司法書士試験 足切り点と合格点

司法書士試験 足切り点と合格点



司法書士試験の足切りライン、合格ラインの差

 司法書士試験は、午前択一・午後択一・午後記述の各分野で、それぞれ一定の基準点をクリアしなければ、足切りされて不合格になります。

 足切りの基準点をクリアするだけでもなかなか大変ですが、各分野の足切り点を突破しても、それだけでは合格にはまったく届きません。択一式試験では、足切り基準点よりも、概ね9問程度は上積みしなければ合格は難しい仕組みになっています。

 受験の前に、足切点と合格点の差、足切りを突破することから、合格に至るまでの違いを確認しておきましょう。

平成30年度

 平成30年度は、満点280点中212.5点以上

 ただし、以下の基準点に達しない場合には,それだけで不合格となります

 午前択一  満点105点中78点(35問中26問)
 午後択一  満点105点中72点(35問中24問)
 午後記述  満点 70点中37点

 足切り点(基準点)を合計すると187点ですので、合格するには、足切り点から25.5点以上の上積みが必要になります。
 もし記述式の得点が、足切りライン程度が限界の場合、択一式であと9問確保する必要があります。

平成29年度

 平成29年度は、満点280点中207.0点以上

 ただし、以下の基準点に達しない場合には,それだけで不合格となります

 午前択一  満点105点中75点(35問中25問)
 午後択一  満点105点中72点(35問中24問)
 午後記述  満点 70点中34点

 足切り点(基準点)を合計すると181点ですので、合格するには、足切り点から26点以上の上積みが必要になります。
 もし記述式の得点が、足切りライン程度が限界の場合、択一式であと9問確保する必要があります。

平成28年度

 平成28年度は、満点280点中200.5点以上

 ただし、以下の基準点に達しない場合には,それだけで不合格となります

 午前択一  満点105点中75点(35問中25問)
 午後択一  満点105点中72点(35問中24問)
 午後記述  満点 70点中30.5点

 足切り点(基準点)を合計すると177.5点ですので、合格するには、足切り点から23点以上の上積みが必要になります。
 もし記述式の得点が、足切りライン程度が限界の場合、択一式であと8問確保する必要があります。

平成27年度

 平成27年度は、満点280点中218.0点以上

 ただし、以下の基準点に達しない場合には,それだけで不合格となります

 午前択一  満点105点中90点(35問中30問)
 午後択一  満点105点中72点(35問中24問)
 午後記述  満点 70点中36.5点

 足切り点(基準点)を合計すると198.5点ですので、合格するには、足切り点から19.5点以上の上積みが必要になります。
 もし記述式の得点が、足切りライン程度が限界の場合、択一式であと7問確保する必要があります。

平成26年度

 平成26年度は、満点280点中207.0点以上

 ただし、以下の基準点に達しない場合には,それだけで不合格となります

 午前択一  満点105点中78点(35問中26問)
 午後択一  満点105点中72点(35問中24問)
 午後記述  満点 70点中37.5点

 足切り点(基準点)を合計すると187.5点ですので、合格するには、足切り点から19.5点以上の上積みが必要になります。
 もし記述式の得点が、足切りライン程度が限界の場合、択一式であと7問確保する必要があります。



司法書士試験はどれくらい難しいの?

司法書士試験はどれくらい難しいの?



司法書士試験の難易度は?

 司法書士試験はどれくらい難しいのでしょうか?また、どの程度勉強する必要があるのでしょうか?そのイメージをつかみたいと思います。

司法書士試験の出願者数と合格者数

 最近の司法書士試験の出願者数と合格者数は、以下のとおりです。

( 年 度 )(出願者) (受験者)(合格者)

平成30年度 17,668人 14,387人 621人
平成29年度 18,831人 15,440人 629人
平成28年度 20,360人 16,725人 660人
平成27年度 21,754人 17,920人 707人
平成26年度 24,538人 20,130人 759人

司法書士試験の合格率

 司法書士試験の合格率は、以下のとおりです。

(出願者数を分母にして算出)

平成30年度 3.51%
平成29年度 3.34%
平成28年度 3.24%
平成27年度 3.25%
平成26年度 3.09%

(受験者数を分母にして算出)

平成30年度 4.32%
平成29年度 4.07%
平成28年度 3.95%
平成27年度 3.95%
平成26年度 3.77%

どれくらい勉強する必要があるのか?

 合格率からみると、司法書士試験の受験を志した人の多くは、最終合格には至らずに脱落しているものと考えれます。合格者の受験期間ですが、多くの人が4年以上勉強しているようですが、正確な数字はありません。

 受験予備校の講師には、半年程度の短期合格を売りにしている人がいますが、こう言っては失礼ですが、それらの人は合格した年齢がそれなりの年齢ですし、それ以前の経歴もぼんやりしている人が多く、あまり真に受けないほうが良いかもしれません。

 以下は、「私にもできた! 司法書士合格・開業」(自由国民社、渡邊亜紀子)という本の引用です。著者は、1984年生まれ。中央大学に入り、2006年の大学4年生時に司法書士試験に合格したとのことです。大学2年生時に司法書士を知り勉強をはじめて、大学4年生で合格した若年短期の合格者です。この人なら、年齢的に、それ以前から法律の勉強していた可能性は少ないでしょう。
 
「大学3年生のときにも司法書士試験を受けたのですが、合格ラインまで10点くらい足りずに落ちてしまいました。完全な勉強不足でした。最初は、あと10点で惜しかったな、なんて思っていたのですが、結果の通知に書かれている順位を見てびっくり。10点以内の点数不足で落ちている人が、数百人いました。実はこの試験、勉強をすれば、ある程度の点数は取ることができるのですが、この『あと少し』を超えるのがとても難しい試験なのです。そこで、私は、この試験はそんなに甘くないんだな、と気がつき、満点を取るつもりで勉強しないと受からないんだろうと改めて思いました。」

「それからは、本当に必死でした。最後の半年間は、寝る、食べる以外は、全部勉強。食べている時間さえもったいなかったので、参考書を読みながら食事をしていました。睡眠時間は、毎日6時間と決めていたので、1日17時間前後は勉強していたと思います。よく受験生の皆さんから、『何時間くらい勉強していましたか?』という質問を受けます。これは難しい質問です。これだけ勉強すれば受かる、というものではないし、私よりももっと短時間の勉強でも受かった人もいると思います。でも私は、1日17時間前後は勉強しないと受からない試験だと思ったから、それだけやっていました。」

 2年程度の短期合格を目指すには、これくらいの覚悟が必要となりそうです。勉強時間の確保できない社会人であれば、5年程度の計画を建てて進めたほうがよさそうです。



司法書士の裁判業務の範囲

高松高裁判決に学ぶ 司法書士の裁判業務の範囲



司法書士の裁判書類作成業務の範囲

 司法書士法上、司法書士の主な業務には、

①裁判書類作成業務
②法務局への登記・供託申請代理業務
③簡易裁判所の管轄に属する法律事件の代理人業務

があります。

 ①の司法書士の裁判書類作成業務は簡易裁判所に限りません。司法書士は、地方裁判所・高等裁判所・最高裁判所に提出する書類作成も可能です。
 歴史的には、司法書士の業務は①にはじまるもので、②と③は、①から派生して追加された業務です。
 明治以来、弁護士の権限が徐々に大きくなったことで、司法書士の裁判所提出書類作成業務は一定の制限を受けることになりました。

司法書士制度の歴史
弁護士制度の歴史

 弁護士法による司法書士の裁判書類作成の制限につき、頻繁に参照されるのが、昭和54年6月11日の高松高裁判決です。司法書士を目指す場合は、しっかり確認しておきましょう。

「整序」の意味内容と範囲

 高松高裁判決は、

「司法書士が他人から嘱託を受けた場合に、唯単にその口述に従って機械的に書類作成に当るのではなく、嘱託人から真意を聴取しこれに法律的判断を加えて嘱託人の所期の目的が十分叶えられるように法律的に整理すべきことは当然であり職責でもある。」

としています。

 一方、同判決は、

 「制度として司法書士に対して弁護士のような専門的法律知識を期待しているのではなく、国民一般として持つべき法律知識が要求されていると解され、従って上記の司法書士が行う法律的判断作用は、嘱託人の嘱託の趣旨内容を正確に法律的に表現し司法(訴訟)の運営に支障をきたさないという限度で、換言すれば法律常識的な知識に基づく整序的な事項に限って行われるべきもので、それ以上専門的な鑑定に属すべき事務に及んだり、代理その他の方法で他人間の法律関係に立ち入る如きは司法書士の業務範囲を超えたものといわなければならない。」

としています。

 この「法律常識的な知識に基づく整序」の部分が有名です。「国民一般が持つべき法律知識」に基づき「整序」するというと簡単な法律判断作用しか加えられないように考えられます。しかし、その前提として、依頼者の「真意を聴取しこれに法律的判断を加えて嘱託人の所期の目的が十分叶えられるように法律的に整理すべき」ということですから、それなりに高度な判断をしなければならい義務を負っていると考えられます。このように、高松高裁判決の「整序」の意味内容は、今一つはっきりしない書きぶりになっています。

法的な助言指導は差し支えないが、限界もある

 高松高裁判決はなおも続けます。

 「『司法書士が、他人の嘱託を受けた場合に、訴を提起すべきか、合わせて証拠の申出をすべきか、仮差押え仮処分等の保全の措置にでるべきか、執行異議で対処すべきか』などまで判断するとともに、『資料の収集、帳簿の検討、関係者の面接調査、訴訟維持の指導』をもなすことが、司法書士の業務ないしこれに付随する業務であるかどうかは、その行為の実質を把握して決すべきである。」

 つまり、依頼者の主張を機械的に記述するのではなく、司法書士側から依頼者に保全措置を行う提案をするなどの行為も、一概には否定されません。

 さらに、

 「例えば訴状を作成する段階でも証拠の存在内容を念頭に置く必要があるし、前示の一般的な法律常識の範囲内で助言指導をすることは、何ら差し支えない

としています。

 ここまで読めば、高松高裁判決は、司法書士の裁判書類作成に、相当積極的な法的判断と助言指導を認めていることが分ります。

 司法書士は、訴状等の作成にあたり法的判断を加えることはできず、依頼者の言うことを機械的あるいはタイプライター的にそのまま記述することしかできないのだという主張が、一部の弁護士にはあります。
 ネット上で代表的なところでは、東京の深澤諭史弁護士(第二東京弁護士会、登録番号43684)です。同氏は、

他士業の資格については,書面作成が認められているケースが多いのですが,この場合の書面作成とは,言い分を法的に整理して,文書の受け取り人が誤解しない程度にする,という程度の関与しか認められていません。要するに言い分をそのまま整理するだけであり,有利な主張,証拠を検討・提案するといった行為は認められないのが原則です。

という主張です。このような極端な考えは、少なくとも「整序判決」として有名な高松高裁判決の趣旨には沿わないことが分ります。

 もっとも、同判決は、

 「これを一律に基準を立てて区分けすることは困難であって、結局はその行為が嘱託に基づく事務処理全体からみて、個別的な書類作成行為に収束されるものであるか、これを越えて事件の包括的処理に向けられ事件内容について鑑定に属する如き法律判断を加え、他人間の法律関係に立ち入るものであるかによって決せられると解すべきである」

ともしています。
 
 結局のところ、司法書士は依頼があれば、最終的に書面に落とし込むためであれば、法律事件についての法的判断を伴う相談に応じつつ、訴状や準備書面作成のために必要な事項を聴取・調査しながら書面作成ができます。司法書士の裁判書類作成業務が、司法書士法の範囲内か、弁護士法違反となるかは、個別具体的な事例ごとに、裁判所が都度判断するしかない、ということになります。

判決文から読み取れる裁判官の考え

 高松高裁判決が、今一つはっきりしない、悪く言えばどっちつかずの中途半端な書きぶりになっているのは、理由がありそうです。

 この判決は、被告の司法書士が7件の事実につき弁護士法違反で訴えられた刑事事件です。この7件の大半が、被告人が民事紛争の代理交渉をしていたと言われても仕方ない案件で、細かい話をするまでもなく、弁護士法違反の事実認定が可能な内容です。基本的にこの話は、松山でまるで弁護士のように民事紛争を扱っていたことで知られていた司法書士を懲らしめようというものなのですね。

 さて、7件の公訴事実のうち微妙なものが3件あり、一審の松山地裁ではうち4件だけを弁護士法違反と認定し、うち3件は司法書士業務の範囲内と認定されました。この3件のうちの1件は、Aさんが経営していたB社についての、会社乗っ取り事件についてのものです。この会社乗っ取りの事情については、詳しい記述されていませんが、判決文から断片的に分かることがあります。この会社乗っ取り事件は、Aさんがすでに弁護士に相談し、訴訟になっていました。この件に首を突っ込んだ被告人の司法書士は、B社の従業員らがAさんの敷地を通行していることに目をつけました。そして、通行権問題で攻めてみると良いという助言をし、訴訟を提起するのを手伝っています。おそらく、もともとの経営者のAさんの土地を通行しないと、B社に不便が生じるケースとなっていたので、この状況を利用して、通行権に関する訴訟を起こすことで、本命の会社乗っ取り事件についてB社の現経営陣を揺すぶり、ことを有利にすすめようという趣旨のアイディアを出して提案をしたものと推測されます。

 要するに、会社乗っ取り事件について、会社法上の正攻法による法律的な訴訟を提起を支援するのではなく、依頼者本人が考えてもいない別件にかかる別訴を提案して紛争を複雑化させて、駆け引きをさせるような提案です。この事実については、松山地裁では問題ないとされました。やってることは訴状作成であり、代理交渉をしているわけではないから、司法書士の範囲内となるからです。しかし、高松高裁では、これは司法書士業務の範囲を逸脱していると考えました。そして、裁判官は、この件を有罪にするロジックを考えなければなりませんでした。その結果が、「法律常識的な知識に基づく整序」です。会社乗っ取り事件について、「一般の法律常識」により会社法上の無効の訴え等を提案するのではなく、まったく別件の嫌がらせ的訴訟を提案して事件の包括的処理を目指すような助言・指導を行い、その訴状を作成するのは、「法律常識」の範囲外であるし、事件を複雑化し、紛争の解決を長期化させ、訴訟の運営に支障をきたすようなことであり、弁護士法違反ということです。

高松高裁判決が問題なしとしている事例

 なお、高松高裁判決は、7つの公訴事実のうち6件については弁護士法違反としましたが、以下の事実については司法書士の業務の範囲内にあり問題ないとしました。

 Cは同人の妻の姪にあたるDとの婚約をEが破棄したことについて、慰謝料150万円くらいを要求して同人と交渉していたが解決に至らなかったため、裁判にするほかないと考え、(中略)被告人を訪ねた。被告人は両者間の交際の程度が内縁にまで達しているかどうか、Dの結婚準備の程度、今後の生活見通しなどを同女について調査し、判例等に当って慰謝料額を算定し、同女の言い分を認めた内容証明郵便を作成し、Cにおいてこれを郵送したが、相手からも内容証明郵便による返事があり、Cとしては訴訟を起こす決意をして訴状の作成方を依頼し、被告人はこれに応じて訴状を作成してCに交付し松山地方裁判所西城支部に提出した。

 当事者の依頼により、判例等を調査して慰謝料を算定し、訴状を作成する。そのような行為は「司法書士の業務範囲内にあり、なんの問題もないというのが、高松高裁の判決です。

 ここまでくれば、高松高裁判決の「射程」が見えてきました。司法書士が、民事事件について、依頼者の相談に乗り、裁判書類を作成することは問題ない。そのための助言や指導をすることも差し支えない。依頼者の真意を実現するために、判例や専門書等で慰謝料額を算定することもあるだろうし、保全の提案もしても良いだろう。しかし、この慰謝料請求事件でいえば、頼まれもしないのに、DのEに対する貸金返還請求訴訟の提案をするような、依頼の本筋とまったく関係のない別件訴訟を提案して、当事者間の紛争の包括的な解決を目指すようなことは範囲外だ、ということになりそうです。

まとめ

Q:司法書士の裁判書類作成業務は、依頼者の主張をそのまま書くことしかできないの?
A:そんなことはありません。依頼者の真意を実現するために、一定の範囲で法的な判断作用を加え、助言・指導することができるというのが高松高裁の整序判決です。



司法書士 会社設立の資本金の払込み

司法書士 会社設立の資本金の払込み





会社設立時の資本金の払い込み

 
 会社設立において、発起人以外からも出資を募る「募集設立」という手続きを取る場合、会社設立登記には金融機関発行の「払込金保管証明書」が必要となります。この証明書を金融機関に発行してもらうのは、少々手間がかかります。この点、「発起設立」という発起人が設立時発行株式の全部を引き受ける手続きの場合は、金融機関発行の「払込金保管証明書」の添付を省略できる簡便な方法が用意されています。

 具体的には、発起設立の場合、発起人が資本金となる額を預貯金口座に払い込み、その通帳の写しを、払い込まれた金額を証する書面と合綴(てつ)し、「払込があったことを証する書面」として設立登記申請時に添付すれば良い、ということになっています。要するに、ちゃんと現実に資本金が払込みが有りましたという書面を作り、そこに入金が記録された預金通帳のコピーを付ければ良い、ということです。

誰の預金口座に振り込むのか?

 出資金の払込みをする預金口座は、設立される会社名義の口座ではありません。なぜなら、法人は登記によって設立され、登記により法人として誕生します。金融機関は、法人格を持たない設立前の会社名義で預金口座を作らせてはくれません。このため、会社設立前に会社名義の預金口座を作ることは不可能だからです。

 それでは誰の預金口座を使うかというと、原則として、発起人名義の預金口座になります。また、設立時(代表)取締役を名義人とする預金口座でも、設立の登記は受理されます。基本的には、これ以外の第三者はだめです。しかし、発起人も設立時取締役も日本国内に住所が無い場合は、特例として、発起人や設立時(代表)取締役以外の者の預金口座でも良いとされています。外国人が日本で会社を設立しやすいように、特例で配慮しているからです。

 その根拠が、以下の通達(法務省民商第41号平成29年3月17日)です。

法務省民商第41号平成29年3月17日通達の内容

 
1 預金通帳の口座名義人として認められる者の範囲
 
 預金通帳の口座名義人は,発起人のほか,設立時取締役(設立時代表取締役である者を含む。以下同じ。)であっても差し支えない。払込みがあったことを証する書面として,設立時取締役が口座名義人である預金通帳の写しを合てつしたものが添付されている場合には,発起人が当該設立時取締役に対して払込金の受領権限を委任したことを明らかにする書面を併せて添付することを要する。

2 発起人及び設立時取締役の全員が日本国内に住所を有していない場合の特例

 登記の申請書の添付書面の記載から,発起人及び設立時取締役の全員が日本国内に住所を有していないことが明らかである場合には,預金通帳の口座名義人は,発起人及び設立時取締役以外の者であっても差し支えない。払込みがあったことを証する書面として,発起人及び設立時取締役以外の者が口座名義人である預金通帳の写しを合てつしたものが添付されている場合には,発起人が当該発起人及び設立時取締役以外の者に対して払込金の受領権限を委任したことを明らかにする書面を併せて添付することを要する。

3 発起人からの払込金の受領権限の委任

 1及び2の場合における発起人からの払込金の受領権限の委任については,発起人全員又は発起人の過半数で決する必要はなく,発起人のうち一人からの委任があれば足りる。

設立時取締役の口座に払込む場合

 出資金を設立時(代表)取締役の預金口座に払い込む場合は、当該設立時(代表)取締役が、発起人から、払込金受領権限について委任を受けたことを証する書面(委任状)を添付する必要があります。この委任は、発起人が2人以上いるときでも、発起人の1名から委任を受けていれば問題ありません。

払込みの時期

 出資金の払込みがなされるのは、定款作成日以後の必要があります。定款作成日より前に払込みがなされている場合、設立登記申請は認められません。定款作成日とは、定款に記載された日付のことを指します。必ずしも、公証人による定款認証日以降の日でなくても、株式会社の設立の登記申請は受理されます(法務省民事局商事課発「会社法等の施行に伴う商業・法人登記事務の取扱いに関するQ&A」)。

小まとめ

 Q:資本金の払込み先口座は、誰の名義の口座に払い込むの?
 A:発起人もしくは設立時取締役です(どちらも日本国内に住所を有さない場合は特例がある)

 Q:資本金の払込み時期に決まりはあるの?
 A:定款の作成日付より後である必要があります。それ以前に入金されていると、設立登記申請自体ができません。張り切って、あまり早く払い込まないようにしましょう。

司法書士業務として

 会社設立は司法書士の仕事です。司法書士として引き受けることになる会社設立の大半は発起設立ですから、「払込みがあったことを証する書面」に預金通帳を合綴するのが通常のパターンになります。出資金の入金・振込先は、通常は、発起人兼設立時(代表)取締役の預金口座ということがほとんどでしょうが、家族や第三者名義の預金口座を使いたいなどと相談された場合は、注意が必要ということになります。出資金の払込み時期については、定款作成日より前になっていないか確認して、必要な指示を依頼者にする必要があります。



司法書士の仕事 抵当権の抹消

司法書士の仕事 抵当権の抹消



抵当権の抹消登記

 不動産登記は、司法書士の主業務です。

 住宅を担保にしたローンの支払いを終えた時などに、不動産を担保から外すときの抵当権や根抵当権の抹消登記は、司法書士の仕事です。
 抹消登記の依頼の際に、単純に抹消登記を申請すれば良いとは限りません。抹消登記の前提として、登記名義人の住所や氏名の変更登記が必要になったり、抵当権の移転登記が必要になったり、根抵当権の元本確定登記が必要になったり、他の登記が必要人になることがあります。依頼を受ける際には、この点を確認したうえで、見積りを出す必要があります。

抵当権の抹消の原因

 抵当権が消滅する原因は、債務の全額の「弁済」だけではありません。

 例えば、

・抵当権者による抵当権の「放棄」
・抵当権者による抵当権の「解除」
・所有者と抵当権者が同一人になった場合の「混同」
・抵当権者と債務者が同一人になった場合の「債権混同」
・本来の給付に代わる物で弁済する契約をした場合の「代物弁済」
・保証債務について抵当権で主債務者が弁済した場合の「主債務消滅」
・所有権が時効取得されたことにより、抵当権が実体上消滅した場合の「所有権の時効取得」  

などがあります。

申請人

 根抵当権を失う根抵当権者が登記義務者、設定者(所有者)が登記権利者となり、共同申請します。
 「混同」を原因とする場合は、同一人が権利者兼義務者として申請します。

登録免許税

 金1000円

必要書類

・登記原因証明情報
・登記識別情報
・資格証明書もしくは会社法人等番号
・利害関係を有する第三者がいる場合はその承諾書
・代理権原証明情報(委任状) 

 「混同」「債権混同」を原因とする場合は、登記原因証明情報の提供を省略できます。
 

抵当権設定者の氏名等に変更がある場合

 (根)抵当権の設定者である所有権の登記名義人の登記記録上の氏名等(住所・氏名・名称)に変更が生じているときは、(根)抵当権抹消登記の前提として、所有権登記名義人の氏名等の変更登記が必要になります。
 居住していた住居を売却する場合、登記上の住所がそれまで居住していた住居になっていることが多いので、転居を済ませて住民票を移し、空き家になってから住宅を売却した場合は、住所変更登記が必要になることが多いので、注意が必要です。

抵当権者の氏名等に変更がある場合

 (根)抵当権者の登記記録上の氏名等(住所・氏名・名称)に変更が生じているときは、抵当権抹消登記の前提として、抵当権の登記名義人の氏名等の変更登記は省略できます。この場合は、登記上の氏名等と登記申請者の氏名等が相違することになるため、この点について変更等を証する書面を添付します。
 たとえば、抵当権者A銀行が、商号を変更してB銀行になっている場合、抵当権抹消登記の際に、名称変更を原因とする抵当権者の氏名変更登記をする必要はありません。登記事項証明書等を添付して、B銀行がA銀行に商号変更されていることを証明します。

抵当権者に合併が生じている場合

 (根)抵当権者に合併や相続が生じ、その後弁済等により抵当権が消滅した場合、合併または相続による(根)抵当権移転登記をしたうえで、抹消の登記をすることになります。
 たとえば、A銀行で住宅ローンを組み、住宅を購入してA銀行の抵当権を設定したところ、10年後にA銀行がB銀行に吸収合併され、B銀行に支払いを続け20年後に住宅ローンの支払いが完了した場合、抵当権抹消登記の前に、A銀行からB銀行への抵当権移転登記をしなくては、抵当権抹消登記ができません。

根抵当権の抹消

 根抵当権の場合、元本確定前は、弁済による抹消登記をすることはできませんので、先に元本が確定している必要があります。元本が確定していることが登記記録上明らかでなければ、先に元本確定登記をする必要があります。
 なお、根抵当権の「放棄」「解除」が原因であれば、元本確定前でも抹消登記ができます。

株式会社設立の法律知識

株式会社設立の法律知識

 会社設立登記は、司法書士の業務です。

発起設立と募集設立がある

 発起人がすべての設立時発行株式を引き受けるのが発起設立。発起人以外も設立時発行株式を引き受けるなら募集設立となります(会25条)
 司法書士が受任するものは、ほとんどが発起設立ですので、発起設立を中心に受任の準備をしておく必要があります。

定款の作成

 株式会社を設立するには、発起人が定款を作成し、その全員がこれに署名し、又は記名押印しなければなりません(会26条)。そして、この定款は公証人の認証を受けなければ、その効力は生じません(会30条)。

 定款の絶対的記載事項は、

 ①目的
 ②商号
 ③本店の所在地
 ④設立に際して出資される財産の価額またはその最低額
 ⑤発起人の氏名または名称及び住所

です。

 このほか、発行可能株式は、株式会社の成立の時までに、定款で定めなければなりません。
 
 参考になる定款の記載例として、

 日本公証人連合会 定款記載例 http://www.koshonin.gr.jp/format

があります。

定款の認証

 株式会社の設立の定款は、公証人の認証を受けなければ、効力を生じません(会社法30条第1項)。

 公証人の認証を受けた定款を変更できるのは、以下の場合に限定されています。
 
・裁判所が現物出資財産等についての定款の記載を不当として、変更決定をした場合
・上記の決定の確定後一週間以内に、発起人の全員の同意によって決定された事項についての定めの廃止をする場合
・発行可能株式総数の定めの設定もしくは変更
・創立総会決議による変更

発行可能株式総数

 発起設立の場合は、定款で定めるか、発起人全員の同意で定めます。
 募集設立の場合も、定款で定めるか、発起人全員の同意で定めます。ただし、設立時募集株式と引換えにする金銭の払込みの期日またはその期間の初日のうち最も早い日以後は、創立総会の決議によって定めます。
 

発起人が定める事項

【原則】
 発起人の頭数の過半数で定めることになります。

【発起人の全員の同意で定める事項】

・発起設立の場合で発行可能株式総数を定める場合
・発起人が割当てを受ける設立時発行株式の数(会32条)
・発起人が設立時発行株式と引き換えに払い込む金銭の額(会32条) 
・成立後の株式会社の資本金及び資本準備金の額に関する事項(会32条)
・種類株式発行会社について、定款で株式の内容の要綱を定めた場合には、その具体的内容(会32条)
・募集設立の場合で設立時発行株式を引き受ける者の募集をする旨及び設立時募集株式に関する事項

【発起人の議決権の過半数で定める事項】

・発起設立の場合の役員の選任及び解任(設立時監査役を解任するときは発起人の議決権の3分の2)

発起人の出資の履行

 
 発起人は、その引き受けた設立時発行株式につき、遅滞なく、その出資にかかる金銭の全額を払い込まなければなりません(会34条)。「遅滞なく」ということで、期日や期限は法定されていません。

創立総会の決議要件

 創立総会の決議は、当該創立総会において議決権を行使することができる創立時株主の議決権の過半数であって、出席した当該設立時株主の議決権の3分の2以上にあたる多数を以てする(会社法73条第1項)ことなります。

選任を証する書面

 
 発起設立 定款又は発起人の議決権の過半数の一致があったことを証する書面
 募集設立 創立総会議事録

就任承諾書、本人確認証明書

 就任承諾書添付の印鑑証明書も含めて、通常の役員変更の場合と、ほぼ同じです。

 ・役員就任の登記
 ・代表取締役の就任登記

代表取締役の選定書面に添付する印鑑証明書

 通常の就任の場合と違い、設立の登記の際には不要です。
 

登録免許税

 本店所在地では資本金の額×1000分の7。ただし、最低額は15万円。

司法書士の魅力

司法書士の魅力



会社をやめたい

 会社員以外の仕事ないのかなあと考える理由は人それぞれ、その理由も一つではなく複数あるのが普通です。「異常な上司に当たってしまった」「会社のビジネスの10年先が見えない」「従業員が薄給で働くことを前提としたビジネスモデルに絶望」「若い時だけで使い捨てにされそう」「組織に合わない」「今の給料で全国転勤は勘弁してほしい」。
 
 会社内でフリーになって需要のあるスキルが身につく分野の仕事をしていた人であれば、その仕事でフリーランスになることができます。しかし、そうでない人が会社員以外の仕事ないのかと考えた場合、多くの人が一度は士業の可能性に目を向けるのではないでしょうか。

 士業は、会社員類似の営業・オフィスワーク的なもので、個人で独立して営業して成立している職種です。会社員を辞めてほかの仕事をしたいときに、親和性が高いのが士業です。

 飲食などでの自営も考えるでしょうが、飲食店は設備投資にかかる初期費用が小さくない。そして、参入規制がないので過当競争の感は否めない。大資本のチェーンとも戦わなければならない。そこそこお客さんが入っているのに、3年程度で消えていく飲食店を、何度も見てきたはずです。もちろん、それでも志が飲食にあるというのであれば、そちらに向かうべきでしょうが、単に独立したいがための手段として選ぶのは、リスクが高いジャンルです。

 士業というと、「古びた規制産業」扱いする人もいますが、長い歴史があり、職業として成立してきたという実績があります。法的な独占分野があります。参入には資格試験という、一定の障壁があります。そして、士業の多くは、専門の法人を作ることはできますが、一般企業がそのままの姿では参入できない規制があります。大資本と競争することもありません。現代日本で、個人営業の自営が成立する条件が整っている、数少ない職種です。

主な士業

 主な独立開業系の士業には、
 
 ・弁護士
 ・公認会計士
 ・弁理士
 ・不動産鑑定士
 ・司法書士
 ・税理士
 ・土地家屋調査士
 ・社会保険労務士
 ・行政書士

などがあります。 

難易度

 上記のうち、もっとも資格試験合格が易しいのは、行政書士です。
 その次が、社労士と土地家屋調査士になります。

 弁護士・公認会計士・不動産鑑定士・弁理士・司法書士・税理士になると、多くの合格者が5年以上かけて勉強しているレベルになります。どれが難しいかは、個々人の適性等もあるので、何とも言えません。かつて、司法試験・公認会計士試験・不動産鑑定士試験が三大難関国家資格といわれました。不動産鑑定士は試験が論文式だから入っていたという側面が大きいところ、現在は人気が低迷し、受験者数も大変少なくなっています。弁護士と公認会計士は、制度上の格上感はありますが、試験の仕組みがすっかり変わりました。とくに、現行の司法試験につていは、あまりにも新規参入者が少ないため、「おそらくいまでも最難関はずではあるが、良く分からない」、というところです。
 
 これらの試験の難易度の比較については、様々な議論がありますが、司法書士が、最難関に近いレベルの難しい試験であることは確かですから、合格には数年以上の学習が必要になります。

司法書士の良いところ

①司法書士一本で生活できる

 司法書士は、司法書士業務一本で生活している人の割合が多くなっています。平均的な所得水準は弁護士や公認会計士に及ばないまでも、悪いものではありません。例えば、行政書士や社会保険労務士は、独立しても、それ一本で生活可能になる人はそれほど多くありませんし、短期での廃業者が多いのも現実です。ほかにも生活の糧を稼ぐ方法を考えながら、事業をはじめる必要があります。

②年齢は高くても問題ない

 司法書士では、30代前半の合格者は若者あつかいです。40代の合格者も一般的です。加えて、法務局を定年退官してからはじめる人もいます。年齢はあまり問題にもなりません。例えば、公認会計士は、試験に合格しても、監査法人等に就職し実務経験を積まなければなりません。数年前、公認会計士試験に合格したものの、少々年齢が高いため監査法人に就職できず、警備員をしている人の合格体験記が、ネット上を騒然とさせたことがあります。司法書士ならば、年齢が高ければ、配属研修で実務を見たら、すぐに独立すれば良いだけのことです。もともと異業種からの脱サラ組が多く、どの世界から入っても浮くことはありません。不動産決済の立会なども、ある程度の年齢のほうが、信用を得やすい面があります。
 
③大学院は不要

 司法書士は、受験のために学校に行く必要はなく、試験内容自体が実務的・専門的であるため、合格後は短期の研修のみで、即独立して成り立っている人が多い資格です。例えば、弁護士になるための司法試験は、(予備試験という例外ルートはありますが))受験のためにロースクールに通い、合格後もや司法修習があり、即独も一般的ではないため法律事務所に就職をする人がほとんどです。独立までの道のりは長く、学生が志望するならともかく、一度社会に出た人には、参入のハードルが高くなっています。

④顧問先なしで独立可能

 司法書士は、見込み客なしで独立している人がほとんどです。例えば、税理士は、顧問ビジネスなので、経験も顧客もなしでいきなり独立をするのは難しい仕事です。税理士事務所で働き、最初からある程度の見込み客を獲得してからのからの独立が通常パターンです。

⑤即独立は普通
 
 司法書士は、合格後研修を経て即独立する人は珍しくはありません。公認会計士などは制度上そのようなことはできませんし、弁護士でも即独は非常に不安視されます。税理士も、税理士事務所で稼働して実務経験を積み、一定の見込み客を確保してから独立するのが普通です。司法書士の即独のしやすさ、会社員を辞めて、早く独立して稼ぎたい人には、大きな利点です。

⑥試験は法律のみ

 司法書士の試験範囲は広く、民法・商法(会社法)・不動産登記法・商業登記法、を中心に、憲法・刑法・民事訴訟法・民事執行法・供託法・司法書士法から幅広く出題されます。10科目の法律分野をマスターするのは大変です。しかし、考えようによっては、試験の内容は法律一本です。例えば不動産鑑定士試験は、不動産の鑑定評価のほか、経済学・会計学なども学習します。土地家屋調査士試験では、法律だけでなく、測量のために数学的な学習も必要です。大学で経済学が得意であったとか、もとから数学が得意というような人にとってはアドバンテージがありますが、そうでなければ、習得が大変です。弁理士は、試験内容は法律中心ですが、実務においては機械や技術について理系の知識がないと困ることになります。一方、司法書士は、国語力以外の基本的学力は受験や実務にあまり関係ないため、どういう学歴・経歴の人であれ、参入しやすくなっています。

 以上のように、司法書士は、30代以降の脱会社員、独立開業には、非常に適した資格ではないかと思われます。
 難点は、試験合格が難しく、5年~10年勉強している人がたくさんいるという点です。もっとも、それだけの期間無職で勉強している人はまれで、最初の数年は専業で勉強し、受験レベルに達してからは働きはじめて数年後合格するとか、数年間働きながら勉強して、合格に近いレベルに達してから数年専業で勉強して合格するなどのパターンが多いようです。
 


司法書士 解散・清算の登記

司法書士 解散・清算の登記

ゆりかごから墓場まで

 解散・清算は商業登記がなされる案件ですので、主に司法書士が取り扱います。司法書士という職業は、会社の設立から、平常営業時の役員・株式・資本金などの様々な変更、そして解散・清算・清算結了まで関与することになります。

 一方、破産などの倒産処理については裁判所案件になるため、主に弁護士が対応します。司法書士は、法人の自己破産申立について、書類作成することは権限上は可能です。しかし、直近まで活動していた会社の自己破産申立は、申立前の財産保全、売掛金の回収、労働者や、一般債権者への対応などに代理人でないことに伴う困難が生じやすいことから、受任はなされないケースが多いものと考えられます。もっとも、数年間営業しておらず、本店の後片付けが完了しており、債権者も銀行や保証会社のみで、ただ負債と法人格だけが残っているというような事案などは、司法書士でも問題ありません。

株式会社の解散事由

 株式会社の解散事由には以下のものがあります。

①株主総会の特別決議
②定款で定めた存続期間の満了
③定款で定めた解散事由の発生
④合併
⑤破産手続開始決定
⑥裁判所の解散命令、解散判決
⑦休眠会社としての解散の擬制

 このうち、①②③の場合について、清算人が解散登記の申請をします。
 ④は、存続会社または設立会社の代表者からの申請によります。⑤⑥は裁判所書記官からの嘱託によります。
 

解散を証する書面

 解散登記の添付書面としては、

①の株主総会特別決議による場合は、株主総会議事録を添付します。
②の定款で定めた存続期間の満了の場合には、存続期間は登記事項なので、登記記録を見れば分かることですから、添付書面は不要です。
③の定款で定めた解散事由の発生の場合は、解散事由の発生を証する書面を添付します。
 

清算人

 株式会社の清算人となるのは、

①定款で定める者
②株主総会の決議によって選任された者
③解散時の取締役
④利害関係人の申立てにより裁判所が選任した者

 ①の定款で定める者も、②の株主総会決議によって選任された者もいない場合に、③の解散時の取締役が清算人(法定清算人)となります。

費用

 
 解散の登記の登録免許税は3万円です。清算人については、最初の清算人の登記については9000円です。 

 

清算人登記の添付書面

①定款
 株式会社の清算人の登記の申請書には定款を添付します(商業登記規則73条1項)。特例有限会社の場合は不要です。

②株主総会議事録
 株主総会決議によって選任された場合は添付します。

③就任承諾書
 定款で定める者が清算人となる場合、株主総会決議によって選任されたものが清算人となる場合、清算人の就任承諾書を添付します。
 法廷清算人や裁判所が選任した清算人の場合は、就任承諾書は不要です。

④裁判所の選任審判書
 裁判所が選任した者が清算人に就任する場合に添付します。

⑤代表清算人の選定を証する書面
 代表清算人を定めたときは添付します。
 

監査役

 監査役設置会社の場合は、解散しても、解散前の監査役が引き続き監査役となります。清算手続に入ったからといって、監査役の地位を失いません。

司法書士 特例有限会社の登記

司法書士 特例有限会社の登記

特例有限会社とは

 特例有限会社は、平成18年、会社法の施行により有限会社法が廃止された後に、残った有限会社のことです。法律上は株式会社の一種という扱いで存続しています。
有限会社は、もう現在は新たに設立することができません。従って有限会社設立登記の依頼はありませんが、まだまだ存続している会社は多く、現在も、登記の仕事があります。特例有限会社から通常の株式会社への移行も司法書士業務の一つです。

特例有限会社の特徴・注意点

①特例有限会社には、株主総会と取締役を置くことが義務付けられています。このほかに定款の定めによって置くことができるのは監査役です。取締役会・監査役会・会計監査委人は置くことができず、監査等委員会や指名委員会を設置することもできません。

②特例有限会社の役員(取締役、監査役)には、定款で定めない限り、任期がありません。

③通常の株式会社では、代表取締役について住所が登記されますが、特例有限会社は、取締役や監査役について住所が登記されます。代表取締役の住所は登記されません。

④通常の株式会社では、代表取締役は必ず登記されますが、特例有限会社の場合は、会社を代表しない取締役がいる場合に限り登記されます。

⑤特例有限会社は、貸借対照表の公告義務がありません。
 
⑥特例有限会社の特別決議は、総株主の半数以上で、当該株主の議決権の4分の3以上とされています。通常の株式会社の特別決議の要件(議決権を行使することができる株主の過半数が出席し、出席した株主の3分の2以上の賛成)により格段に重くなっています。
 

通常の株式会社への移行

 特例有限会社は、定款を変更して、商号に株式会社という文字を入れた上で、登記をすることによって、株式会社に移行します。定款変更の決議は、上記⑥の特別決議です。
 この場合、定款変更の株主総会決議のから2週間以内に、有限会社については解散の登記を、株式会社については設立の登記をします。
 有限会社については、登記の事由は「商号変更による解散」、登記すべき事項は「年月日東京都…有限会社〇〇〇〇に商号変更し、移行したことにより解散」。
 株式会社については、登記の事由は「年月日商号変更による設立」、登記すべき事項は、通常の設立登記における事項一式を記載します。

 登録免許税は、解散については3万円。設立については、資本金の額×1000分の1.5(商号変更直前の資本金の額を超える部分は1000分の7)です。

添付書類

 株主総会議事録と(商号変更後の)定款を添付します。

 その他、商号変更時に役員変更が生じた場合は、役員変更の添付書類を用意します。

司法書士 不動産の相続登記

司法書士 不動産の相続登記

 司法書士の業務である不動産登記。不動産売買の決済の仕事を取るのは、銀行や不動産仲介とのルートが作れないと厳しいとこがあります。一方、相続登記は、単発の依頼になるものの、広告やサイト集客が可能な分野で、開業初期から収入源にできます。

相続人の確認

 配偶者は、常に相続人となります。

 第1順位(被相続人の子またはその代襲者)
 第2順位(被相続人の直系尊属)
 第3順位(兄弟姉妹とその代襲者)

 一般の方も、第1順位、第2順位までは、感覚的に相続人として理解していますが、第3順位の時は、配偶者側がそもそも相続人として認識していないこともあります。例えば、子のない老夫婦で、夫が亡くなった場合など、妻は自分のマンションと認識して相続登記をお願いしますと言ってくることもありますので、最初のヒアリングで、相続関係をしっかり確認します。

法定相続分

 配偶者と第1順位 配偶者2分の1、子2分の1
 配偶者と第2順位 配偶者3分の2、直系尊属3分の1
 配偶者と第3順位 配偶者4分の3、兄弟姉妹4分の1

費用

 登録免許税 固定資産税評価額 × 1000分の4

相続登記の必要書類

 登記原因証明情報、住所証明情報(相続人の住民票の写し)、代理権原証明情報(司法書士の委任状)です。

登記原因証明情報の内容

被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
 ・相続の開始を証明するため、死亡の事実が記載された戸籍の全部事項証明書
 ・正確には、相続人の確定のためのものなので、出生からでなくとも、子供を作る能力のある年齢(10歳~12歳)からのもので大丈夫です

住民用の除票の写し
 ・戸籍には住所は記載されないので、本籍地が記載された住民票の除票を添付して、戸籍の人物が、登記上の人物と同一人物であることを証明します
 ・住民票では登記上の住所の記載がない場合には、戸籍の附票を添付する

遺言書
 ・不動産を相続した人物を証明するため、遺言がある場合は遺言書を添付します

遺産分割協議書(印鑑証明書付)
 ・不動産を相続した人物を証明するため、遺産分割協議がなされた場合は遺産分割協議書を添付します。遺産分割協議書には各人の印鑑証明書を添付します。この印鑑証明書は作成後3ヶ月以内という制限はありません。なお、遺産分割協議書が公正証書によって作成されている場合は、公証人が確認済ですので、相続人全員が関与していることを証明する趣旨の、戸籍・除籍の謄本等の添付が不要になります。

相続放棄申述受理証明書
 ・不動産を相続した人物を証明するため、相続放棄をした人物がいれば、相続放棄申述受理証明書を添付します。

特別受益証明書(印鑑証明書付)
 ・不動産を相続した人物を証明するため、特別受益者がいる場合は、特別受益者が作成した特別受益証明書を添付します。特別受益証明書には印鑑証明書を添付します。この印鑑証明書は作成後3ヶ月以内という制限はありません。

相続欠格を証する書面
 ・欠格者の作成した書面(印鑑証明書付)、もしくは欠格事由の存在を証する確定判決の謄本を添付します。なお、相続欠格である旨は戸籍には記載されません。