財務省と予算編成権 榊原英資に学ぶ

財務省と予算編成権 榊原英資に学ぶ



財務省と予算編成権

 元財務官の榊原英資氏は、財務省の最も重要な仕事は「税を含む毎年の予算編成」、と述べます。もちろん、予算を決定するのは国会で「財務省は、そのための事務局」に過ぎないのが本来ですが、「アメリカ等と違って、日本で予算を実際に編成しているのは国会ではなく財務省なのです」、と解説します。
 

予算編成の流れ

 日本の予算編成の具体的な流れは、まず「毎年、予算の概算要求は8月に出されます」。そして、「9月からほぼ4か月をかけて調整作業が行われ、最終的に財務省原案」が出来ます。

 この財務省原案が、毎年12月末に、国会に提出されます。そして、復活折衝を経て財務省原案が政府案になり、「この政府案が1月20日前後に召集される国会に提出される」、ことになります。

予算編成の流れ

 榊原英資氏は、「財務省原案すなわち政府案が国会で修正されることは極めて稀」、と解説します。

 その理由は、財務省原案は、財務省主計局により「事務的な折衝が積み重ねられた後、最後は関係省庁との大臣折衝になります。この折衝には、政務調査会長等、党の政策決定の中心にある人達が同席することもあります」、という要領で作られており、既に政治的な根回しが完了しているからです。

 このため、「主計局長はもとより主計局次長や主計官達は、多くの政治家達と密接な連絡を取り、予算を組み立てていきます。総理大臣や各省大臣の意見、党の幹事長や政調会長の意見等をしっかりと反映させた予算をつくらなければ、閣議で承認されませんし、国会で可決されません。十分根まわしをしながら、時間をかけて予算をつくっていくのです。」、とのことです。

予算編成権回復の試み

 榊原英資氏は、「財務省の予算編成権を内閣に移そうという試みは、1955年の保守合同の時からしばしば起っています。」、と解説します。「鳩山一郎内閣の農林大臣、河野一郎は主計局の内閣移管を試みましたが、当時の石原周夫官房長、谷村裕官房文書課長等が八方を飛び回って説得し、次の石橋湛山内閣で元大蔵官僚の池田勇人が大蔵大臣に就任すると、この河野構想は頓挫」しました。

 また、「最近では小泉純一郎内閣の時に経済財政諮問会議に予算編成権を移そうという試みがなされ、担当の竹中平蔵大臣等が相当努力した結果、少なくとも予算編成の基本方針はこの会議で設定する」、ことになりました。

 なお、榊原氏は、元財務官僚で財務省を鋭く批判する事が多い高橋洋一氏のことを「小泉純一郎内閣の時期に竹中平蔵のブレーンとして財務省から予算編成権を切り離そうと画策し、財務省を辞めざるを得なくなった人物です。」、と考えています。

 小泉内閣で行われた、予算編成権を政治に取り戻すための改革も、脱官僚政治を訴えていたはずの民主党政権で水の泡になります。自身の政治生命のすべてを財務省に捧げた野田佳彦が、財務省の意向に従い、原状に戻しました。

 国民としては最悪な話ですが、榊原氏は、「経済財政諮問会議も政権交代後になくなり、財務省主計局の予算編成権はいまや盤石です。野田佳彦総理が前財務大臣だったこともあり、現在の民主党政権での財務省主計局の力はむしろ強くなっていると言うことができるでしょう」と、財務官僚らしく肯定的な書きぶりをしています。

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大臣官房

 元財務官の榊原英資によると、大臣官房の官房長は、「大臣・次官を補佐する重要ポスト」であり、歴代事務次官の多くは、「官房長から主計局長を経て事務次官」に就任している。

 大臣官房のトップは官房長で、「その下に総括審議官、政策評価審議官」が置かれ、「また、それぞれの局には審議官、参事官がいますが、彼らもまた官房に属しています」、とのことです。

主計局

 榊原英資によると、予算編成を担う主計局は、「まさに財務省の中心」であり、「主計局主査、主計官、主計局次長、主計局長などは典型的な出世コースのポスト」。

 主計局は、「主計局長の下に三人の次長がいて、それぞれの予算部門を担当」している。

 11人の主計官は課長級ポストで、担当は以下のように分かれている。

・総務課(2人、予算統括と企画)
・内閣、外務、経済協力
・防衛
・総務、地方財政
・司法・警察、財務、経産、環境
・文部科学
・厚生労働第一
・厚生労働第二
・農林水産
・国土交通、公共事業総括

 主計官の下には、「課長補佐である主査が2〜3人いて、それぞれの分野を受け持っています」。財務省内では、他局では課長・課長補佐と呼ばれているところ、主計局だけは主計官・主査と呼ばれている。

 予算編成は、「予算要求の基礎となる概算要求基準が6月に閣議決定されてから始まり、各省は8月末までに概算要求を主計局に提出します。この時、各省の中心になるのが会計課です。予算折衝と査定は9月に開始され、12月20日頃には財務省原案が内示されます。大臣折衝を含む復活折衝を経て12月24日頃、クリスマス前には政府案が決定されます。」、という流れによりなされる。
 

主税局

 主税局は、「国の税制の企画・立案を主たる仕事」であり、「その執行機関として国税庁を持っています」。

 税制第一課は「直接税」、税制第二課は「間接税」、税制第三課は「法人税担当」を担当する。

 主税局長は、「このところ3、40年を見ると、主税局長の経験者は大蔵事務次官か、少くとも国税庁長官になっています。」という重要ポスト。

関税局

 関税局は関税を扱い、主な仕事は「全国に九つある税関の監督・調整」となっています。
 
 関税局は、「財務省のなかではマイナーな局」であり、「関税局長は主計局長や主税局長等と違って最終的なポストになることが多い」。もっとも「同期20人前後のなかで局長になれるのは4〜5人ですから、関税局長といえどもなかなかの出世」、とされます。

理財局

 国の財産を管理する理財局は、「国庫・国債・財政投融資・国有財産管理等」を行います。

 財政投融資とは、「平たく言えば公のお金を使って行われる投資や融資です。財投債(財政投融資特別会計国債)の発行等によって調達した資金で、国が特殊法人等の財投機関に資金を供給し、財投機関はそれを原資として事業を行い、その事業からの回収金等によって資金を返済するという仕組みです。財政投融資は『第二の予算』とも呼ばれています。第一の予算である一般会計予算は、税及び国債によってその資金を調達し、歳出は貸出しや融資ではなく基本的に使い切られます。それに対し、第二の予算である財投は貸出しが基本であり、返済を前提としています。投資の場合は返済はないものの、事業収益による利益の還元が期待されています」。
 
 理財局長は、「理財局長の経験者は、その後、金融庁・国税庁・環境省などにいったり、官房長などの要職に就任したりと、人によってまちまち」、とのことです。

国際局

 国際局は、「為替だけでなく、国際経済の調査・分析、国際機関との連携・交渉、途上国支援の企画・立案等幅広い業務を行」っている部署。「局長・次長の他に二人の審議官がそれぞれの分野を担当しています。」。「経済外交という点では外務省を上回る権限を有しているともいえます。」、とのことです。
 
 国際局長は、「通常、財務官に就任します」。

 財務省内の国際派の牙城とされますが、主税局・主計局のような国内派の財務省本流と違い、「国際局長は次官と同格といわれる財務官にはなれますが、財務官の所掌は国際局と関税局の一部だけ。主計・主税・理財等広範な分野を所掌する事務次官とは格が違う」、とのことです。

まとめ

 官房長は、主計局長を経て、事務次官になる人が多い。
 主計局長は、事務次官になる。
 主税局長は、国税庁長官になる。
 国際局長は、財務官になる。
 理財局長は、事務次官コースに乗る人もいるし、そうでない人もいる。どこに進むか分からない。
 関税局長は、一丁上がりで退職。

 財務省の局の序列としては、事務次官を輩出する本流の主計局があり、その次に、税の専門家で国税庁長官(まれに事務次官も)を輩出する主税局と、財務官を輩出する国際局がある。そして、その次に、局長止まりで退職になる関税局がある、ということになりそうです。また、理財局は、この序列の中ではっきりしない位置にあり、出世コースの人もいれば、そうではない人もいる、中間的ポジションということのようです。

 参考:財務省機構図(平成30年1月現在)

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大村大次郎に学ぶ 税務調査で狙われる会社

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決算書を見て儲かっていそうな企業を探す

 元国税調査官の大村大次郎氏は、国税調査官が、税務調査に入る企業をピックアップする方法を解説します。まず、基本的には、申告書に添付されている決算書の数字をチェックし、儲かっていそうな企業を選び出す、とのことです。

「税務署には毎月、毎月、大量の申告書(決算書添付)が送られてくる。国税調査官には、それをいちいち詳細に見ている時間はない。そこで数字の大事な部分だけをチェックし、不正をしていそうな企業、儲かっていそうな企業をピックアップするのである。」

売上急増で利益が伸びていない会社を狙う

 大村大次郎氏は、国税調査官が税務調査に入る企業を選ぶ際には、売上が毎年急増しているのに利益が伸びていない企業を狙う、と解説します。

「国税調査官が、儲かっていそうな企業(脱税していそうな企業)をピックアップする場合、最もオーソドックスなものは、『売上が毎年急増しているのに利益が伸びていない』企業である。そういう企業は何らかの脱税をしている可能性があるので、それをまず選定の候補にするのだ。」

売上増だが利益率が低い企業を狙う

 大村大次郎氏は、国税調査官が税務調査に入る企業を選ぶ際には、決算書の利益率に着目すると解説します。利益率に着目し、売り上げが上がっているのに、利益率が下がっている場合や、同業他社に比べて低いかどうかを確認する、と述べます。

「トータルのデータを見た場合、儲かっている企業が脱税する比率は、ほかの企業に比べて著しく高いのである。売上が急増しているのに、利益が出ていない納税者を見つけるには、利益率を参考にする。利益率とは、売上に比べてどれだけ利益が出ているかを表すものである。売上が上がっているのに、利益率が下がっている場合や、利益率が同業者に比べて著しく低い場合は、要チェックということになる。」

経費だけが急増している企業を狙う

 大村大次郎氏は、国税調査官が税務調査に入る企業を選ぶ際には、同業他社に比べて著しく所得が少ない企業や、経費だけが急増している企業を狙う。仕入れなどの経費を操作している可能性が高いからだと解説します。

「売上急増のほかにも、同業他社と比べて著しく所得が低いとか、ほかの科目は変化がないのに経費が急に増加しているなどの場合も、対象となる。たとえば、『外注費が去年より倍増している』とか、『仕入だけが急に増えている』などである。これは何か不自然な操作をしている可能性があるからだ。」

景気の良い業界を狙う

 大村大次郎氏は、国税調査官が税務調査に入る企業を選ぶ際には、流行のヒット商品を生み出すなどして儲かった業界を狙う、と解説します。

「また、儲かっている業種を中心に選択するという方法もある。たとえば、台風が多かった年ならば、瓦屋や個人住宅の修理業者や、その関係者を軸にして調査先を選定する。ヨーヨーが流行したときには、ヨーヨーの製造業者、販売業者に目をつける、などである。」

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