相続手続き 遺留分って何?

相続手続き 遺留分って何?



遺留分とは

 遺留分とは、一定の相続人のために必ず留保されるべき、相続財産の割合をいいます。

 被相続人は、遺産を遺言でどのようなに処分することができるのですが、被相続人の妻子などの一定の相続人には遺留分があり、相続人の相続について最低限の期待が保護されることになっています。例えば、被相続人が、「愛人に全財産を相続させる」というような遺言をしても、妻子には最低限の取り分が行くようになっている、ということです。

 なお、遺留分権利者は、遺留分を行使しないことも可能です。

遺留分権利者

 遺留分権利者は、兄弟姉妹以外の相続人です(民法第1028条)。

 要するに、配偶者・直系卑属・直系尊属です。

代襲相続人にも遺留分がある

 遺留分権利者となり得る相続人(配偶者・直系卑属・直系尊属)が、相続欠格や廃除により相続する権利を失った場合は、その者は遺留分権利者にはなりません。しかし、これらの相続人の代襲相続人は、遺留分権利者なります。したがって、相続欠格および廃除された相続人の代襲相続人は、遺留分を有することになります。

 なお、相続放棄の場合には、その者ははじめから相続人でなかったことになり、代襲相続は発生せず、当然、遺留分もありません。

遺留分の割合

 
 民法第1028条は、遺留分の割合について、

①直系尊属のみが相続人である場合被相続人の財産の3分の1
②それ以外の場合被相続人の財産の2分の1

と定めています。

遺留分の放棄

 遺留分は、放棄することができます。遺留分の放棄は、相続開始前でも、相続開始後でも認められます。ただし、相続開始前の放棄は、家庭裁判所の許可を受けたときに限り有効になります(民法第1043条1項)。

 家庭裁判所は、放棄の許可をした後、事情の変化等によって、放棄を維持することが相当ではない場合、職権で許可審判を取り消すことや変更することができます(家事事件手続法78条)。

 相続開始後においては、家庭裁判所の許可を得ることなく、遺留分の放棄は自由にできます。

 なお、遺留分を放棄しても、相続人たる資格を失うわけではありません。遺留分の放棄は、相続の放棄ではないので、注意が必要です。

遺留分減殺請求権と行使の相手方

 遺留分権利者の遺留分が侵害された場合には、遺留分権利者またはその承継人は、遺留分を保全するのに必要な限度で、遺贈・贈与を失効させ、侵害された財産を取り戻すことができます(民法第1031条)。

 減殺の順序としては、贈与は、遺贈を減殺した後でなければ、減殺することができません(民法第1033条)。生前になされている贈与よりも、遺言でなされた遺贈の方を減殺したほうが、一般的に権利関係が複雑にならずに済むからです。

 遺留分を侵害し、減殺の対象となる遺贈が複数ある場合には、その目的の価額の割合に応じて減殺するのが原則です(民法第1034条)。ただし、遺言者が別段の意思表示を遺言にしたときは、その意思に従います(同条ただし書)。

 遺留分を侵害し、減殺の対象となる贈与が複数ある場合には、後の贈与から減殺をし、足りない場合に前の贈与を減殺します(民法1035条)。

 なお、遺留留分を侵害し、減殺の対象となる贈与が負担付贈与である場合には、その贈与の目的の価額から負担の価額を控除したものについて、減殺を請求することになります(民法第1038条)。

遺留分減殺請求権の行使方法

 遺留分減殺請求権は、裁判上の請求によらず、意思表示のみで行使できます。意思表示をしたものの、交渉がまとまらない場合には、通常訴訟を提起することになります。遺産分割と異なり、家庭裁判所の調停ではないので、注意が必要です。

遣留分減殺請求権行使の効果

 遺留分減殺請求権を行使した場合の効果としては、その形成権としての効力により、遺留分を侵害している遺贈や贈与は効力を失います。遺贈や贈与の目的物は、当然に遺留分権利者に帰属していたものとの扱いを受けます。

遺留分減殺請求権の消滅時効と除斥期間

 遺留分減殺請求権は、遺留分権利者が、相続の開始および減殺すべき贈与または遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは、時効によって消滅します。また、相続開始の時から10年を経過したときも同様です(民法第1042条)。

有限会社から株式会社への移行

有限会社から株式会社への移行



通常の株式会社への移行

 有限会社は、通常の株式会社に移行することができます。

株主総会の特別決議

 通常の株式会社への移行は、株主総会特別決議で、商号中に株式会社という文字を用いる定款の変更をします。

登記により効力が生ずる

 株主総会の特別決議後、本店の所在地において移行の登記をすることによって、その効力を生じます(整備法45条)。
 
 実務的には、2週間以内に、本店の所在地において、有限会社について解散の登記、商号の変更後の株式会社については設立の登記をします(整備法46条)。

 「商号の変更」という形式でありながら、解散と設立の登記をすることになります。これまでの有限会社の登記記録は閉鎖されます。

取締役・監査役の任期はどうなるのか?

 有限会社の取締役および監査役の任期の上限はありません(整備法18条)。しかし、通常の株式会社に移行すると、会社法332条または336条の制限が課されるため、任期が設定されます。

 株式会社への移行にともない、従来の取締役・監査役はどうなるのかというと、基本的には、従来の取締役・監査役が、そのまま移行することになります。しかし、従来の取締役・監査役が既に新たに課される任期の制限を超える期間在任しているときは、株式会社への移行と同時に、任期満了により退任することになります。

 有限会社から株式会社への移行の際に取締役・監査役が任期満了する場合には、移行を決議する株主総会において、移行後の取締役または監査役を予選しなければなりません。移行後の取締役・監査役を選任しない場合は、任期満了により退任した取締役または監査役が、これらの権利義務を有することとなります。権利義務取締役を前提とした移行による設立の登記は受理されますが、選任懈怠の状態になってしまいます。

取締役会設置会社になる場合の代表取締役の予選

 取締役会設置会社の代表取締役は、取締役会が決定します。

 特例有限会社に取締役会は設置できないので、移行前に取締役会により代表取締役を選定することはできません。このため、最初の代表取締役の選定は、移行後の株式会社の定款の附則にその氏名を記載するか、または定款に代表取締役を株主総会により選定する旨の定めを設け、移行を決議する株主総会においてこれを予選します。

取締役会を置かない株式会社になる場合の代表取締役の予選

 定款の定めに基づく取締役の互選により代表取締役を予選することは、(合理的な範囲であれば)差し支えありません。株主総会において取締役が全員再選されて取締役に変動を生じない場合には、移行を決議する株主総会で移行後の取締役を予選し、移行前の現在の取締役が移行後の代表取締役を予選することも、許容されています。

 他方、取締役の構成に変動が生じる場合、移行前の従来の取締役が、移行後の代表取締役を予選することはできません。この場合は、移行後の株式会社の定款の附則に最初の代表取締役の氏名を記載すしかありません。

 なお、定款に「代表取締役は取締役の互選により定める」旨の規定がある場合、定款を変更しない限り、株主総会により代表取締役を選任することはできないので、このような定款の規定がある有限会社では、移行後の最初の代表取締役を株主総会で選定するのではなく、定款に直接その氏名を記載すべきと考えられます。

登録免許税

 登録免許税は、解散については3万円。設立については、資本金の額×1000分の1.5(商号変更直前の資本金の額を超える部分は1000分の7)です。

嫡出否認・親子関係不存在・認知の訴え

嫡出否認・親子関係不存在・認知の訴え



嫡出子

 嫡出子とは、婚姻関係にある男女の間に生まれた子です。

 妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定されます(民法第772条1項)。また、婚姻成立の日から200日を経過した後または婚姻の解消もしくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定されます(民法第772条2項)。

 民法第772条とは別に、婚姻成立の日から200日以内に生まれた子は、夫の子と推定はされないものの、嫡出子として扱われます。

嫡出否認の訴え

 夫は、子が嫡出であることを否認することができます。この否認権は、子または親権を争う母に対する「嫡出否認の訴え」によって行います(民法第774条、同775条)。

 嫡出否認の訴えは、夫が子の出生を知った時から1年以内に提起しなければなりません(民法第777条)。この制限は厳格に守られますので、その後DNA鑑定等で親子関係が無いことが判明しても、法的な親子関係を切断することはできません。

 ただし、例外的に、形式上民法772条に該当する場合であっても、妻がその子を懐胎すべき時期に、既に事実上の離婚をして夫婦間の実態が無かったとか、夫が在監中であったなど、夫婦間で性的関係を持つ機会が無かったことが明らかである場合などは、次に述べる親子関係不存在確認の訴えにより、父子関係を争うことができるというのが、最高裁の判例です。

 なお、夫が、子の出生後において、その嫡出であることを承認したときは、その否認権を失います(民法第776条)。

親子関係不存在の訴え

 夫が、推定の及ばない子を自分の子ではないと主張するためには、親子関係不存在確認の訴えを提起できます。

 親子関係不存在確認の訴えは、確認の利益が認められる限り、いつでも提起できます。

 ところで、婚姻から201日目以降に生まれた子については、DNA鑑定により生物学的な証拠で親子関係がないと判明しても、嫡出子と推定されます。この場合、父は、夫が子の出生を知った時から1年を経過すると、法的な親子関係を切断することができなくなります。一方、婚姻から200日目に生まれた子については、嫡出子の推定はなされず、確認の利益がある限り、親子関係不存在確認の訴えを提起することができる、ということになります。

 巷間伝えられるところでは、元光GENJIの大沢樹生さんと、元女優の喜多嶋舞さんの婚姻期間中に生まれた18歳の長男について、離婚後の2015年に大沢氏が提起して認められたのはこの訴えです。大沢氏のケースでは、長男は、婚姻後ちょうど200日後に出生したと報道されていました。

 嫡出否認の訴えを提起するのは夫に限られますが、親子関係不存在確認は、確認の利益が認められる限り、訴でも提起できます。

父を定めることを目的とする訴え

 嫡出の推定が重複する子については、父を定めることを目的とする訴えを提起できます(民法第773条)。また、この場合、夫は、子の出生を知った時から1年以内であれば、嫡出否認の訴えを提起することもできます。

認知の訴え

 子、その直系卑属またはこれらの者の法定代理人は、認知の訴えを提起することができます(民法第787条)

 嫡出推定のされる子は、嫡出否認の訴えにより推定が破られない限り、認知の訴えを提起することができません。また、非嫡出子の母は、胎児を代理して認知の訴えを提起することはできません。
 
 提訴できる期間は、父が生存している間はいつでも可能です。また、父の死後も3年間は検察官を被告として提起する事ができます(民法第787条ただし書き)。



相続手続き 秘密証書遺言とは

相続手続き 秘密証書遺言とは



秘密証書遺言とは

 秘密証書遺言は、遺言者が作成した遺言書を、その内容を秘密にしたまま封印し、公証人と証人に遺言書の存在を申述して、公証人と証人が遺言書の存在を確認するという遺言です。
 
 公正証書遺言と違い、遺言の内容を他人に秘密にしたまま、遺言書の存在について公証を受けることにより、遺言が遺言者の真意に出たことを担保することができます。

秘密証書遣言のメリット・デメリット

 秘密証書遺言のメリットとしては、自筆証書遺言と違い、全文を自書する必要がなく、手書きの負担が無いことが考えられます。また、公証人が関与するため偽造や変造のリスクが少ないのもメリットです。公正証書遺言のように遺言の内容を他人に知られることが無く、秘密にしておくことができます。

 秘密証書遺言のデメリットとしては、遺言の内容は他人に知られないものの、遺言が存在することは明らかになるという点が考えられます。また、自筆証書遺言と違い費用がかかります。加えて、自筆証書遺言と同様に家庭裁判所の検認手続きが必要ですから、遺族にこの手続き負担がかかります。

秘密証書遺言の要件

 秘密証言遺言の方式については、次の要件があります(民法第970条)。
 
①遺言者が、その証書に署名し、押印すること。
 自筆証書遺言と違い、ワープロやパソコンで作成してプリンタで印刷してもかまいません。

②遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること
 口授については、「口がきけない者」は通訳人の通訳または封紙に自書することで代えることができます(民法第972条1項)。

③遺言者が、公証人1人および証人2人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨ならびにその筆者の氏名および住所を申述すること
 「口がきけない者」が通訳人の通訳によって申述したときは、公証人はその旨を封紙に記載しなければなりません(民法第972条2項)。

④公証人が、その証書を提出した日付および遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者および証人とともにこれに署名し、押印すること。

証人になれない者(欠格者)

 次に該当する者は、秘密証書遺言の証人になることができません。

①未成年者
②推定相続人および受遣者ならびにこれらの配偶者および直系血族
③公証人の配偶者、四親等以内の親族、書記および使用人

 これら欠格者が証人として立ち会った秘密証書遺言は、無効となります(民法第974条)。

検認手続

 秘密証書遺言は公証人がかかわる手続きですが、家庭裁判所の検認手続が必要です。公正証書による遺言を除き、遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、当該遺言書を家庭裁判所へ提出して検認を請求しなければならないことになっています(民法第1004条1項、同2項)。

 封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人またはその代理人の立会いがなければ、開封することができません(民法第1004条3項)。検認を受けずに遺言の執行に着手した者や、家庭裁判所以外において遺言書を開封した者には、5万円以下の過料が課せられます(民法第1005条)。

 検認手続は、相続人が家庭裁判所へ検認の申立を行うことで開始します。申立時に、遺言者の出生時から死亡時までの全ての戸籍謄本等、相続人全員の戸籍謄本などを添付します。

 家庭裁判所が検認期日を定めて、申立人・相続人及び利害関係人等に呼出状を通知します。

 検認期日には、審判官(裁判官)が遺言書を読み上げ、家庭裁判所書記官が遺言書検認調書を作成し、検認済みの認印を押した遺言書を、申立人に返還します。

相続手続き 自筆証書遺言とは
相続手続き 公正証書遺言とは 
相続手続き 秘密証書遺言とは 



相続手続き 公正証書遺言とは

相続手続き 公正証書遺言とは



公正証書遺言とは

 公正証書遺言は、遺言者が、公証人に、遺言の内容を口頭で伝え、公証人が公正証書の形式で作成する遺言です(民法第969条)。

公正証書遺言のメリットとデメリット

 公正証書遺言のメリットは、自筆証書遺言に比べて、偽造や変造がなされる可能性がほとんどないことにあります。専門家である公証人が作成することから、遺言の要件に欠けて無効になるということも、ほぼありません。また、家庭裁判所の検認も必要ありませんので、遺族の負担が少なくて済みます。

 公正証書遺言のデメリットは、自筆証書遺言と違って費用がかかることです。また、証人2名を確保する必要があり、遺言が他人に知られことになります。

公正証書遺言の要件

 公正証書遺言は、

①証人2人以上の立会があること
②遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること
③公証人が、遺言者の口授を筆記し、これを遺言者および証人に読み聞かせ、または閲覧させること
④遺言者および証人が、筆記が正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。ただし、遺言者が署名できない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができます。
⑤公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従ってつくったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと

という方式に従って作成されなければなりません(民法第969条)。

証人になれない者(欠格者)

 次に該当する者は、公正証書遺言の証人になることができません。

①未成年者
②推定相続人および受遣者ならびにこれらの配偶者および直系血族
③公証人の配偶者、四親等以内の親族、書記および使用人

これら欠格者が証人として立ち会った公正証書遺言は、無効となります(民法第974条)。

証人の立ち会い

 証人は、公正証書遺言作成手続の、最初から最後まで立ち会う必要があります。
 遺言者の公証人に対する口授だけでなく、公証人が読み聞かせる時も出席して、話を聞いていなければなりません。

遺言者の口授

 一般的には、公正証書遺言作成の際、本人が、公証人に遺言内容を記載した書面を提出します。公証人は、これをもとに公正証書遺言の原稿を作成し、作成期日に、その内容を遺言者に確認する方法が取られています。

 口頭で遺言内容を伝えるというのは「口授」のイメージからは外れる点もありますが、判例は、全体として公正証書遺言の方式を踏まえていれば、その遺言は有効であるとしています(最判平成16年6月8日)。

遺言者および証人の署名押印

 遺言者と証人は、公証人が作成した公正証書遺言書案を確認し、各自署名押印をします。
 印鑑は、実印であることは求められていません。

公証人の署名押印

 口がきけない者が公正証書によって遺言をする場合には、「口授」の代わりに、通訳人の通訳または自書により、公正証書遺言をすることができます。

 また、耳が聞こえない者である場合には、公証人は、「読み聞かせ」の代わりに、通訳人の通訳により遺言者又は証人に伝えることができます。

相続手続き 自筆証書遺言とは
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現物出資と発起人・設立時取締役の責任

現物出資と発起人・設立時取締役の責任



発起人・設立時取締役には責任がある

 発起設立において、株式会社の成立の時の蹴る現物出資財産等の価額が、当該現物出資財産等について定款に記載され、または記録された価額に著しく不足するときは、発起人及び設立時取締役は、株式会社に対して「連帯して」不足額を支払う義務を負います(会社法52条1項)

 軽々しく、発起人に名を連ねると、連帯して責任を問われる可能性があるので、注意が必要です。

発起人・設立時取締役の責任は免責される場合がある

 発起設立の場合、現物出資事項等について検査役の調査を経た場合は、上記の責任を負いません。
 
 同じく発起設立の場合、発起人または設立時取締役がその職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明した場合には、発起人及び設立時取締役は、不足額の支払い義務を負いません。ただし、免責される発起人は、現物出資財産を給付した者または財産の譲渡人以外に限られます(会社法52条2項)。

募集設立の場合はまた違う

 募集設立の場合においては、発起人及び設立時取締役は、その職務を行うことについて注意を怠らなかったことを証明しても、不足額の支払い義務を免れることはできません(会社法103条1項、同57条1項、52条2項)。

 発起設立の場合よりも、厳しい責任を負うことになります。

相続手続き 自筆証書遺言とは

相続手続き 自筆証書遺言とは



自筆証書遺言とは

 自筆証書遺言とは、遺言者が遺言の全文、日付、及び氏名を自署して、これに押印してする遺言です(民法968条1項)。

自筆証書遺言のメリットとデメリット

 自筆証書遺言のメリットとしては、本人に自筆する能力さえあればよく、公正証書遺言等と比べて、費用がかからないのが利点があります。

 自筆証書遺言のデメリットとしては、自筆証書遺言は、要件が厳格で、不備があると無効とされる可能性があり、偽造や変造される可能性もあり、家裁の検認を必要とするというのが不利な点です。

自筆証書遺言の要件

 民法第968条1項は、「自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない」、と定めています。

 つまり、自筆証言遺言は、
 
 ①全文を自書
 ②日付を自書
 ③氏名を自書
 ④押印

の要件を満たす必要があります。

自書

 自書、全文を実際に自分で書くという意味です。パソコンで作成するわけにはいきません。
 筆跡によって、本人が書いたものであることを判定できる余地を確保する必要があるからです。
 自筆証書遺言は、証人や立会人の立会を要しない簡易な方式の遺言ですが、その分偽造や変造の危険が大きいので、裁判になったときに、自筆の要件は厳格に解釈されます。
 なお、病気や事故で筆記について他人の補助を要することとなった場合について、最高裁は、いわゆる添え手による自筆証書遺言も有効であるとしています。ただし、添え手はあくまでも補助にとどまるものであることを要します。

押印

 実印でなくても大丈夫ですが、実印が望ましいと考えられます。拇印でも問題ありません。

自筆証書遺言の変更

 民法第968条2項は、「自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。」と定めています。
 

検認手続

 公正証書による遺言を除き、遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、当該遺言書を家庭裁判所へ提出して検認を請求しなければならない(民法第1004条1項、同2項)、とされています。

 封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができません(民法第1004条3項)。検認を受けずに遺言の執行に着手した者や、家庭裁判所以外において遺言書を開封した者には、5万円以下の過料が課せられます(民法第1005条)。

 検認手続は、自筆証書遺言書等の保管者または相続人が家庭裁判所へ検認の申立を行うことで開始します。申立時に、遺言者の出生時から死亡時までの全ての戸籍謄本等、相続人全員の戸籍謄本などを添付します。

 家庭裁判所が検認期日を定めて、申立人・相続人及び利害関係人等に呼出状を通知します。

 検認期日には、審判官(裁判官)が遺言書を読み上げ、家庭裁判所書記官が遺言書検認調書を作成し、検認済みの認印を押した遺言書を、申立人に返還します。

参考

 自筆証書遺言は、専門家はあまりすすめないのが通常です。

 

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民法改正 不動産賃貸借

民法改正 不動産賃貸借

民法改正 いつから

 「民法の大改正」という話が耳にはいるようになってから、ながい期間が過ぎました。

 この報道に、中学生の時に接した人は、すっかり社会人になり、施行がこれからと知り「いまごろか」と思うのではないでしょうか。

 いよいよ、改正民法が、2017年(平成29年)6月に公布され、改正された民法が適用される日が近づいてきました。
 
 施行日は、2020年(平成32年)4月1日から、ということになっています。
 

改正範囲は幅広い

 新しい民法の改正内容は幅広く、

 ・保証
 ・消滅時効
 ・瑕疵担保責任
 ・定型約款
 ・法定利率
 ・不動産賃貸借契約における敷金の返還や原状回復義務

など、生活ビジネスに影響がありそうな様々な分野が改正されています。

敷金が明文化された

 これまで明文規定がなかった敷金については、裁判例の集積などから解釈がなされていましたが、法律で明文化され分かりやすくなりました。

 敷金は、「いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう」と定義されています。
 また、その返還時期については、賃貸借が終了しかつ明け渡しが完了した時とされ、これまでの判例の考え方が明文化されました。

原状回復義務が明文化された

 賃貸借契約が終了したとき、賃借人が負う原状回復の内容については、民法上の規定はありませんでした。裁判例の積み重ねにより解釈がなされていましたが、民法で明文化されてわかりやすくなりました。改正民法では、「賃借物に損傷が生じた場合は、原則として賃借人は原状回復義務を負うものとし、通常損耗や経年変化については原状回復義務を負わないと定められています。家具の設置による床の凹みや、テレビや冷蔵庫の設置により生じる壁の黒ずみなどは、通常損耗にあたります。

賃貸不動産の譲渡されたときの取り扱い

 これまで、裁判例などから、賃貸建物の所有者が変わった場合、特段の事情のない限り、賃貸人の立場も移転するとされてきました。
 改正民法では、この考えを引き継ぎ、建物の所有権が譲渡されると、原則として、賃貸人たる地位も移転することとしました。ただし、賃貸人の地位を前所有者に留保するとの合意があり、不動産を譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意がされた場合は、賃貸人の地位は移転しない、という形で明文化されています。

賃貸人が修繕義務を負わない場合

賃貸人の修繕義務を定めた民法606条第1項に、「ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要になったときは、この限りでない。」との文言が追加されました。
このただし書により、修繕を要する場合でも、賃借人に故意や過失がある場合には、賃貸人が修繕義務を負わないことが明確になります。

賃貸借の存続期間

 これまで賃貸借契約の最長期間は20年間でしたが、この最長期間が50年間に延長されています。
 もっとも、これまでも、借地借家法により、建物賃貸借については賃貸借期間の上限規制は無いものとされており、建物所有目的の土地賃貸借についても原則として賃貸借期間の上限はありませんでした。この改正の影響があるのは、借地借家法の適用のない土地賃貸借、例えばゴルフ場やソーラーパネルなどに関する土地賃貸借になります。
 

スピード違反 レーダー式測定装置

スピード違反 レーダー式測定装置

 自動車・バイクの、速度違反を取り締まる、いわゆる「ネズミ捕り」。
 
 警察の日々の取締りによる存在感のおかげで、無謀な暴走車が減り、我々が安全な交通ができるのだと思う一方、本当に交通安全を願うなら、コソコソ隠れないで堂々とやったほうが、より抑止効果があるのではないか?、とも思ってしまいます。

 ところで、ねずみ捕りにかかった後、「そんなに速度出ていたかな?どうもおかしいのでは」、と思う人は多いようです。

装置と原理

 
 写真をみると、正式には、「レーダー式車両走行装置測定装置」となっていますね。

 装置の原理は、「電波のドップラ現象を利用して道路を走行中の自動車等の速度を測定する」というものです。

 走行中の自動車にマイクロ波を照射し、反射した電波の周波数から速度を計算しています。

 その計算結果が、下の装置に表示されます。

 反射した電波の周波数などのデータは、装置の中に保存されないそうです。
 このため、裁判になった時に、「しかるべき機関で解析してもらうから、計測時の周波数データを出してください」と言っても、警察は「そもそも存在しないので出せない」、と回答します。すべてがこの装置のなかで処理され、表示装置に速度として数値化されたものが唯一の証拠、すべてはブラックボックスの中です。

 とはいえ、原理としては誤測定はほとんど無いということにされており、仮に裁判になっても警察やメーカーのそのような証言を前提にして、話が進みます。

 こちら側は、原理自体は間違いないとして、計測結果が「おかしい」という線で主張するしかありません。

 裁判例を参考にして、現場で確認しておくべき点を見ておきましょう。
 

①設置ミスはありませんか?

 そもそも装置の設置をミスしていれば、当然ながら、誤った数値が表示されます。

 設置にあたっては、装置と道路の角度は要確認です。

 測定装置の上部に分度器のような角度を合わせる部品がついており、担当官はそれを見ながらマニュアルに従って道路に設置して角度を調整しますので、誤った速度が計測されたときは、すぐにこの装置自体の写真を撮らせてもらいましょう。
 
 そのうえで、現場で担当官にどのように設置されていれば適切なのかを確認し、その場で正しい角度に設置されているかを確認しましょう。ひょっとしたら、朝設置した時は正常でも、その後何かの衝撃でズレている可能性は十分あり得ます。

 もし、適切な設置方法を説明しない意地悪な警察官なら、後日情報公開法に基づく請求をして警察に情報開示を求めます。

 何れにせよ、設置状態の写真を、上から、左右から、いろいろな角度から、残しておくことが大切です。

②メンテナンスはしていますか?

 
 機械は当然、故障するものです。

 メンテナンス業者による点検が、年に何回行われており、最新の点検日はいつかを確認しましょう。

 メンテナンスが1年に一度であれば、すでに前回のメンテナンスから、12カ月経過しているかもしれません。

 教えてもらえなかったら、情報公開法に基づく請求をする必要があります。

③当日の動作確認はしましたか?

 故障により、動作に異常が発生する場合はあり得ます。

 ①当日、電源投入時の内部動作チェックや音叉点検をしたか?

 ②試験測定による動作確認をしたか?
 
を、確認しましょう。
 
 裁判になると、警察側は、このような動作点検をしたことをもって、数値が適正であることの証拠のひとつとして主張します。

 逆に、こちら側は、その場で、これらの点検やチェックの有無や、現場にいるどの担当官が確認したのか、一人で行ったのか、二人で行ったのかを細かく確認して、言質をとっておいたほうがよいでしょう。
 
 実際、3名で取り締まりをしていても、計測する担当官が一人で設置やチェックを行い、残りの2名はこの装置の設置方法も操作法も詳細を知らず、1名は違反者に切符を切るための事務処理の準備を行い、1名は誘導作業をするための準備をしていたりという状態で、ダブルチェックが働いてないことが多いようです。

 試験測定はそもそもしていないこともあるようですから、していないならていないと、その場で言質をもらっておいたほうが良いでしょう。

おわりに

 
 ネズミ捕りに会った後で、上のような確認を警察官にするのは、何か騒ぎ立てるクレーマーのような、嫌な気分になりますね…。

 しかし、後に訴訟になった場合に、警察は、裁判所に、上記のような設置・確認をしっかりやりましたと主張して、容赦なく取締りの適正さをアピールしてきます。

 その結果、こちら側には何の証拠もないので、裁判所の判決文は、

 「速度違反取締りを開始する前に,音叉テストを実施するとともに,視準器により測定地点を確認した上,実際に走行中の車両を試験測定」

 「設置も,測定者や補助者により確実に行われている」

 「本件の測定者たる□□□□は,測定誤りを防止するために,本件測定器の使用方法につき,電波発射を手動発射に設定し,測定範囲に測定対象以外の車両がない場合のみに測定する,ホールドを手動に設定し,測定後に再度測定に誤りがないことを確認した上で確定させるなど,より確実な測定を行っており,測定された結果に誤りはない。」

などと、一方的に書かれて終わります。

 納得がいかない場合は、その場で装置の設置方法、装置の設定、点検や操作の適正さを確認し、設置状況については後日確認するために写真を撮影しておくのが重要ですね。

 なお、職務執行中の警察官に肖像権はありませんが、警察官の顔が入るように撮影すると怒り出すこともあります。よほどの美人警官ならともかく、おじさんたちの顔を不必要に撮影をして、ことを荒立てるのは疲れるし無駄ですから、やめておきましょう。手早く装置のみ撮影する旨を伝えてから、友好的に装置の設置状況を撮影することを目指したほうが得策です。

 交通課の警察官は、過度に威張る傾向があり、スムーズにいかないこともありますが、彼らもまた、やましいところがなければ、素直に、撮影を許し、設置の適正さを説明して、市民の理解を得るように努めるべきですね。

 なお、速度超過に心あたりがある場合は、時間の無駄ですので、素直に反省しましょう。

民法改正 時効が変わる

民法改正 時効が変わる

民法改正 いつから

 「民法の大改正」という話が耳にはいるようになってから、ながい期間が過ぎました。

 この報道に、中学生の時に接した人は、すっかり社会人になり、施行がこれからと知り「いまごろか」と思うのではないでしょうか。

 いよいよ、改正民法が、2017年(平成29年)6月に公布され、改正された民法が適用される日が近づいてきました。
 
 施行日は、2020年(平成32年)4月1日から、ということになっています。
 

改正範囲は幅広い

 新しい民法の改正内容は幅広く、

 ・保証
 ・消滅時効
 ・瑕疵担保責任
 ・定型約款
 ・法定利率
 ・不動産賃貸借契約における敷金の返還や原状回復義務

など、生活ビジネスに影響がありそうな様々な分野が改正されています。

 

時効の変更点

 消滅時効は、一定の期間、その権利を行使しないと、その権利が消滅して請求をすることができなくなる制度です。

 債権の種類によって細かな規定が用意されていましたが、扱いが統一される方向での改正がなされています。

①短期消滅時効がなくなる

 旧法(現行法)では、債権の消滅時効の期間について、原則的には10年としながら、医療機関の診療費は3年、工事代金については3年、飲食代金については1年など、業種により一部の債権について短期で消滅時効にかかることが規定されていました。

 この短期消滅時効は廃止されます。

②消滅時効の起算点が変わる
 
 旧法(現行法)の166条1項では、消滅時効は、「権利を行使することができる時」を起算点として進行し、10年で完成するものとされていました。
 
 改正民法では、「権利を行使することができる時から10年」に加えて、「債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間」で消滅時効にかかる、ということになりました。

 ①②の改正の結果、改正民法では、債権は、権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき、または、権利を行使することができる時から10年間行使しないとき、どちらか一方が早く到来した時に消滅時効が完成し、債務者が援用できるようになります。

③不法行為による損害賠償請求権の行使制限

 旧法(現行法)では、不法行為による損害賠償請求権を行使できるのは、「損害および加害者を知った時」から3年、「不法行為の時から20年」と規定されていました。

 この不法行為の時から20年は、除斥期間として解釈されていましたが、時効期間であると明示されました。この改正により、時効の中断が可能になる、除斥期間のように期間を過ぎると権利を失うというわけではなくなる、などの違いが生じます。

④生命・身体の侵害による損害賠償請求権

 生命・身体の侵害による損害賠償請求権については、ほかの損害賠償請求権とは異なる扱いをすることになりました。
 
 例えば、交通事故による人身損害の損害賠償請求権などは、現在は3年で消滅時効にかかりますが、5年に延長されることになり、被害者の権利の保護される方向に働きます。