財務省人事 次の事務次官は誰? ’20

財務省人事 次の事務次官は誰? ’20



日本を破局に導く財務省

 何度日本経済に打撃を与え、国民を困窮させても、緊縮財政と消費増税に邁進する財務省。戦前の日本において、軍のエリートたちが、大局観を喪失したまま、その優れた能力を自らの組織のために捧げ、戦略目的も無く戦線を拡大し続け、国が滅びた経験と重なります。

 日本人は、同じ失敗を繰り返し続けています。
 
 バブル崩壊と失われた30年、長期のデフレ不況の元凶である財務省の、次の事務次官が誰になるのかを検討してみたいと思います。

2019年7月発表の財務省幹部人事

 2019年7月に発表された、財務省幹部人事は以下のとおりです。

事務次官  岡本薫明(S58年入省)→ 留任
主計局長  太田 充(S58年入省)→ 留任
大臣官房長 矢野康治(S60年入省)→ 茶谷栄治(S61年入省)
総括審議官 茶谷栄治(S61年入省)→ 神田眞人(S62年入省)

主計局次長(首席) 阪田渉(S63年入省)
主計局次長(次席) 角田隆(S63年入省)
主計局次長(三席) 宇波弘貴(H元年入省)

 岡本薫明事務次官と、太田充主計局長が留任しました。
 大臣官房長の矢野康治は主税局長となり、総括審議官の茶谷栄治は大臣官房長になっています。
 主計局次長(首席)の神田眞人は総括審議官に上がってきました。



岡本薫明(S58年入省)の経歴

 

 現在の事務次官、岡本薫明の経歴は、以下のとおりです。

2012年 主計局次長(三席)
2013年 主計局次長(次席)
2014年 主計局次長(首席)
2015年 大臣官房長
2016年 大臣官房長
2017年 主計局長
2018年 事務次官
2019年 事務次官

 岡本は、「主計局次長(三席)→主計局次長(次席)→主計局次長(首席)→総括審議官→大臣官房長→主計局長→事務次官」という財務省事務次官の王道コースを歩んできました。総括審議官を経験していないだけです。

 政権側の消費増税延期の動きをすべて阻止し、大勝利の2期目です。
 

太田充(S58年入省)の経歴

 現在の主計局長、太田充の経歴は、以下のとおりです。

2012年 主税局審議官
2013年 主計局次長(三席)
2014年 主計局次長(次席)
2015年 総括審議官
2016年 総括審議官
2017年 理財局長
2018年 主計局長
2019年 主計局長

  「主計局次長(三席)→主計局次長(次席)→主計局次長(首席)→総括審議官→大臣官房長→主計局長→事務次官」という王道コースからみると、同期に、大エース岡本薫明がいたため、主計局次長(首席)と大臣官房長を経験していません。
 
 しかし、総括審議官を経て、主計局長の座をつかみました。
 
 主計局長になれば、次期事務次官ということで決定です。

 主計局長が事務次官になれなかったのは、直近では1997年に主計局長に就いた涌井洋治に遡ります。涌井は、大蔵省接待スキャンダルで失脚しました。そのほか事務次官になれなかった事例としては、1974年に主計局長に就いた橋口収がいます。橋口は、田中角栄の政治介入に阻まれ、同期の主税局長高木文雄に事務次官の座を奪われています。それ以前は、後に総理になる福田赳夫が、主計局長時に収賄容疑で逮捕され(後に無罪)事務次官の座を逃したことがあります。

 2018年の財務省文書改竄スキャンダルで処分を受けた岡本薫明は、その直後に事務次官になることができました。よほどのことがなければ、次の事務次官は太田充で確定ということになります。昭和58年入省で岡本氏と同期ですが、昭和59年入省組に、王道コースの事務次官候補者がいないので、出番がまわってきました。

矢野康治(S60年入省)の経歴

 

 現在の主税局長、矢野康治の経歴は、以下のとおりです。

2012年 官房長官秘書官
2013年 官房長官秘書官
2014年 官房長官秘書官
2015年 官房長官秘書官
2016年 主税局審議官
2017年 大臣官房長
2018年 大臣官房長
2019年 主税局長

 「主計局次長(三席)→主計局次長(次席)→主計局次長(首席)→総括審議官→大臣官房長→主計局長→事務次官」という王道コースからみると、大臣官房長を経験しただけですので、可能性はほとんどないと考えられます。

 2000年以降、主計局長を経ずに事務次官になった唯一の例外が、佐藤慎一です。
 佐藤慎一の経歴は以下のようなものです。

2011年 総括審議官
2012年 総括審議官
2013年 大臣官房長
2014年 主税局長
2016年 財務事務次官

 この佐藤の事例を考えれば、矢野も可能性がゼロになったとは言えません。

 しかし、昭和58年入省の岡本薫明事務次官が留任しているところ、次の太田充も昭和58年入省ですから、このままだと、岡本が途中で辞職しない限り、同年入省組が事務次官を3期務めることになります。
 このため、昭和59年組、昭和60年組は、飛ばされる可能性が高まっているところ、矢野のようなイレギュラーな人物を間に挟むことは考えにくいと考えられます。
 今後の矢野は、主税局長から、国税庁長官というコースが予想されます。

可部哲生(S60年入省)の経歴

 現在の理財局長、可部哲生の経歴は、以下のとおりです。
 
2012年 主計局総務課長
2013年 官房総合政策課長
2014年 国際局審議官
2015年 主計局次長(次席)
2016年 主計局次長(首席)
2017年 総括審議官
2018年 理財局長
2019年 理財局長

 「主計局次長(三席)→主計局次長(次席)→主計局次長(首席)→総括審議官→大臣官房長→主計局長→事務次官」という王道コースから見れば、主計局次長首席を経ての総括審議官ですから、堂々たる将来の事務次官候補です。

 総括審議官の後は、大臣官房長には上がらず理財局長となりました。これについては、現在の主計局長太田充が、総括審議官→理財局長→主計局長となっていることから、理財局長から主計局長となるのは近時の流れ的に問題ありません。
 
 元財務官の榊原英資は、「理財局長は中間的なポストです。理財局長の経験者は、その後、金融庁・国税庁・環境省などにいったり、官房長などの要職に就任したりと、人によってまちまちです。」(「財務省」新潮新書、榊原英資、2012)と述べており、人事的に柔軟な使い方ができるポストです。

 王道を歩んできた可部が理財局長になったということは、出世コースから外れたとまでは言えず、前任者の太田と同じコースを歩む可能性は残っています。

 岡本事務次官の退任により太田主計局長が事務次官になる時に可部が主計局長になれば、太田の次は可部が事務次官になります。
 
 しかし、2019年7月の人事で、一期下の茶谷栄治が大臣官房長になったことで情勢は厳しくなりました。太田充もまた下の期の矢野康治が大臣官房長になったことにより大臣官房長を経験していませんが、矢野はもともと経歴的には事務次官レースの王道コースから外れたイレギュラーな人物でした。一方、茶谷は、完璧な王道コースを歩んでいるエースであり、将来事務次官となるのが確実ですから、茶谷が大臣官房長になったのは、矢野の時とは質的に異なります。

 昭和58年入省の岡本が事務次官を二期務めた後、同じ昭和58年入省の太田が事務次官を一期務めることで、後ろが詰まっている状態となっています。このため、太田の次は、昭和59年・昭和60年入省は飛ばされ、一気に、昭和61年入省の茶谷栄治という可能性があり、可部にとっては厳しい状況と言えます。

 ところで、可部氏の妻は自民党の岸田文雄衆議院議員の妹です。
 ポスト安倍の有力候補は、自民党の派閥構成でいえば岸田文雄ですから、岸田総理のもとで、義弟の可部哲生が財務省事務次官となり、義兄弟で日本を取り仕切る可能性もあります。
 しかし、逆に、それでは政治色が強すぎるとして、官僚的配慮で回避されることも可能性も考えられます。したがって、ポスト安部が菅義偉になるのか、岸田文雄になるかによっても、人事に影響を与えると考えられます。

 可部が事務次官になれるかは、まだ流動的と言えそうです。

茶谷栄治(S61年入省)の経歴

 現在の大臣官房長、茶谷英治の経歴は、以下のとおりです。

2012年 官房秘書課長
2013年 官房秘書課長
2014年 官房秘書課長
2015年 主計局次長(三席)
2016年 主計局次長(三席)
2017年 主計局次長(首席)
2018年 総括審議官
2019年 大臣官房長

 「主計局次長(三席)→主計局次長(次席)→主計局次長(首席)→総括審議官→大臣官房長→主計局長→事務次官」という王道コースを、確実に歩んでいます。

 今後、主計局長を経て事務次官となるのがほぼ確定したエースと言えます。

 問題は、その時期です。
 
 2020年に太田主計局長が事務次官になるとして、この際に、一期上の可部が主計局長になるか、茶谷が主計局長になるかで、次の次の事務次官がきまります。

神田眞人(S62年入省)

 現在の総括審議官、神田眞人の経歴は、以下のとおりです。

2016年 金融庁参事官
2017年 主計局次長(三席)
2018年 主計局次長(首席)
2019年 総括審議官

 「主計局次長(三席)→主計局次長(次席)→主計局次長(首席)→総括審議官→大臣官房長→主計局長→事務次官」という王道コースを、順調に歩んでいます。 

 主計局次長(首席)を経て総括審議官になりましたので、茶谷氏の次の事務次官候補は、この人物です。
 

阪田渉(S63年入省)

 現在の主計局次長(首席)、阪田渉の経歴は、以下のとおりです。

2015年 主計局総務課長
2016年 大臣官房文書課長
2017年 国際局審議官
2018年 主計局次長(次席)
2019年 主計局次長(首席)

 「主計局次長(三席)→主計局次長(次席)→主計局次長(首席)→総括審議官→大臣官房長→主計局長→事務次官」という王道コースに入りました。
 
 神田の次の総括審議官になれば、一気に将来の事務次官候補となります。

まとめ

 今後の財務事務次官は、

 岡本事務次官(S58年入省) → 太田充(S58年入省) → 可部哲生(S60年入省) → 茶谷栄治(S61年入省) → 神田眞人(昭和62年入省)

という流れが考えられます。

 太田は確定、茶谷は鉄板ですが、可部哲生は微妙な立場です。茶谷が大臣官房長になったことにより、太田から、可部を飛ばして、茶谷栄治に行く線も濃くなってきました。

 岡本が2期目に入ったことにより、岡本の後に太田が事務次官をすると、昭和58年組が3年事務次官ポストを占めることになります。その後に可部が事務次官になると、次の茶谷は鉄板なので、後ろが詰まって神田の期が飛ばされる、ということもあり得ます。
 
 イレギュラーなパターンとしては、岡本が2019年10月の消費増税の実施を見届けてすぐに辞職、そこから太田が事務次官となり2020年7月まで事務次官を務めて退職するというパターンも、あり得ないことではありません。この方式だと、後ろの詰まりは無くなり、スムーズに可部→茶谷→神田という流れになります。

 なお、財務省の幹部人事は、例年7月頃になされます。

財務省と予算編成権 榊原英資に学ぶ
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財務省人事 次の事務次官は誰? ’19