賃貸不動産経営管理士とは

賃貸不動産経営管理士とは



国家資格になるかも

 はじめて「賃貸不動産経営管理士」という資格の名を聞く人は、「得体のしれない団体が受験料で稼ぐためにやっている民間資格のたぐいだろう」と考えるかもしれません。

 しかし、賃貸不動産経営管理士は、国土交通省の国家資格になる可能性を秘めた有望な資格です。

 この資格試験を実施しているのは「一般社団法人賃貸不動産経営管理士協議会」です。この団体は、公益財団法人日本賃貸住宅管理協会、公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会、公益社団法人全日本不動産協会、によって運営されています。

 もともと、それぞれ団体ごとに独自に資格を設けていた賃貸不動産管理についての業界統一資格を作るために、一般社団法人賃貸不動産経営管理士協議会が設立され賃貸不動産経営管理士制度が創設されました。現在、国会資格化を目指して運動しています。

 注目すべきは、宅建業の業界団体である、ハトマークの宅建協会とウサギマークの不動産協会の両者が関わっていることです。宅建協会も不動産協会も、それなりに政治力のある団体です。そうした各業界団体が一致協力して、国家資格化のため運動をしているということですから、それなりの成果が出る可能性は高いと言えます。

 不動産業界が一丸となって、賃貸不動産経営管理士の国家資格化を目指しているという状況です。

 国家資格になる場合、業界団体の意志が統一されていることは意外と重要です。行政側は、特定の団体のみを優遇した形にしたくないからです。この点、賃貸不動産経営管理士は、行政側からみても、国家資格化のための立法に向けた取り扱いがしやすいと言えます。
 
 

現在も公的資格

 賃貸不動産経営管理士は、既に単なる民間資格ではなく、公的資格となっています。

 国土交通省は賃貸住宅管理業者登録制度を設けています。

 これは一定のルールに従って賃貸管理業をしている登録業者を国交省が公開するという制度です。この制度のなかで、賃貸不動産経営管理士に一定の役割が与えらえれています。現時点において、ただの民間資格ではなく、公的資格になっている状態です。あくまで任意登録の制度ですが、将来的には強制力のあるものになることも考えられます。

 賃貸管理は不動産業においては、メジャーな分野です。社会問題化したトラブルも少なくありませんから、国が業者に一定の規律を与えて、不当な業者を排除する仕組みには、国家資格化の正当な理由になります。

 また、賃貸不動産経営管理士は、単なる賃貸管理ではなく賃貸「経営」の管理という点にも力点を置いています。近年、社会問題になっている「サブリース業者」、「空き家問題」、「民泊経営」などについても、賃貸不動産経営管理士がかかわっていくという内容になっています。こうした社会問題への結びつけは、国家資格化のために賃貸不動産経営管理士法を国会に提出する際、その必要性を政治家にアピールするのに有効です。

 国家資格化の可能性は、相当にあると言えます。

賃貸管理業務はメジャー分野だが資格が無い

 不動産屋の仕事は多様ですが、「売買・賃貸・管理」は多くの不動産屋が看板にあげている業務で、不動産業の三大メジャー分野といえます。

 このうち売買や賃貸の仲介は、宅地建物取引士という資格があります。しかし、賃貸不動産の管理業務には特に国家資格はありません。

 もちろん、アパートなどの管理業務の中で溶接や電気工事や重機の操作を行う場合にはそれぞれ資格が必要ですが、賃貸不動産の管理業そのものについての国家資格はないのです。

 賃貸不動産経営管理士は、このメジャー業務である賃貸管理についての公的資格となります。

管理業務主任者より有望?

 現在、不動産業者の従業員のための国家資格と言えば、宅地建物取引士と管理業務主任者があります。マンション管理士という資格もありますが、これは制度趣旨からいえば、不動産業者側というよりも、マンションの管理組合側の資格です。
  
 管理業務主任者は、主に分譲マンションの管理などを目的としたものです。管理業務主任者の試験の内容は宅建並みに難しいですが、宅建のような幅の広さはありません。分譲マンションの管理業者の従業員以外には意味が無いので、不動産屋に勤めていても必要のない人には取得のメリットがありません。

 一方、賃貸不動産経営管理士は、賃貸アパートや賃貸マンション等の賃貸管理業務を対象とする資格です。

 賃貸管理というのは、例えば、賃貸料・敷金などの受領、賃貸契約や賃貸契約の更新、賃貸契約の終了についての事務などで、アパートの管理会社をイメージすればいいでしょう。一般の人の不動産屋のイメージといえば、売買や賃貸の仲介をするほかに、賃貸管理をしている業者というイメージをもっているのではないでしょうか。
 
 もし賃貸不動産経営管理士が国家資格化されれば、分譲マンション管理を主たる業務とする業者はともかく、一般的な不動産会社では、まず宅建士が重宝され、次に賃貸不動産経営管理士が重宝され、管理業務主任者はその次ということになりそうです。
 
 不動産業に勤務する際には、まずは「宅建士と賃貸管理業務主任者を取れよ」となるでしょう。
 

早めにとっておくと得をする

 賃貸不動産経営管理士の合格率は、2013年は85%の合格率でしたが、2018年は50%程度となっており、約半数が落ちる試験になっています。
 
 宅地建物取引士(主任者)や管理業務主任者も、最初は合格率が高かったものの、現在は10%台になっています。賃貸不動産経営管理士も年々難化していくことが予測されますので、合格率が高いうちに取得しておくことはメリットがあるでしょう。

 なお、賃貸不動産経営管理士の令和元年の試験は1時間30分で40問の試験でした。

 令和2年度から2時間で50問の試験になります。

 

財務省人事 次の事務次官は誰? ’20

財務省人事 次の事務次官は誰? ’20



日本を破局に導く財務省

 何度日本経済に打撃を与え、国民を困窮させても、緊縮財政と消費増税に邁進する財務省。戦前の日本において、軍のエリートたちが、大局観を喪失したまま、その優れた能力を自らの組織のために捧げ、戦略目的も無く戦線を拡大し続け、国が滅びた経験と重なります。

 日本人は、同じ失敗を繰り返し続けています。
 
 バブル崩壊と失われた30年、長期のデフレ不況の元凶である財務省の、次の事務次官が誰になるのかを検討してみたいと思います。

2019年7月発表の財務省幹部人事

 2019年7月に発表された、財務省幹部人事は以下のとおりです。

事務次官  岡本薫明(S58年入省)→ 留任
主計局長  太田 充(S58年入省)→ 留任
大臣官房長 矢野康治(S60年入省)→ 茶谷栄治(S61年入省)
総括審議官 茶谷栄治(S61年入省)→ 神田眞人(S62年入省)

主計局次長(首席) 阪田渉(S63年入省)
主計局次長(次席) 角田隆(S63年入省)
主計局次長(三席) 宇波弘貴(H元年入省)

 岡本薫明事務次官と、太田充主計局長が留任しました。
 大臣官房長の矢野康治は主税局長となり、総括審議官の茶谷栄治は大臣官房長になっています。
 主計局次長(首席)の神田眞人は総括審議官に上がってきました。



岡本薫明(S58年入省)の経歴

 

 現在の事務次官、岡本薫明の経歴は、以下のとおりです。

2012年 主計局次長(三席)
2013年 主計局次長(次席)
2014年 主計局次長(首席)
2015年 大臣官房長
2016年 大臣官房長
2017年 主計局長
2018年 事務次官
2019年 事務次官

 岡本は、「主計局次長(三席)→主計局次長(次席)→主計局次長(首席)→総括審議官→大臣官房長→主計局長→事務次官」という財務省事務次官の王道コースを歩んできました。総括審議官を経験していないだけです。

 政権側の消費増税延期の動きをすべて阻止し、大勝利の2期目です。
 

太田充(S58年入省)の経歴

 現在の主計局長、太田充の経歴は、以下のとおりです。

2012年 主税局審議官
2013年 主計局次長(三席)
2014年 主計局次長(次席)
2015年 総括審議官
2016年 総括審議官
2017年 理財局長
2018年 主計局長
2019年 主計局長

  「主計局次長(三席)→主計局次長(次席)→主計局次長(首席)→総括審議官→大臣官房長→主計局長→事務次官」という王道コースからみると、同期に、大エース岡本薫明がいたため、主計局次長(首席)と大臣官房長を経験していません。
 
 しかし、総括審議官を経て、主計局長の座をつかみました。
 
 主計局長になれば、次期事務次官ということで決定です。

 主計局長が事務次官になれなかったのは、直近では1997年に主計局長に就いた涌井洋治に遡ります。涌井は、大蔵省接待スキャンダルで失脚しました。そのほか事務次官になれなかった事例としては、1974年に主計局長に就いた橋口収がいます。橋口は、田中角栄の政治介入に阻まれ、同期の主税局長高木文雄に事務次官の座を奪われています。それ以前は、後に総理になる福田赳夫が、主計局長時に収賄容疑で逮捕され(後に無罪)事務次官の座を逃したことがあります。

 2018年の財務省文書改竄スキャンダルで処分を受けた岡本薫明は、その直後に事務次官になることができました。よほどのことがなければ、次の事務次官は太田充で確定ということになります。昭和58年入省で岡本氏と同期ですが、昭和59年入省組に、王道コースの事務次官候補者がいないので、出番がまわってきました。

矢野康治(S60年入省)の経歴

 

 現在の主税局長、矢野康治の経歴は、以下のとおりです。

2012年 官房長官秘書官
2013年 官房長官秘書官
2014年 官房長官秘書官
2015年 官房長官秘書官
2016年 主税局審議官
2017年 大臣官房長
2018年 大臣官房長
2019年 主税局長

 「主計局次長(三席)→主計局次長(次席)→主計局次長(首席)→総括審議官→大臣官房長→主計局長→事務次官」という王道コースからみると、大臣官房長を経験しただけですので、可能性はほとんどないと考えられます。

 2000年以降、主計局長を経ずに事務次官になった唯一の例外が、佐藤慎一です。
 佐藤慎一の経歴は以下のようなものです。

2011年 総括審議官
2012年 総括審議官
2013年 大臣官房長
2014年 主税局長
2016年 財務事務次官

 この佐藤の事例を考えれば、矢野も可能性がゼロになったとは言えません。

 しかし、昭和58年入省の岡本薫明事務次官が留任しているところ、次の太田充も昭和58年入省ですから、このままだと、岡本が途中で辞職しない限り、同年入省組が事務次官を3期務めることになります。
 このため、昭和59年組、昭和60年組は、飛ばされる可能性が高まっているところ、矢野のようなイレギュラーな人物を間に挟むことは考えにくいと考えられます。
 今後の矢野は、主税局長から、国税庁長官というコースが予想されます。

可部哲生(S60年入省)の経歴

 現在の理財局長、可部哲生の経歴は、以下のとおりです。
 
2012年 主計局総務課長
2013年 官房総合政策課長
2014年 国際局審議官
2015年 主計局次長(次席)
2016年 主計局次長(首席)
2017年 総括審議官
2018年 理財局長
2019年 理財局長

 「主計局次長(三席)→主計局次長(次席)→主計局次長(首席)→総括審議官→大臣官房長→主計局長→事務次官」という王道コースから見れば、主計局次長首席を経ての総括審議官ですから、堂々たる将来の事務次官候補です。

 総括審議官の後は、大臣官房長には上がらず理財局長となりました。これについては、現在の主計局長太田充が、総括審議官→理財局長→主計局長となっていることから、理財局長から主計局長となるのは近時の流れ的に問題ありません。
 
 元財務官の榊原英資は、「理財局長は中間的なポストです。理財局長の経験者は、その後、金融庁・国税庁・環境省などにいったり、官房長などの要職に就任したりと、人によってまちまちです。」(「財務省」新潮新書、榊原英資、2012)と述べており、人事的に柔軟な使い方ができるポストです。

 王道を歩んできた可部が理財局長になったということは、出世コースから外れたとまでは言えず、前任者の太田と同じコースを歩む可能性は残っています。

 岡本事務次官の退任により太田主計局長が事務次官になる時に可部が主計局長になれば、太田の次は可部が事務次官になります。
 
 しかし、2019年7月の人事で、一期下の茶谷栄治が大臣官房長になったことで情勢は厳しくなりました。太田充もまた下の期の矢野康治が大臣官房長になったことにより大臣官房長を経験していませんが、矢野はもともと経歴的には事務次官レースの王道コースから外れたイレギュラーな人物でした。一方、茶谷は、完璧な王道コースを歩んでいるエースであり、将来事務次官となるのが確実ですから、茶谷が大臣官房長になったのは、矢野の時とは質的に異なります。

 昭和58年入省の岡本が事務次官を二期務めた後、同じ昭和58年入省の太田が事務次官を一期務めることで、後ろが詰まっている状態となっています。このため、太田の次は、昭和59年・昭和60年入省は飛ばされ、一気に、昭和61年入省の茶谷栄治という可能性があり、可部にとっては厳しい状況と言えます。

 ところで、可部氏の妻は自民党の岸田文雄衆議院議員の妹です。
 ポスト安倍の有力候補は、自民党の派閥構成でいえば岸田文雄ですから、岸田総理のもとで、義弟の可部哲生が財務省事務次官となり、義兄弟で日本を取り仕切る可能性もあります。
 しかし、逆に、それでは政治色が強すぎるとして、官僚的配慮で回避されることも可能性も考えられます。したがって、ポスト安部が菅義偉になるのか、岸田文雄になるかによっても、人事に影響を与えると考えられます。

 可部が事務次官になれるかは、まだ流動的と言えそうです。

茶谷栄治(S61年入省)の経歴

 現在の大臣官房長、茶谷英治の経歴は、以下のとおりです。

2012年 官房秘書課長
2013年 官房秘書課長
2014年 官房秘書課長
2015年 主計局次長(三席)
2016年 主計局次長(三席)
2017年 主計局次長(首席)
2018年 総括審議官
2019年 大臣官房長

 「主計局次長(三席)→主計局次長(次席)→主計局次長(首席)→総括審議官→大臣官房長→主計局長→事務次官」という王道コースを、確実に歩んでいます。

 今後、主計局長を経て事務次官となるのがほぼ確定したエースと言えます。

 問題は、その時期です。
 
 2020年に太田主計局長が事務次官になるとして、この際に、一期上の可部が主計局長になるか、茶谷が主計局長になるかで、次の次の事務次官がきまります。

神田眞人(S62年入省)

 現在の総括審議官、神田眞人の経歴は、以下のとおりです。

2016年 金融庁参事官
2017年 主計局次長(三席)
2018年 主計局次長(首席)
2019年 総括審議官

 「主計局次長(三席)→主計局次長(次席)→主計局次長(首席)→総括審議官→大臣官房長→主計局長→事務次官」という王道コースを、順調に歩んでいます。 

 主計局次長(首席)を経て総括審議官になりましたので、茶谷氏の次の事務次官候補は、この人物です。
 

阪田渉(S63年入省)

 現在の主計局次長(首席)、阪田渉の経歴は、以下のとおりです。

2015年 主計局総務課長
2016年 大臣官房文書課長
2017年 国際局審議官
2018年 主計局次長(次席)
2019年 主計局次長(首席)

 「主計局次長(三席)→主計局次長(次席)→主計局次長(首席)→総括審議官→大臣官房長→主計局長→事務次官」という王道コースに入りました。
 
 神田の次の総括審議官になれば、一気に将来の事務次官候補となります。

まとめ

 今後の財務事務次官は、

 岡本事務次官(S58年入省) → 太田充(S58年入省) → 可部哲生(S60年入省) → 茶谷栄治(S61年入省) → 神田眞人(昭和62年入省)

という流れが考えられます。

 太田は確定、茶谷は鉄板ですが、可部哲生は微妙な立場です。茶谷が大臣官房長になったことにより、太田から、可部を飛ばして、茶谷栄治に行く線も濃くなってきました。

 岡本が2期目に入ったことにより、岡本の後に太田が事務次官をすると、昭和58年組が3年事務次官ポストを占めることになります。その後に可部が事務次官になると、次の茶谷は鉄板なので、後ろが詰まって神田の期が飛ばされる、ということもあり得ます。
 
 イレギュラーなパターンとしては、岡本が2019年10月の消費増税の実施を見届けてすぐに辞職、そこから太田が事務次官となり2020年7月まで事務次官を務めて退職するというパターンも、あり得ないことではありません。この方式だと、後ろの詰まりは無くなり、スムーズに可部→茶谷→神田という流れになります。

 なお、財務省の幹部人事は、例年7月頃になされます。

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財務省と予算編成権 榊原英資に学ぶ

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財務省と予算編成権

 元財務官の榊原英資氏は、財務省の最も重要な仕事は「税を含む毎年の予算編成」、と述べます。もちろん、予算を決定するのは国会で「財務省は、そのための事務局」に過ぎないのが本来ですが、「アメリカ等と違って、日本で予算を実際に編成しているのは国会ではなく財務省なのです」、と解説します。
 

予算編成の流れ

 日本の予算編成の具体的な流れは、まず「毎年、予算の概算要求は8月に出されます」。そして、「9月からほぼ4か月をかけて調整作業が行われ、最終的に財務省原案」が出来ます。

 この財務省原案が、毎年12月末に、国会に提出されます。そして、復活折衝を経て財務省原案が政府案になり、「この政府案が1月20日前後に召集される国会に提出される」、ことになります。

予算編成の流れ

 榊原英資氏は、「財務省原案すなわち政府案が国会で修正されることは極めて稀」、と解説します。

 その理由は、財務省原案は、財務省主計局により「事務的な折衝が積み重ねられた後、最後は関係省庁との大臣折衝になります。この折衝には、政務調査会長等、党の政策決定の中心にある人達が同席することもあります」、という要領で作られており、既に政治的な根回しが完了しているからです。

 このため、「主計局長はもとより主計局次長や主計官達は、多くの政治家達と密接な連絡を取り、予算を組み立てていきます。総理大臣や各省大臣の意見、党の幹事長や政調会長の意見等をしっかりと反映させた予算をつくらなければ、閣議で承認されませんし、国会で可決されません。十分根まわしをしながら、時間をかけて予算をつくっていくのです。」、とのことです。

予算編成権回復の試み

 榊原英資氏は、「財務省の予算編成権を内閣に移そうという試みは、1955年の保守合同の時からしばしば起っています。」、と解説します。「鳩山一郎内閣の農林大臣、河野一郎は主計局の内閣移管を試みましたが、当時の石原周夫官房長、谷村裕官房文書課長等が八方を飛び回って説得し、次の石橋湛山内閣で元大蔵官僚の池田勇人が大蔵大臣に就任すると、この河野構想は頓挫」しました。

 また、「最近では小泉純一郎内閣の時に経済財政諮問会議に予算編成権を移そうという試みがなされ、担当の竹中平蔵大臣等が相当努力した結果、少なくとも予算編成の基本方針はこの会議で設定する」、ことになりました。

 なお、榊原氏は、元財務官僚で財務省を鋭く批判する事が多い高橋洋一氏のことを「小泉純一郎内閣の時期に竹中平蔵のブレーンとして財務省から予算編成権を切り離そうと画策し、財務省を辞めざるを得なくなった人物です。」、と考えています。

 小泉内閣で行われた、予算編成権を政治に取り戻すための改革も、脱官僚政治を訴えていたはずの民主党政権で水の泡になります。自身の政治生命のすべてを財務省に捧げた野田佳彦が、財務省の意向に従い、原状に戻しました。

 国民としては最悪な話ですが、榊原氏は、「経済財政諮問会議も政権交代後になくなり、財務省主計局の予算編成権はいまや盤石です。野田佳彦総理が前財務大臣だったこともあり、現在の民主党政権での財務省主計局の力はむしろ強くなっていると言うことができるでしょう」と、財務官僚らしく肯定的な書きぶりをしています。

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財務省の組織・局の序列 榊原英資に学ぶ

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大臣官房

 元財務官の榊原英資によると、大臣官房の官房長は、「大臣・次官を補佐する重要ポスト」であり、歴代事務次官の多くは、「官房長から主計局長を経て事務次官」に就任している。

 大臣官房のトップは官房長で、「その下に総括審議官、政策評価審議官」が置かれ、「また、それぞれの局には審議官、参事官がいますが、彼らもまた官房に属しています」、とのことです。

主計局

 榊原英資によると、予算編成を担う主計局は、「まさに財務省の中心」であり、「主計局主査、主計官、主計局次長、主計局長などは典型的な出世コースのポスト」。

 主計局は、「主計局長の下に三人の次長がいて、それぞれの予算部門を担当」している。

 11人の主計官は課長級ポストで、担当は以下のように分かれている。

・総務課(2人、予算統括と企画)
・内閣、外務、経済協力
・防衛
・総務、地方財政
・司法・警察、財務、経産、環境
・文部科学
・厚生労働第一
・厚生労働第二
・農林水産
・国土交通、公共事業総括

 主計官の下には、「課長補佐である主査が2〜3人いて、それぞれの分野を受け持っています」。財務省内では、他局では課長・課長補佐と呼ばれているところ、主計局だけは主計官・主査と呼ばれている。

 予算編成は、「予算要求の基礎となる概算要求基準が6月に閣議決定されてから始まり、各省は8月末までに概算要求を主計局に提出します。この時、各省の中心になるのが会計課です。予算折衝と査定は9月に開始され、12月20日頃には財務省原案が内示されます。大臣折衝を含む復活折衝を経て12月24日頃、クリスマス前には政府案が決定されます。」、という流れによりなされる。
 

主税局

 主税局は、「国の税制の企画・立案を主たる仕事」であり、「その執行機関として国税庁を持っています」。

 税制第一課は「直接税」、税制第二課は「間接税」、税制第三課は「法人税担当」を担当する。

 主税局長は、「このところ3、40年を見ると、主税局長の経験者は大蔵事務次官か、少くとも国税庁長官になっています。」という重要ポスト。

関税局

 関税局は関税を扱い、主な仕事は「全国に九つある税関の監督・調整」となっています。
 
 関税局は、「財務省のなかではマイナーな局」であり、「関税局長は主計局長や主税局長等と違って最終的なポストになることが多い」。もっとも「同期20人前後のなかで局長になれるのは4〜5人ですから、関税局長といえどもなかなかの出世」、とされます。

理財局

 国の財産を管理する理財局は、「国庫・国債・財政投融資・国有財産管理等」を行います。

 財政投融資とは、「平たく言えば公のお金を使って行われる投資や融資です。財投債(財政投融資特別会計国債)の発行等によって調達した資金で、国が特殊法人等の財投機関に資金を供給し、財投機関はそれを原資として事業を行い、その事業からの回収金等によって資金を返済するという仕組みです。財政投融資は『第二の予算』とも呼ばれています。第一の予算である一般会計予算は、税及び国債によってその資金を調達し、歳出は貸出しや融資ではなく基本的に使い切られます。それに対し、第二の予算である財投は貸出しが基本であり、返済を前提としています。投資の場合は返済はないものの、事業収益による利益の還元が期待されています」。
 
 理財局長は、「理財局長の経験者は、その後、金融庁・国税庁・環境省などにいったり、官房長などの要職に就任したりと、人によってまちまち」、とのことです。

国際局

 国際局は、「為替だけでなく、国際経済の調査・分析、国際機関との連携・交渉、途上国支援の企画・立案等幅広い業務を行」っている部署。「局長・次長の他に二人の審議官がそれぞれの分野を担当しています。」。「経済外交という点では外務省を上回る権限を有しているともいえます。」、とのことです。
 
 国際局長は、「通常、財務官に就任します」。

 財務省内の国際派の牙城とされますが、主税局・主計局のような国内派の財務省本流と違い、「国際局長は次官と同格といわれる財務官にはなれますが、財務官の所掌は国際局と関税局の一部だけ。主計・主税・理財等広範な分野を所掌する事務次官とは格が違う」、とのことです。

まとめ

 官房長は、主計局長を経て、事務次官になる人が多い。
 主計局長は、事務次官になる。
 主税局長は、国税庁長官になる。
 国際局長は、財務官になる。
 理財局長は、事務次官コースに乗る人もいるし、そうでない人もいる。どこに進むか分からない。
 関税局長は、一丁上がりで退職。

 財務省の局の序列としては、事務次官を輩出する本流の主計局があり、その次に、税の専門家で国税庁長官(まれに事務次官も)を輩出する主税局と、財務官を輩出する国際局がある。そして、その次に、局長止まりで退職になる関税局がある、ということになりそうです。また、理財局は、この序列の中ではっきりしない位置にあり、出世コースの人もいれば、そうではない人もいる、中間的ポジションということのようです。

 参考:財務省機構図(平成30年1月現在)

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大村大次郎に学ぶ 税務調査で狙われる会社

大村大次郎に学ぶ 税務調査で狙われる会社



決算書を見て儲かっていそうな企業を探す

 元国税調査官の大村大次郎氏は、国税調査官が、税務調査に入る企業をピックアップする方法を解説します。まず、基本的には、申告書に添付されている決算書の数字をチェックし、儲かっていそうな企業を選び出す、とのことです。

「税務署には毎月、毎月、大量の申告書(決算書添付)が送られてくる。国税調査官には、それをいちいち詳細に見ている時間はない。そこで数字の大事な部分だけをチェックし、不正をしていそうな企業、儲かっていそうな企業をピックアップするのである。」

売上急増で利益が伸びていない会社を狙う

 大村大次郎氏は、国税調査官が税務調査に入る企業を選ぶ際には、売上が毎年急増しているのに利益が伸びていない企業を狙う、と解説します。

「国税調査官が、儲かっていそうな企業(脱税していそうな企業)をピックアップする場合、最もオーソドックスなものは、『売上が毎年急増しているのに利益が伸びていない』企業である。そういう企業は何らかの脱税をしている可能性があるので、それをまず選定の候補にするのだ。」

売上増だが利益率が低い企業を狙う

 大村大次郎氏は、国税調査官が税務調査に入る企業を選ぶ際には、決算書の利益率に着目すると解説します。利益率に着目し、売り上げが上がっているのに、利益率が下がっている場合や、同業他社に比べて低いかどうかを確認する、と述べます。

「トータルのデータを見た場合、儲かっている企業が脱税する比率は、ほかの企業に比べて著しく高いのである。売上が急増しているのに、利益が出ていない納税者を見つけるには、利益率を参考にする。利益率とは、売上に比べてどれだけ利益が出ているかを表すものである。売上が上がっているのに、利益率が下がっている場合や、利益率が同業者に比べて著しく低い場合は、要チェックということになる。」

経費だけが急増している企業を狙う

 大村大次郎氏は、国税調査官が税務調査に入る企業を選ぶ際には、同業他社に比べて著しく所得が少ない企業や、経費だけが急増している企業を狙う。仕入れなどの経費を操作している可能性が高いからだと解説します。

「売上急増のほかにも、同業他社と比べて著しく所得が低いとか、ほかの科目は変化がないのに経費が急に増加しているなどの場合も、対象となる。たとえば、『外注費が去年より倍増している』とか、『仕入だけが急に増えている』などである。これは何か不自然な操作をしている可能性があるからだ。」

景気の良い業界を狙う

 大村大次郎氏は、国税調査官が税務調査に入る企業を選ぶ際には、流行のヒット商品を生み出すなどして儲かった業界を狙う、と解説します。

「また、儲かっている業種を中心に選択するという方法もある。たとえば、台風が多かった年ならば、瓦屋や個人住宅の修理業者や、その関係者を軸にして調査先を選定する。ヨーヨーが流行したときには、ヨーヨーの製造業者、販売業者に目をつける、などである。」

大村大次郎に学ぶ 国税調査官の考え方
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中野剛志に学ぶ 商品貨幣論と信用貨幣論

中野剛志に学ぶ 商品貨幣論と信用貨幣論



商品貨幣論と信用貨幣論

 中野剛志氏は、貨幣に関する学説について、大きく分けて、商品貨幣論と信用貨幣論がある、と解説します。

「現在、貨幣を巡る学説には、大きく分けて『商品貨幣論』と『信用貨幣論』がある。」

商品貨幣論とは

 中野剛志氏は、商品貨幣論とは、物々交換の不便さを克服するため、利便性の高い金属貨幣を導入したと考える学説であるとし、主流派経済学(新古典派経済学)は商品貨幣論を前提にしている、と指摘します。そして、商品貨幣論では、金との兌換が保証されない現在の紙幣が流通している現象を説明できないと解説します。

「商品貨幣論とは、物々交換の効率の悪さを克服するために、交換手段として利便性の高い『物』として金属貨幣を導入したと考える学説である。」

「紙幣の価値の根拠は、あくまでも貴金属との兌換(交換)が保証されていることによる。」

「現在の主流派をなす経済学は、アダム・スミスを開祖とする『古典派』及びその後継たる『新古典派』という系譜を持つが、この『古典派』及び『新古典派』経済学もまた、商品貨幣論に立っている。」

「しかし、この商品貨幣論は、貴金属との兌換が保証されない不換紙幣の存在によって反証されてしまっている。例えば、米ドルは、1971年に金との兌換が停止されているにもかかわらず通貨として流通し続けているが、商品貨幣論ではこの現象を説明できないのである。」
 

信用貨幣論とは

 中野剛志氏は、信用貨幣論は、貨幣を「負債」とみなす学説であると、と解説します。

「信用貨幣論とは、貨幣を『商品』ではなく、『負債』の一種とみなす説である。例えば、イングランド銀行は、その季刊誌(2014年春号)に掲載された入門的な解説の中で、『今日、貨幣とは負債の一形式であり、経済において交換手段として受け入れられた特殊な負債である』として、信用貨幣論を支持している。」

中野剛志に学ぶ MMT(現代貨幣理論)①
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大村大次郎に学ぶ 国税調査官の考え方

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国税調査官にはノルマがある

 元国税庁調査官の大村大次郎氏は、国税調査官には徴収ノルマがある、と解説します。追徴税を多くとらなければ、出世できない仕組みになっていると指摘します。

「それは、『国税調査官にはノルマがある』ということである。先ほども述べたように、国税調査官の仕事というのは、建前のうえでは、納税者の申告が正しいかどうかをチェックすることである。しかし、税務署には、『より多くの税金を取ってくる』という暗黙の命題がある。そのため、国税調査官たちには、税務調査でより多くの追徴税を取ることが課せられている。これは、決して国税庁が認めることはないが、税務調査での追徴税というのは、勤務評定に確実に影響している。追徴税をたくさん取らなければ、絶対に出世はできないのである。」

ノルマがあるから国税調査官の不祥事が発生する

 大村大二郎氏は、このような徴収ノルマの存在を国税庁が認めることはないが、実際、国税調査官が書類を改ざんし、追徴税が多かったように見せかける不祥事が、何度も発生しているとのことが、その証拠だと述べます。

「そのため、国税調査官は、納税者の書類を偽造し、追徴税が多かったように見せかけるという不祥事を、数年おきに起こして新聞沙汰になっている。これは、国税庁内に追徴税のノルマがあるという、何よりの証拠なのである。」

国税調査官は手ぶらでは帰らない

 大村大二郎氏は、国税調査官が、税務調査の結果、何も問題点はなかったと言って引き上げることはあり得ない、と解説します。

「つまり、皆さんにまず心得ていただかなくてはならないのが、国税調査官は『納税者の申告が正しいかどうかをチェックするだけ』では決して飽き足らないということだ。ビルの安全管理の点検者のように、『すべて異常なし、めでたし、めでたし』で仕事を終えられるわけではないのである。国税調査官は、どうにかして、ほんのわずかでも追徴税を稼ぐことを狙っているわけなのである。」

  これは、我々の経験則とも一致する解説ですね。

国税調査官の簿記の知識は高くない

 大村大二郎氏は、国税調査官の会計知識は、それほど高度ではないと解説します。簿記の資格でいえば、多くは3級程度のレベル、と解説します。

「国税調査官は、それほど高度な会計知識を持っているわけではない。これは元国税調査官である筆者が、自分自身を謙遜して言っていることではない。実際に、高度な会計知識は持っていないのである。もちろん、ある程度は、会計知識を持っているが、よくて簿記2級程度である。簿記3級しか持っていない国税調査官も大勢いる。簿記3級というのは、商業高校の生徒ならば、普通に持っている資格で、大学生であれば1、2ヶ月勉強すれば取れる程度の資格である。」

 実際のところ、中小企業診断士やMBAを持っている人でも、決算書を用いて財務分析をする力はあっても、簿記の細かい知識となると2級程度もない人がほとんどではないかと思われます。その点をごまかしながら、実務をしているのが現状ではないでしょうか。財務分析となると、収益性・安全性・成長性・生産性の観点から行うことになりますが、税務調査となると、それよりもさらに見るべきポイントは限定的でしょうから、簿記3級程度というのは事実で不思議ありません。

国税調査官にはノルマがある

 大村大二郎氏は、決算書の嘘を発見するのは、必ずしも高度な会計知識は必要ない、と解説します。

「つまりは、決算書の嘘を見抜く際に、高度な会計知識はあまり必要ない、ということでる。言い換えるならば、決算書の本質を見抜くには、決算書をすべて読める必要はないのだ。」

「勘定科目のうち、重要となるポイントをいくつか押さえることができれば、決算書の本質がどうなのか、だいたいの流れはわかるのである。」

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中野剛志に学ぶ MMT(現代貨幣理論)⑤

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アルゼンチンの財政破綻

 中野剛志氏は、プライマリー・バランス黒字化達成のために経済成長が停止し、黒字化と同時に財政破綻したアルゼンチンの例を示します。

「1990年代初頭に経済危機に陥ったA国は、IMF(国際通貨基金)に救済を依頼したところ、IMFから融資の条件として、2003年度を達成年次としたプライマリー・バランスの目標を突き付けられました。これを受け入れたA国は、歳出削減に励み、1998年以降はマイナス成長まで経験しましたが、何とか頑張って、目標年次より2年早い2001年1月、ついにプライマリー・バランスの黒字化を達成しました。そして、その年の暮れ、A国は財政破綻したのです!」

ギリシャの財政破綻

 中野剛志氏は、プライマリー・バランス黒字化達成のために経済成長が停止し、黒字化達成と同時に財政破綻したギリシャの例を示します。

「2008年の世界経済危機の打撃を受けたG国は、IMFに融資を依頼し、A国のように、『プライマリー・バランスの黒字化』目標を押し付けられました。その後、G国は、増税と歳出削減に励み、2013年、目標を達成しました。しかし、その代償として、G国のGDPの4分の1が吹っ飛び、失業率は26%超(若年層の失業率は60%)にもなってしまいました。そして、2015年、G国は、事実上の財政破綻に陥ったのです!」

財政健全化目標のために財政が悪化する無限ループ

 中野剛志氏は、デフレ下の日本では、プライマリー・バランスの黒字化を目指す必要はない、と述べます。なぜならば、プライマリー・バランスの黒字化のための増税や歳出削減は、かえって財政を悪化させるからです。

「日本は財政健全化を目指す必要はありません。それどころか、デフレなので、財政健全化を目指してはいけないのです。」

「財政健全化の努力が経済を停滞させ、財政をかえって悪化させる。そこで、また財政健全化の努力を続ける。平成日本は、まさにこの無限ループの中に巻き込まれていたのです。」

財政健全化のためには財政赤字の拡大が必要

 中野剛志氏は、財政を健全化したければ、財政赤字を拡大しなければならない、と逆説的な説明をします。なぜならば、財政赤字を拡大させ、デフレを克服し、経済が成長すれば、税収は増え、財政は健全化するからです。そして好景気になれば、今度は、過度なインフレにならないように、財政支出を抑制することができます。
 
「そこで、もし発想を転換して、財政赤字を拡大したら、どうなるでしょうか。財政は悪化しますが、それによってデフレは克服され、民間消費や民間投資が増え、経済が成長していきます。すると、税収が増える。景気が良くなり、インフレになるので、財政支出を拡大する必要がなくなる。というか、財政支出を抑制しなければならなうなる。財政支出を拡大し続けると、インフレが行き過ぎてしまうからです。」

「したがって、どうしても財政を健全化したければ、財政赤字を拡大しなければならないのです。」

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中野剛志に学ぶ 日本経済が成長しない理由

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平成の改革は新自由主義政策

 中野剛志氏は、橋本龍太郎政権以来の自民党の構造改革路線は、イギリスのマーガレット・サッチャー首相、アメリカのロナルド・レーガン大統領による新自由主義政策を手本にしたものだと解説します。

「平成の『改革』と手本となったのは、1980年代の英サッチャー政権や米レーガン政権が行った『新自由主義』の政策でした。」

「平成8(1996)年に成立した橋本龍太郎政権は行財政改革、経済構造改革、金融システム改革などの『構造改革』を掲げ、実行しました。」「その結果、日本は平成10年からデフレに突入しました。」

新自由主義政策が日本をデフレにした

 中野剛志氏は、1980年代のサッチャーやレーガンの政権時、英米両国はインフレに悩んでいたと指摘します。

 そして、新自由主義の政策は、インフレを抑制し、デフレを引き起こすための政策であり、平成10年以降の日本がデフレになったのは、新自由主義の思想に基づく構造改革によるものと解説します。

「公共投資をはじめとする財政支出の削減、消費増税、『小さな政府』を目指した行政改革、規制緩和、自由化、民営化、そしてグローバル化…。」

「これらは、いずれもインフレ対策です。『構造改革』とはインフレを退治するために、『人為的にデフレを引き起こす政策』なのです。」

「サッチャー政権やレーガン政権が試みたのは、『インフレを退治するために、人為的にデフレを引き起こす政策』でした。」

「平成日本は、デフレ対策が求められるタイミングで、『構造改革』と称するインフレ対策を実行しました。しかも、それを20年以上、続けたわけです。これでは、デフレにならないほうがおかしい。」

小泉政権下の金融緩和でデフレ脱却できなかった訳

 中野剛志氏は、小泉純一郎政権は、金融緩和というデフレ対策となる政策を行ったものの、一方で構造改革というデフレを引き起こす政策を取ったことから、デフレから脱却することができなかったと解説します。

「平成13年に成立した小泉純一郎政権は、インフレ対策の『構造改革』をさらに徹底させました。ただし、唯一、金融政策についてだけは、デフレ対策を行っていました。つまり、金融緩和です。しかし、金融政策だけデフレ対策をしても、他の政策はすべてインフレ対策なのだから、どうしようもありません。」

平成日本が経済成長できなかった理由

 中野剛志氏は、平成の日本が経済成長できなかった理由を、デフレ下においてインフレ抑制のための政策を続けたことからデフレが続いたことによるものと、解説します。

「日本政府が『デフレ下におけるインフレ対策』という愚行を続けてきたからです。それでデフレが続くようになった。だから、経済成長もしなくなった。」

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MMTは健全財政論を否定する

 中野剛志氏は、MMTは、自国通貨を発行できる政府が財政破綻をすることはあり得ないことから、健全財政論を否定し、機能的財政論を支持する立場である、と説明します。

「MMTは、(中略)、『自国通貨を発行できる政府は、財政破綻を懸念する必要がない』と主張し、機能的財政論を支持し、健全財政論を否定します」

MMTは財政を無限に拡大する思想ではない

 中野剛志氏は、MMTに向けられる、パウエルFRB議長、黒田日銀総裁、ローレンス・サマーズなどの批判的主張を紹介します。すなわち、財政赤字を考慮しないMMTは極端な主張であり、ハイパーインフレを招く、支離滅裂(クルーグマン)なブードゥー経済学(サマーズ)である、という批判です。

「例えば、パウエルFRB議長は、『自国通貨建てで借り入れができる国は財政赤字を心配しなくてよいという考え方は間違いだ』と断定し、黒田日銀総裁も『財政赤字や債務残高を考慮しないという考え方は、極端な主張』と述べています。サマーズ氏も、財政赤字は一定限度を超えるとハイパーインフレを招くとして、MMTを批判しています。」

MMTはインフレ率に慎重な注意を払う

 中野剛志氏は、上記のようなMMTへの反応は、批判になっていない、と指摘します。そして、MMTはインフレ率を無視して財政赤字を拡大して良いという考え方ではなく、「財政赤字の大小はインフレ率で判断すべきだ」という考え方であると解説します。

「しかし、こうした批判は、批判の体すらなしていません。なぜなら、MMTとは『財政赤字の大小はインフレ率で判断すべきだ』という考え方です。ハイパーインフレになっても財政赤字を心配しなくてもよいという主張ではありません。それどころか、MMTの論者たちは、インフレを抑制する政策についても、いろいろと提言しています。」

批判者はMMTを理解していない

 中野剛志氏は、MMTをインフレリスクを考慮しない極論として批判をする主流派経済学者たちは、批判の対象を理解していないと解説します。

「それにもかかわらず、主流派経済学者、政策当局者、あるいは経済アナリストたちの多くは『MMTは、財政赤字によるインフレのリスクを考慮しない極論だ』という批判を展開しています。要するに、彼らは、批判の対象としているMMTを理解していないのです。」

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