高橋洋一に学ぶ OECD報告は財務省の罠



OECDの対日経済審査報告書

 2019年4月15日、OECD( 経済協力開発機構)が「対日経済審査報告書」を公表しました。

 この報告書には、プライマリーバランスを黒字化するためには消費税率を20%から26%まで引き上げる必要があるとの試算が示され、さらなる増税や歳出削減に向けて具体的な計画を作成し実行する必要があるとの提言がなされています。

 同日、OECDのアンヘル・グリア事務総長は、日本記者クラブで記者会見を行い、同報告書をもとに、「本年10月に日本で予定されている消費増税は不可欠だ」、などと述べました。

OECD報告は財務省の布石

 高橋洋一氏は、OECDが発表した対日審査報告書は、消費税増税のための、財務省の布石であると分析を述べています。

「『これは財務省の布石だな』と感じたのは、4月15日に公表されたOECD(経済協力開発機構)の対日審査報告書である。同機構のグリア事務総長が日本で記者会見を行い、日本の財政健全化のためには、消費増税10%どころか、なんと26%までの引き上げが必要だと発言したものだ。」(現代ビジネス「ニュースの真相」)

報告書はOECDと財務省の合作

 高橋洋一氏は、OECDの対日審査報告書は、OECDと財務省の合作である、と指摘します。

「OECDの対日審査報告書は、日本政府、特に財務省の意向が色濃く反映されるからだ。というのは、対日審査報告書そのものが、OECDと日本政府(財務省)の合作であるし、財務省はOECDに有力な人物を派遣している。」(現代ビジネス「ニュースの真相」)

OECDと事務次長は元大蔵官僚

 高橋洋一氏は、OECDの事務次長は、玉木林太郎、河野正道のような、元財務(大蔵)官僚が就任していることを指摘します。
 
「たとえば2011年から16年までは、大蔵省に昭和51年に入省し、財務省財務官となった玉木林太郎氏がOECD事務次長を務めていた。その後任も、昭和53年大蔵省入省の河野正道氏が務めた。メディアでは、河野氏は金融庁出身と報じられているが、筆者からすれば旧大蔵省の官僚で、OECD事務次長のポストが大蔵省人事のひとつぐらいに扱われているように思える。」(現代ビジネス「ニュースの真相」)

消費増税26%は財務省の野望

 高橋洋一氏は、OECDの対日審査報告書の消費増税26%という結論は、実質的に財務省の意見であると解説します。

「それぐらい両者の関係は深いので、財務省の意向と真逆の報告がOECDから出るはずはない。筆者は、消費税26%は財務省の意見だと捉えている。」(現代ビジネス「ニュースの真相」)

田中秀臣氏も同様の指摘

 今回のOECD報告書が、実質的に財務省が関与するものであることについては、上武大学教授の経済学者田中秀臣氏も、同様の指摘をしています。

田中秀臣に学ぶ 消費税26%OECD報告



中野剛志に学ぶ デフレは労働者を苦しめる

中野剛志に学ぶ デフレは労働者を苦しめる



反インフレ政策は富裕層の希望

 中野剛志は、反インフレ政策の背景には、金融資産を有する階級の利益があるという、ジョン・スミシンの指摘を紹介します。

 インフレは貨幣価値が下落する現象であり、債権の価値が下がり、債務の負担は実質的に軽くなることから、金融資産を有する階級にとっては損失となり都合が良くない。デフレは、金融資産を有する階級を利するが、労働者階級は損をする。このため、金融資産を有する階級が支配する社会は、インフレを抑制する経済政策を目指すことになる、と解説します。

「ジョン・スミシンは、1980年代以降、反インフレ政策が顕著になった背景には、金融階級の利害があったと論じている。インフレは貨幣価値が下落する現象であるから、債権の価値が実質的に下がり、債務の負担は実質的に軽減される。したがって、インフレによって金融階級は損をするが、労働者階級は得をすることになる。反対に、デフレは債務者たる労働者階級を苦しめるが、債権者たる金融階級には有利に働く。したがって、もし政治が金融階級に支配されるようになるならば、経済政策は低インフレを最優先課題とすることになろう。」

1980年代以降の金融化と低インフレ政策

 中野剛志は、1980年代以降、先進各国の金融政策は低インフレ最優先の政策となり、歳出削減、財政健全化が目指されるようになった、と解説します。

「金融化が進み始めたのは1980年代以降のことであるが、それと並行して、先進各国の金融政策は低インフレを最優先とするものになり、財政政策についても、歳出削減など財政健全化が目指されるようになったのである。」

グローバリゼーションはデフレ圧力を発生させる

 中野剛志は、グローバリゼーションが、デフレ圧力を発生させることを指摘します。

「物価水準を抑制するための政策は、金融引き締めと緊縮財政だけではない。貿易の自由化や労働移動の自由化、特に移民の流入もまた、賃金や物価の上昇を抑える効果をもつ。グローバリゼーションは、全般的に強力なデフレ圧力を発生させるのである」

財政健全化は富裕層に恩恵を与える

 中野剛志は、財政健全化やグローバリゼーションはデフレ圧力を産み、一般国民の賃金水準の抑制や失業を発生させる。そして、一般国民の犠牲のもとに富裕層や金融機関に恩恵を与える政策であると解説します。

「財政健全化やグローバリゼーションはデフレ圧力を発生させて、一般国民に、賃金水準の抑制や失業と言った犠牲を強いる。しかし、富裕層や金融機関が保有する大量の債権の価値はむしろ上昇する。財政健全化やグローバリゼーションは、大多数の国民の利益を犠牲にして、一部の金融階級に恩恵を与えるのである。」

中野剛志に学ぶ MMT(現代貨幣理論)①
中野剛志に学ぶ MMT(現代貨幣理論)②
中野剛志に学ぶ MMT(現代貨幣理論)③
中野剛志に学ぶ MMT(現代貨幣理論)④
中野剛志に学ぶ 日本経済が成長しない理由
中野剛志に学ぶ デフレは労働者を苦しめる
中野剛志に学ぶ デフレを脱却する方法
中野剛志に学ぶ 新自由主義の問題点
中野剛志に学ぶお金の仕組み(通貨と経済成長)

高橋洋一に学ぶ 財務省は金利収入を隠す



政府には多額の金融資産がある

 高橋洋一氏は、政府の借金が1000兆円あるといっても、政府は資産も同程度あるのだから、資産を売って解決すればよいのではないかという考え方に対して、以下のような指摘をします。

 以下、引用は、いわんかな#22-2【財務省とメディアに誤魔化されるな!】での高橋氏の発言です。

「資産って、金融資産が多くて、金融資産ってどういうのかというと、貸付金と出資金なんですよ。で、どこに貸し付けて、どこに出資してるのっていったら、はっきりいって特殊法人って天下り法人だから。それいったら天下りできなくなるから、それでって話ですよ。」

政府は金融資産からの金利収入を予算に計上していない

 高橋洋一氏は、国債の利払いが財政を圧迫しているという考え方について、実際には、政府の金融資産から国債の利払い分と同程度の金利収入があるので問題は発生しないと解説します。

 加えて、金利収入があるのに、それを予算に計上しないから、日本の財政が危ないとか、利払いで大変だという議論が行われることになる、と指摘します。

「私は別に売れとも言ったことないわけ。あのね金融資産があってね、そこに貸付金と出資金があって、貸付金は実は国債と同じ金利が来るから、実は負債のほうで国債の借金の利払費をしてるんだけど、こっちの金融資産で金利収入が同じ額あるから、それはそれで売らなくてもまわるんですよ。まわるんだけどね、こっちの金利収入のほうは予算にのっけないから、だから大変だ大変だって言うんですよ。全部乗っけろってしか言いようがない。(中略)せめてこちらの金利収入は載っけろって。したら利払い費なんて全然大したことないのすぐバレる、分かるでしょ。」

金利収入を隠す会計テクニック

 高橋洋一氏は、政府の多額の金融資産からの金利収入を、予算に計上せず、会計上隠す手法として、子会社に準備金としてプールさせておく手法を解説します。

「けっこう簡単なんですよ金利収入を乗っけないで会計処理するのは。それ会計テクニックとしてあってですね、金利収入を載っけなくて、子会社の資産のほうに準備金をつくれば、載っかんなくて済むんですよ。だから金利収入払わないでずーっと子会社の資産だけふくらますんですよ。」

バランスシート(資産の部の確認)

 高橋洋一氏の説明を参考に、平成29年度の日本政府のバランスシート(借方)を、確認してみます。

 有価証券の118兆円は、多くが米国債ですから、金利が発生します。
 貸付金の112兆円は、地方公共団体や政策金融機関への長期・低利の貸付けですから、金利が発生します。
 運用寄託金の111兆円は、将来の年金給付のために積立てですから、運用利益が発生します。
 このほか、出資金74兆円は、日本郵政株式会社、株式会社日本政策金融公庫、日本電信電話株式会社、日本たばこ産業株式会社、各国際空港株式会社、各NEXCO、各国立大学等多岐に渡ります。日本郵政株式会社やNTT等の株式会社からは、株主として、配当金による収益があるものと考えられます。

 確かに、多額の金融資産と、金利収入・配当金等が存在することが確認できます。

高橋洋一に学ぶ 財務省は金利収入を隠す
高橋洋一に学ぶ 財務省と野田元総理
高橋洋一博士に学ぶ 日本の財政再建は完了
高橋洋一博士に学ぶ 高度経済成長の理由
高橋洋一博士に学ぶ 復興特別税の問題点
高橋洋一博士に学ぶ 消費増税反対論
高橋洋一博士に学ぶ 緊縮財政は良くない
高橋洋一博士に学ぶ「国債の真実」

三橋貴明に学ぶ 脱官僚主導の方法

三橋貴明に学ぶ 脱官僚主導の方法



財務省は政治家に海外に向けて消費増税を宣言させる

 
 2019年4月11日、麻生太郎財務大臣は、G20財務相・中央銀行総裁会議の場において、2019年10月1日に予定している消費税率10%への引き上げを表明しました。

 三橋貴明氏は、財務省が、G20の場などを利用して、政治家に消費税増税を宣言させて「国際公約」にする手法を批判しています。

「財務省が、国内の議論をろくに経ぬまま、野田首相に海外で『消費税を増税します』などと言わせて国際公約にしてしまうといったやり方は実に姑息です。」

「族議員」が排除され官僚主導になった

 三橋貴明氏は、官僚主導の原因として、専門知識を有し、政治主導の能力と専門知識を有する「族議員」が、改革の美名のもとに排除されたことを指摘します。族議員こそが、政治主導の証であったと解説します。
 確かに、平成のはじめころには、各分野に精通した「ドン」と呼ばれる大物政治家がいました。それらが、政治家の利権につながるものとして、族議員が排除されてしまい、専門性を有する政治家がいなくなり、官僚がすべてを決定するようになってしまいました。特に、与党経験のない民主党が政権を奪取した際には、菅直人と野田佳彦は、予算編成のために、財務省の言うことにすべて従う状態になってしまいました。

「菅直人政権・野田佳彦政権は、財務省が主導する財政再建、増税路線をひた走っています。そうなってしまった理由として、そもそも政治主導、官僚主導の定義自体を、多くの人々が勘違いしていることにあるのではないでしょうか。まず『族議員』という言葉がありますが、そもそも族議員の存在は、政治主導の前提であるはずです。国民から選ばれた議員が、特定省庁の管轄分野に関して政策決定権を持つ、それによって国民の負託に応える、これが族議員であるはずです。つまり族議員の存在そのものが、政治主導の証であるわけですね。」

「ところが『改革』の名の下に族議員が次々に排除され、今の日本は逆に完全な官僚主導になってしまった。それなのに表向きは『官主導を排し、政治主導を実現!』などと言っている。政治主導の根元を破壊しつつ、それを政治主導と呼んでいるわけですから、二重の意味でおかしいのです。」

 

デフレ下での消費増税は問題がある

 三橋貴明氏は、デフレ下での消費増税は、消費を減少させ、デフレを深刻化させる、と解説します。

「現在は財務省の路線に沿って、野田総理は増税路線に突き進もうとしています。しかし、デフレの日本で増税などしたら、ますます消費が冷え込み、デフレが深刻化するのは目に見えています。そういう意味では、現在の官僚組織で最も問題があるのは財務省といえるでしょう。」

中川昭一の酩酊会見は財務省の策謀

 三橋貴明は、中川昭一の酩酊会見は、中川昭一が、財務大臣として財務官僚と戦っていたことから、官僚に嵌められたと指摘しています。

「故・中川昭一財務大臣みたいに、明らかに陥れられたケースもありますよね。中川氏は麻生内閣の財務大臣として、もう無茶苦茶に財務省と喧嘩していた。結果、両脇に財務官僚がいる状態で、あの酩酊会見です。普通、大臣が会見に出られないような状況であれば、官僚が止めると思うのですが、あのときはそれがなかった。」

「中川財務大臣は、とにかく財務省と激しく対立していたんです。あの酩酊会見は、明らかに財務省の策謀ですよ。何しろ、横に財務官僚が2人いたわけですから、普通は止めるでしょう。しかもその2人のうち1人はIMF(国際通貨基金)の副専務理事に出世しています。」



宮崎哲弥に学ぶ 日本の経済議論の変遷



宮崎哲弥氏の変遷

 評論家の宮崎哲弥氏は、自身の経済言論の変遷を、このように説明しています。 
 
「私は、2000年代初頭まではかなり強硬な反リフレ論者で、ゴリゴリの構造改革派だったんですよ」

「ところが徐々にリフレ政策を見直すように」

「理由は、日銀が2001年3月から始めた量的緩和策と時間軸効果政策がかなり効いたからです。」、日銀の量的緩和はマネタリーベースは増加してもマネーサプライは増加しなかったという批判はあるが、「少なくともデフレの進行を止め。マイナスだったインフレ率をゼロ近辺まで引き上げることには成功した」。(「日本経済復活一番かんたんな方法」、光文社新書、2010)。

 評論家としては一貫性の喪失により信頼性を失いかねない危ういポジションチェンジでしたが、経済指標を見極め、過ちを認めて迅速に方向転換したことで、信頼を失うことなく生き残っています。

 宮崎氏の言論をたどると、構造改革路線から転換した、日本の経済論戦の歴史を学ぶことができそうです。

2001年5月の宮崎哲弥

 宮崎哲弥氏は、2001年5月ころは、日銀の金融緩和を強く否定する考えを持っていました。インフレにより貯蓄は目減りするし、国債暴落の可能性すら懸念しています。

「日銀の実質ゼロ金利復帰によって銀行預金の利子はまたしても雀の涙になってしまった。さらに日銀はインフレになるまでお札を刷り続けるそうだから、これから物価は上昇に転じる可能性が高い。となれば利子どころか貯蓄は目減りする。預金だってゼロリスクじゃない。銀行の国債保有残高は増加の一途で、万一、何かの拍子で国債が暴落したら大変なことになる。」(「1冊で1000冊読めるスーパー・ブックガイド」、新潮社、2006)

2001年9月の宮崎哲弥

 宮崎哲弥氏は、2001年9月、インフレ目標値の設定を求める声が増加していることを記述し、日銀が量的緩和を実施することを「垂れ流す」と批判的な書きぶりで表現しています。

「自民党内にもインフレ目標値の設定や調整インフレ政策を求める声が湧き上がっている。こうした批判を受けて日銀は八月十四日に日銀当座預金残高を六兆円程度に増やすことと長期国債の買い入れ増額を決めた。既にジャブジャブのところに、さらに一兆円を超えるお金を垂れ流す政策を採ったわけだ。」(「1冊で1000冊」)

「しかし、銀行筋やマクロ経済学者はまだまだ生温いという。興味深いのは、金融実務に精通しているエコノミストは量的緩和やインフレ政策に否定的なのに対し、マクロ経済学者は概して推進論に傾いていることだ。」(「1冊で…」)

2002年3月の宮崎哲弥

 宮崎哲弥氏は、2002年3月、再び、インフレターゲット論が高まっていることを紹介し、インフレでは弱者は救えないと、批判的な書きぶりをしていました。

「日本銀行にインフレターゲットを設定させよという政治的圧力が高まっている。主に圧力をかけているのは与党の一部、財務省など。インフレターゲット政策の目的は、金融政策で意図的に物価を吊り上げること。」(「1冊で…」)

「まずこの政策の提唱者、ポール・クルーグマンの『恐慌の罠』(中央公論新社)を読む。国民が『物価はこれからも下がり続ける』と予測し続ける限り、デフレ脱却は望み得ない。だから日銀が決然たる意志をもってお金をジャブジャブ供給し『これから物価が上がる!』に予測を反転させるべきとクルーグマンはいう。さすれば貯蓄は将来的に損になるので、人々の消費や投資への欲望に火が付く、めでたくデフレ脱却、インフレ成就になる、というわけ。」(「1冊で…」)

 この後、岩田規久男の「デフレの経済学」等を紹介し、「だけどインフレで弱者が救える?」とのコメントを添えます。

 さらには、加藤出「日銀は死んだのか?」を紹介し、インフレ政策の手本とされる戦前の高橋財政は、インフレ景気で潤ったのは一部の産業家ならびに金融業者で、失業は緩和されたが、一般労働者の実質賃金は下落し続け、多くの人々は物価高に喘いだという加藤の論を丁寧に紹介しています。

2002年7月の宮崎哲弥

 
 宮崎哲弥氏は、インフレターゲットを、消極的な趣旨で、認容する言論をはじめます。

「インフレターゲットにはちょっと首をかしげる部分もある。理屈はわかるんですよ。先ほど林さんが言われたように、なんの財政出動も必要ないわけですし、成功すればまさに打ち出の小槌のようなものだと思うんです。しかし現状では日銀に対して、一般国民がそんなに信認してないじゃないですか。それで『消費者物価指数をどこそこまで上げる』と発表して、はたして本当に国民が動くか、物価が上がるかが、まず疑問です。」(「希望のシナリオ」、PHP研究所、2003)

「欧米の経済学者っていうのは『インフレターゲットをやるんだったら、必ず不良債権処理もちゃんとやります。経営者責任も追及します』って両論を主張するんですよ。日本の経済評論家、エコノミストと称される人たちはたいがい片方を大声で言って、片方はちょっとしか言わない。だから私は、これからまたデフレの二番底が来るならば、そして本当に効くんだったら、あるいは制御できるんだったら、二%くらいのインフレターゲットも政策的なオプションとしてあってもいいと思うんです。ただ、同時にやらなきゃいけないこともいっぱいあるということだと思いますね。」(「希望のシナリオ」)

2003年2月の宮崎哲弥

 宮崎哲弥氏は、再び、インフレターゲットを、消極的に認容する発言をしています。

「誰も確言できないでしよ。ただ、マクロ経済学者は蛮勇にも”2003年デフレ終息”を予測していますね。理由は、”インフレ・ターゲットの導入”です。」(「ニッポン問題」、インフォバーン、2003)

「インタゲを導入しそうなので、『めでたくデフレは終息』ってわけです。本当かなあ(笑)。まあ、クルーグマンとかが言ってるように、デフレが純然たる貨幣的現象ならば、そうなるでしょう。でも、果たしてそうかな。私にはよく分からない(笑)。いずれにしても、やってみなくちゃ決着しないので、最近は『インタゲ、やればぁ』と、立場を変えました(笑)。もちろん、”不良債権抜本処理”と”銀行経営者の責任追及”が前提ですけどね。」(「ニッポン問題」)

2006年3月の宮崎哲弥

 宮崎哲弥氏は、206年3月、日銀の量的緩和解除について否定的評価をする論を多数紹介し、「日銀のカルマ」と題しています。ここにおいて、路線を大きく変更しました。

「三月九日、日本銀行は金融の量的緩和策の解除に踏み切った。新聞やテレビは、二○○一年三月にデフレ克服のために導入された『異例の政策』から脱し、ようやく正常化への緒に就いたと報じている。だが、酒井良清、榊原健一、鹿野嘉昭(A)『金融政策」(改訂版有斐閣アルマ)によれば、量的緩和策は非伝統的ではあるけれども、決して異例でも異常でもない。日銀が金融市場に供給する資金量(ベースマネー)を増やす政策は、デフレが貨幣的現象である限り、景気の下支えになったはずである。それどころか、リフレ派の経済学者にいわせると量的緩和でも生温い。直ちにインフレ・ターゲットを導入せよ、ということになる。」(「1冊で…」)

2006年7月6日の宮崎哲弥

 宮崎哲弥氏は、2006年7月には、日銀のゼロ金利解除を強く批判し、直接的に金融緩和政策を提言するようになります。

「福井俊彦日本銀行総裁が、インサイダー取引で摘発を受けた村上ファンドに1000万円を出資し、その利益が一1473万円にも膨らんでいたことが明らかになった。これに先立って福井は「(運用益は)大した金額ではない」と国会で発言している。金銭感覚が一般とは異なるようだ。何せ日銀総裁は年収3578万円の高給取りだ。」(「1冊で…」)

「福井は早晩、ゼロ金利解除を強行するだろう。」「ゼロ金利解除は『日銀の本能』なのだ。そして速水優前総裁はその『本能』に従い、デフレを増悪させた。日銀は過ちを繰り返すしか能がないのか。」(「1冊で…」)



田中秀臣に学ぶ 消費税26%OECD報告



OECDの対日経済審査報告書

 2019年4月15日、OECD( 経済協力開発機構)が「対日経済審査報告書」を公表しました。

 この報告書には、プライマリーバランスを黒字化するためには消費税率を20%から26%まで引き上げる必要があるとの試算が示され、さらなる増税や歳出削減に向けて具体的な計画を作成し実行する必要があるとの提言がなされています。

 同日、OECDのアンヘル・グリア事務総長は、日本記者クラブで記者会見を行い、同報告書をもとに、「本年10月に日本で予定されている消費増税は不可欠だ」、などと述べました。

 この件につき、上武大学教授の経済学者田中秀臣氏は、OECDの実態を以下のように解説しています。

 引用はすべて、2019年4月16日(火曜日)の「おはよう寺ちゃん活動中」(文化放送)における田中氏の発言です。

OECDの事務次長は財務(大蔵)官僚

 田中秀臣氏は、OECDの事務次長(河野正道)には、財務省出身者が就任していることを解説します。

「そうそうそう、あのーOECDの事務総長が来て、日本記者クラブで会見したんですよ。そこで対日経済審査書だったかな、あの正式な名称は忘れましたけども、そういったものに基づいて、将来的にはなんと消費増税26%もしなきゃいけない、と言ってるわけですよ。その理由は、『人口減少ガー』とか、『財政再建ガー』とかいうのが理由なんですが。」

「そもそもOECD、ここは民主党政権の時代に、財務省の人が、事務総長の下に実行部隊になるその元締めの事務次長を財務省出身者がはじめて握っちゃったんですよ。いまはその人が6年か5年くらいつとめた後に、また財務省出身者。金融庁の出身ということを日本のメディアは強調するんですが、経歴みたらもともとは本属は財務省なんですね。つまり、財務省がついにOECD握っちゃったわけですよ。で、当然、日本関係の報告書は全部財務省の作文ですよ。」

OECD報告書は財務省の自作自演の「外圧」

 田中秀臣氏は、財務省が外圧を演出して、自らの政策を実現しようとすることを、解説します。

「それを、事務総長がわざわざ日本にきて、『外国からの意見である』という形で報道するんですね。日本記者クラブにいる、さきほど言ったね、すべて官僚側の言ってることをそのまんま載せるようなメディアの人たち、日経新聞であるとか朝日新聞であるとか(中略)そのまんま流すわけですよ。外圧として。外圧じゃないですよね。財務省の自作自演ですからこれ。」

IMFも利用してきた

 田中秀臣氏は、財務省がIMFに職員を出向させて、これまで本件と同様の手法を繰り返していたところ、今回はOECDが利用されたことについて、以下のように解説します。

「IMFはね、なんていいますかね、他にもスタッフがいて、その人たちはですね、アメリカとかイギリスにも隠れ借金があるということを言いたくて、いろんなことを調査したら、あら日本のガードが甘くなっちゃって、つい日本の財務省からすると発狂するような、『日本の借金がありませんでした』っていう報告を、去年の年末に出しちゃったんですよ。」「最近は財務省のほうから(IMFを使って)財政再建のために消費増税やるっていう話がしずらくなっちゃたんですね。でも、OECDはIMFとはまた別の機関なんで、今度はOECDを使って、また財政危機ガ-でやってきましたね。」

高橋洋一に学ぶ OECD報告は財務省の罠
田中秀臣に学ぶ 消費税26%OECD報告

中野剛志に学ぶ MMT(現代貨幣理論)③

中野剛志に学ぶ MMT(現代貨幣理論)③



自国建て通貨の返済不能はあり得ない

 中野剛志氏は、自国建て通貨の国債が返済不能になった例は、政治的理由で返済を拒否した例外を除いては、存在しない、と解説します。

「政府は企業とは異なり、通貨発行の権限を有する。したがって、自国通貨建てで国債の返済ができなくなることは、(実際、過去に政治的意志によって返済を拒否しない限り)理論的にあり得ないし、そのような実例もない。返済不能となった国債は、いずれも自国通貨建て以外のものであった。」

日本の財政破綻はあり得ない

 中野剛志氏は、日本政府の国債はほぼ円建てなので、日本政府が財政破綻する可能性はほぼ皆無と解説します。

「そして、日本政府の国債は、ほぼすべて円建てである。したがって、日本政府が財政破綻する可能性は、ほぼ皆無と言ってよい。」

注意すべきは過度なインフレ

 中野剛志氏は、財政赤字の制約として考慮すべきは、財政破綻ではなく、物価水準であり、過度のインフレが起きない限りにおいて財政に制約はなく、財政赤字が拡大しても問題ない、と解説します。

「財政支出は貨幣供給量を増加させるが、貨幣供給量が過剰となれば、過度のインフレが引き起こされる。したがって、財政赤字の制約として考慮すべきは、物価水準であるということになる。これを言い換えれば、過度のインフレが起きない限り、国会財政に制約はないのであり、財政赤字は拡大してよいということである。」

デフレ下では財政赤字を拡大させるべき

 中野剛志氏は、日本がデフレを脱却するためには、過度のインフレが起きない限り、財政赤字を拡大し続けなければならない、と解説します。

「日本は長くデフレーションに陥っており、デフレからの脱却が課題となっている。ということは、財政赤字は拡大できるというだけではなく、むしろ拡大しなければならないという結論になろう。」

中野剛志に学ぶ MMT(現代貨幣理論)①
中野剛志に学ぶ MMT(現代貨幣理論)②
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中野剛志に学ぶ MMT(現代貨幣理論)⑤
中野剛志に学ぶ 商品貨幣論と信用貨幣論
中野剛志に学ぶ 日本経済が成長しない理由
中野剛志に学ぶ デフレは労働者を苦しめる
中野剛志に学ぶ デフレを脱却する方法
中野剛志に学ぶ 新自由主義の問題点
中野剛志に学ぶお金の仕組み(通貨と経済成長)

中野剛志に学ぶ MMT(現代貨幣理論)②

中野剛志に学ぶ MMT(現代貨幣理論)②



通貨の供給には財政支出が不可欠

 中野剛志氏は、L・ランダル・レイのMMT(現代貨幣理論)は、国家財政に関する考え方について、コペルニクス的転回を迫るものであると述べます。そして、国家が通貨を流通させるには、政府がまず財政支出を行い民間部門に通貨を供給する必要がある、と指摘します。

「通貨は、国家が納税手段として受け取るものである。それゆえに、財・サービスの取引や貯蓄など、納税以外の手段としても流通する。このシステムにおいては、政府はまず財政支出を行って、民間部門に通貨を供給することになる。政府は、財政支出より前に税を徴収したり、国債を発行したりすることはできないのである。」

国の財政支出は税収以上である必要がある

 中野剛志氏は、通貨が取引手段として流通するためには、国家は税収以上の支出を行う必要がある、と解説します。

「民間において通貨が納税以外の手段として使用されるためには、国家は税収以上の支出を行う必要がある。もし国家が通貨をすべて租税によって回収してしまったら、取引や貯蓄の手段として流通する分の通貨がなくなってしまうであろう。」

国家財政は赤字運営が正常

 中野剛志氏は、L・ランダル・レイの現代貨幣理論から引用し、国家財政の正常なケースは、政府の財政が黒字となることや、プライマリーバランスが均衡することではなく、政府が赤字財政を運営していることである、と解説します。赤字財政こそ、正常なな状態ということになります。

「したがって、『正常な』ケースは、政府が『赤字財政』を運営していること、すなわち、税によって徴収する以上の通貨を供給していることである」

「赤字財政は、不健全ではなく、むしろ正常な状態である。」

中野剛志に学ぶ MMT(現代貨幣理論)①
中野剛志に学ぶ MMT(現代貨幣理論)②
中野剛志に学ぶ MMT(現代貨幣理論)③
中野剛志に学ぶ MMT(現代貨幣理論)④
中野剛志に学ぶ MMT(現代貨幣理論)⑤
中野剛志に学ぶ 商品貨幣論と信用貨幣論
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失敗に学ぶ 野田佳彦を総理にした日本

失敗に学ぶ 野田佳彦を総理にした日本



野田佳彦は今こう考えている

 週プレニュース、「それでも本当に消費増税しかないんですか?」10%への引き上げの”立役者”、野田佳彦元首相を直撃!(2018.12.12)という記事によると、野田佳彦は、現在以下のような考えを持っています。

消費税を上げるべき

「問 やはり、野田さん自身は来年10月に予定どおりに消費増税をするべきだと思いますか。」

「野田 基本的には上げるべきだと思います。そうしないと日本の財政は立ち行かないし、社会保障制度も保てない。例えば、太平洋戦争終戦時点の財政状況は『公的債務残高』、つまり、国が背負っている借金の総額が当時のGDP比で200%でした。それが今や240%になろうとしている。では、この巨額な債務の原因の中で何が大きな比重を占めているかというと、ご存じのように、圧倒的に年金、医療、介護、子育てといった社会保障費です。日本の財政状況が世界でも指折りに悪くなっている理由は、少子高齢化に伴い急激に増え続ける社会保障費の需要があるからで、そこに国民は不安を持っている。この不安をなくしていくためにも、財源の手当てをしていかないと。放っておくほど『後の世代』にツケを回すことになります。もちろん、経済状況は勘案しないといけないと思います。しかし、『ほどほどの成長』が確保できているならば、財政再建を意識したことをやっていかなければならないというのが私のスタンスです。」

デフレ脱却より消費増税が優先される

「問:『ほどほどの成長』の基準をどこに引くのでしょうか? アベノミクスで『異次元緩和』という劇薬を使っても、いまだにデフレから脱却できていないなかで、果たして1年後の日本経済は消費増税しても問題ないほどの状況になっているのか……正直、疑問です。」

「野田:そういう状況をつくるのが政府の責任です。ただし、『デフレ脱却』と『消費増税』の両立は難しく、へたをするとデフレ脱却は永遠に『道半ば』ということになりかねません。ただ、それでもその間、ずっと財政問題を放置していいのかというと、そうはいかない。」

今すぐ増税すべき

「問:では仮に、まさに今の経済状況で消費増税を行なうべきかと問われたら?」

「野田:やるべきだと思います。もちろん安倍政権が訴える『アベノミクスの成果』については、いろいろ疑わしい点も多いですが、少なくとも今の日本経済は決定的なマイナス成長にはなっていない。私はむしろ、それより前の段階で消費増税をやっておくべきだったと思っています。」

 東洋経済ONLINEドジョウ宰相野田佳彦前首相の「恨み節」 6年前の「近いうち解散」とは何だったのか 泉宏(政治ジャーナリスト)(2018.11.10) という記事によると、野田佳彦は、現在以下のような考えを持っています。

自分の政権が景気の底だった

「振り返ればあの時が景気も底だった。いいタイミングで(安倍氏に政権の)バトンを渡しちゃった。」

消費増税延期は断じて許されない

(消費増税の2019年10月から実施の延期論について)
「『断じて許されないが(安倍首相だったら)2度あることは3度というリスクがある』と警告した。」

野田佳彦の現在について分かること

 野田佳彦の消費増税の必要性論は、

・日本の財政が破綻する(政府の借金はGDP比でみると240%を超えている)
・将来世代へのツケを残すな
・国民が財政を不安に思っているので、不安を取り除く必要がある

というロジックで構成されています。

 また、消費増税のタイミングについては、
  
・デフレ脱却と消費増税の両立は難しいので消費増税を優先すべき
・決定的なマイナス成長にならない限り実施すべき
・本来もっと前に行われるべき
・延期は断じて許されない

という主張をしています。

 野田佳彦は、

「振り返ればあの時が景気も底だった。いいタイミングで(安倍氏に政権の)バトンを渡しちゃった。」

という考えを持っています。すなわち、野田佳彦に、菅直人と自身の政権の経済政策によって、日本経済が最悪の危機的状況に至ったという感覚はありません。

 経済という循環する自然現象のようなものの中で、自分の時にたまたま運悪く台風が来ていただけという感覚で、のんびりとした気持ちで現在を過ごしていることが分かりました。

 なお、野田佳彦は、2009年8月、民主党が政権を奪取する際の選挙においては、 

「消費税1%分は、二兆五千億円です。十二兆六千億円ということは、消費税5%ということです。消費税5%分のみなさんの税金に、天下り法人がぶら下がってるんです。シロアリがたかってるんです。それなのに、シロアリ退治しないで、今度は消費税引き上げるんですか?消費税の税収が二十兆円になるなら、またシロアリがたかるかもしれません。」

などと演説していましたが、当選後、財務副大臣を経て財務大臣になると豹変しました。
 

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財務省人事 次の事務次官は誰? ’19

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財務省 事務次官の出世コースとは

 何度日本経済に打撃を与え、国民を困窮させても、緊縮財政と消費増税に邁進する財務省。戦前の日本において、軍のエリートたちが、大局観を喪失したまま、その優れた能力を自らの組織のために捧げ、戦略目的も無く戦線を拡大し続け、国が滅びた経験と重なります。

 日本人は、同じ失敗を繰り返し続けるのでしょうか。
 
 評論家の倉山満氏は、財務事務次官に出世する王道コースについて、「(主計局)三席→(主計局)次席→(主計局)首席→総括審議官→官房長→主計局長→事務次官、と上がっていくのが王道です。」(28:45)、と解説しています。

 これをもとに、財務省の事務次官の出世コースを確認するとともに、今後の事務次官が誰になるのかを検討してみたいと思います。

財務省人事データ

 近年、財務省事務次官「王道コース」のポストについた人物は、以下のとおりです。

【2015年の幹部構成】
事務次官   田中一穂(S54年入省)
主計局長   福田淳一(S57年入省)
大臣官房長  岡本薫明(S58年入省)
総括審議官  太田 充(S58年入省)

主計局次長(首席) 美並義人(S59年入省)
主計局次長(次席) 可部哲生(S60年入省)
主計局次長(三席) 茶谷栄治(S61年入省)

【2016年の幹部構成】
事務次官   佐藤慎一(S55年入省)
主計局長   福田淳一(S57年入省)
大臣官房長  岡本薫明(S58年入省)
総括審議官  太田 充(S58年入省)

主計局次長(首席) 可部哲生(S60年入省)
主計局次長(次席) 藤井健志(S60年入省)
主計局次長(三席) 茶谷栄治(S61年入省)

【2017年の幹部構成】

事務次官   福田淳一(S57年入省)
主計局長   岡本薫明(S58年入省)
大臣官房長  矢野康治(S60年入省)
総括審議官  可部哲生(S60年入省)

主計局次長(首席) 茶谷栄治(S61年入省)
主計局次長(次席) 大鹿行宏(S61年入省)
主計局次長(三席) 神田眞人(S62年入省)

【2018年の幹部構成】

事務次官  岡本薫明(S58年入省)
主計局長  太田 充(S58年入省)
大臣官房長 矢野康治(S60年入省)
総括審議官 茶谷栄治(S61年入省)

主計局次長(首席) 神田眞人(S62年入省)
主計局次長(次席) 阪田渉(S63年入省)
主計局次長(三席) 宇波弘貴(H元年入省)



福田淳一(S57年入省)の経歴

 前事務次官の福田淳一氏の経歴は、以下のとおりです。セクハラスキャンダルで、事務次官在任中に辞任しました。

2011年 主計局次長(三席)
2012年 主計局次長(次席)
2013年 主計局次長(首席)
2014年 大臣官房長
2015年 主計局長
2016年 主計局長
2017年 事務次官

 倉山満氏の、事務次官になるには「(主計局)三席→(主計局)次席→(主計局)首席→総括審議官→官房長→主計局長→事務次官、と上がっていくのが王道です」、という解説に従ってみていくと、総括審議官を経ていないだけで見事な王道コースを歩んでいます。
 

岡本薫明(S58年入省)の経歴

 

 現在の事務次官、岡本薫明の経歴は、以下のとおりです。

2012年 主計局次長(三席)
2013年 主計局次長(次席)
2014年 主計局次長(首席)
2015年 大臣官房長
2016年 大臣官房長
2017年 主計局長
2018年 事務次官

 倉山満氏の、事務次官になるには「(主計局)三席→(主計局)次席→(主計局)首席→総括審議官→官房長→主計局長→事務次官、と上がっていくのが王道です」、という解説に従ってみていくと、福田前事務次官と同様に、総括審議官を経ていないだけで、見事な王道のコースを歩んでいます。

 福田事務次官、岡本事務次官は、きわめて手堅いコースを歩み、事務次官に就任していることになります。

太田充(S58年入省)の経歴

 現在の主計局長、太田充の経歴は、以下のとおりです。

2012年 主税局審議官
2013年 主計局次長(三席)
2014年 主計局次長(次席)
2015年 総括審議官
2016年 総括審議官
2017年 理財局長
2018年 主計局長

 常に、同期の岡本薫明現事務次官を追うコースにいたことが分かります。

 倉山満氏の、事務次官になるには「(主計局)三席→(主計局)次席→(主計局)首席→総括審議官→官房長→主計局長→事務次官、と上がっていくのが王道です」という解説に従ってみていくと、同期の岡本氏にはばまれ、主計局次長(首席)と大臣官房長は経験していません。しかし、総括審議官を経て、主計局長の地位をつかみました。

 主計局長になれば、次期事務次官ということでほぼ決定です。

 主計局長が事務次官になれなかったのは、直近では1997年に主計局長に就いた涌井洋治に遡ります。涌井は、大蔵省接待スキャンダルで失脚しました。その前は1974年に主計局長に就いた橋口収です。橋口は、田中角栄の政治介入に阻まれ、同期の主税局長高木文雄に事務次官の座を奪われています。それ以前は、後に総理になる福田赳夫が、主計局長時に収賄容疑で逮捕され(後に無罪)事務次官の座を逃したことがあります。

 2018年の財務省文書改竄スキャンダルで処分を受けた岡本薫明は、その直後に事務次官になることができました。よほどのことがなければ、次の事務次官は太田充で確定ということになります。昭和58年入省で岡本氏と同期ですが、昭和59年入省組に、王道コースの事務次官候補者がいないので、出番がまわってきました。

矢野康治(S60年入省)の経歴

 

 現在の大臣官房長、矢野康治の経歴は、以下のとおりです。

2012年 官房長官秘書官
2013年 官房長官秘書官
2014年 官房長官秘書官
2015年 官房長官秘書官
2016年 主税局審議官
2017年 大臣官房長
2018年 大臣官房長

 倉山満氏の、事務次官になるには「(主計局)三席→(主計局)次席→(主計局)首席→総括審議官→官房長→主計局長→事務次官、と上がっていくのが王道です」という解説に従ってみていくと、大臣官房長以外は経験しておらず、王道コースから外れています。

 菅義偉官房長官のもとで秘書官を務めて、主税局審議官から、一気に大臣官房長になりました。財務省的には、これはサプライズ人事のようです。大臣官房長という事務次官コースに乗ったものの、上記の太田氏、下記の可部氏に比べて、王道は歩んでいませんので、事務次官となる可能性は少なそうです。

可部哲生(S60年入省)の経歴

 現在の理財局長、可部哲生の経歴は、以下のとおりです。

 
2012年 主計局総務課長
2013年 官房総合政策課長
2014年 国際局審議官
2015年 主計局次長(次席)
2016年 主計局次長(首席)
2017年 総括審議官
2018年 理財局長

 倉山満氏の、事務次官になるには「(主計局)三席→(主計局)次席→(主計局)首席→総括審議官→官房長→主計局長→事務次官、と上がっていくのが王道です」という解説に従ってみていくと、主計局次長首席を経て、総括審議官ですから、王道コースに近いものがあります。

 しかし、大臣官房長は経験しておらず、2018年に理財局長となったことから、福田前事務次官や岡本事務次官ほどには万全の王道コースは歩んでいない、ということになります。

 もっとも、現在の主計局長太田充が、総括審議官→理財局長→主計局長となっていることから、この流れが続くならば、理財局長から主計局長となるのは、何ら問題ありません。元財務官の榊原英資は、「理財局長は中間的なポストです。理財局長の経験者は、その後、金融庁・国税庁・環境省などにいったり、官房長などの要職に就任したりと、人によってまちまちです。」(「財務省」新潮新書、榊原英資、2012)と述べており、以前から人事的に柔軟な使い方ができるポストです。

 王道まっしぐらの可部が理財局長になったということは、前任者の太田と同じコースを歩む可能性が高そうです。したがって、可部哲生は、太田充の次の主計局長、太田充の次の事務次官の有力候補、ということになりそうです。

 ところで、この可部氏の妻は自民党の岸田文雄衆議院議員の妹です。
 ポスト安倍の有力候補は、自民党の派閥構成でいえば岸田文雄ですから、岸田総理のもとで、義弟の可部哲生が財務省事務次官となり、義兄弟で日本を取り仕切る可能性もありそうです。

藤井健志(S60年入省)の経歴

 現在の国税庁長官藤井健志の経歴は、以下のとおりです。

2012年 官房文書課長
2013年 主税局審議官
2014年 主税局審議官
2015年 内閣審議官
2016年 主計局次長(次席)
2017年 国税庁次長
2018年 国税庁長官

 倉山満氏の、事務次官になるには「(主計局)三席→(主計局)次席→(主計局)首席→総括審議官→官房長→主計局長→事務次官、と上がっていくのが王道です」という解説に従ってみていくと、2016年の主計局次長(次席)により一瞬王道コースに入りましたが、一期のみで、国税庁に異動し、現在は国税庁長官になっています。

 国税庁長官は、格の上では、事務次官に次ぐランクの名誉あるポストとなり、ここで一丁上がりで退職となるのが通常のようです。もっとも、90年代には国税庁長官から事務次官になった人が何人もいますので、可能性がゼロというわけではないようです。しかし、同期の可部哲生が、現在の太田主計局長とほぼ同様の王道コースを歩んでいること、及び同期の矢野康治が大臣官房長を務めていることからみれば、可能性はほとんど無いと考えられます。

茶谷栄治(S61年入省)の経歴

 現在の総括審議官、茶谷英治の経歴は、以下のとおりです。

2012年 官房秘書課長
2013年 官房秘書課長
2014年 官房秘書課長
2015年 主計局次長(三席)
2016年 主計局次長(三席)
2017年 主計局次長(首席)
2018年 総括審議官

 倉山満氏の、事務次官になるには「(主計局)三席→(主計局)次席→(主計局)首席→総括審議官→官房長→主計局長→事務次官、と上がっていくのが王道です」という解説に従ってみていくと、主計局次長(首席)を経ての総括審議官ですから、王道コースを歩んできました。

 このまま王道コースを行くならば、2019年に大臣官房長、2020年主計局長、2021年事務次官、という可能性がありそうです。

神田眞人(S62年入省)

 現在の主計局次長(首席)の神田眞人の経歴は、以下のとおりです。

2016年 金融庁参事官
2017年 主計局次長(三席)
2018年 主計局次長(首席)

 この人物は、

「東京大学法学部卒業、オックスフォード大学経済学修士。世界銀行審議役、財務省主計局主査(運輸、郵政担当を歴任)、国際局為替市場課補佐、大臣官房秘書課企画官、世界銀行理事代理、主計局給与共済課長、主計官(文部科学、経済産業、環境、司法・警察、財務担当を歴任)、国際局開発政策課長、同総務課長等を経て現職。」

 とのことです。
 一気に、主計局次長(首席)となりましたので、2019年のポスト次第では、茶谷氏の次の事務次官候補と言えそうです。

まとめ

 今後の財務事務次官は、王道コースで行けば、

 岡本事務次官(S58年入省) → 太田充(S58年入省) → 可部哲生(S60年入省) → 茶谷栄治(S61年入省) 

という流れが考えられます。

 もっとも、可部氏の世代には大臣官房長の矢野康治がいるので、何が起きるかは断定できません。

 なお、財務省の幹部人事は、例年7月頃になされます。

財務省と予算編成権 榊原英資に学ぶ
財務省の組織・局の序列 榊原英資に学ぶ
財務省人事 次の事務次官は誰? ’19