業主婦であっても、貴方が事業で得た収入は、妻の内助の功があり夫婦共同で形成した財産ですから、常識の範囲で妻にその分を渡していいたことは、誰にも否定できません。このご時世、夫の稼働による収入に、妻は取り分がないなどという考えは、裁判所が取れるはずもありませんね。

 このため、貴方が破産して、貴方名義の財産はすべて破産財団に持っていかれても、妻名義の貯金があれば、家計における経済的ダメージは小さくなります。

 世の中には、財産を何もかも夫名義にしているケースが見受けられますが、リスクのある事業をする場合は、この点は考えておいた方がよいでしょう。

 もっとも、資金繰りが苦しくなってから、特に自己破産申立の直前2年間に、財産隠しの意図で妻名義の口座に預金を移動させても、この行為自体が債権者を害するものですので、破産管財人に否認され、破産財団に組入れされることになります。こうした行為は、強制執行妨害罪や詐欺破産罪などの刑事罰に該当する場合もあります。裁判所や破産管財人の心証も著しく悪くなりますので、絶対にやめましょう。あくまで、経営が順調な時に、常識の範囲内で、いざというとき家族を守れるように考えておくべきことです。